↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/76

第三十五話(後編) : 移動式防壁と小さな親衛隊

王都を出発し、いよいよガルディアへ向かう旅が始まります。


新たな仲間も加わり、馬車の中も少しずつ賑やかに。


果たして、今回の旅はどんなものになるのでしょうか。


それでは、第三十五話(後編)をお楽しみください。

ボルグは、しばらくエリシアの横顔を眺めていた。


「……お嬢ちゃん。」


「立派になったもんだ。」


「え?」


エリシアが振り返る。


「初めて会った時なんぞ。」


「挨拶の一つもできんかったじゃろ。」


「……。」


「国王陛下の足にしがみついて。」


「わしと目を合わせることすら嫌がっておった。」


「…………。」


エリシアの頬が、少し赤くなる。


「そんな昔のこと……。」


「覚えておらんか?」


「……覚えています。」


「ほう。」


ボルグが笑う。


「なら、よい。」


「あの頃のお嬢ちゃんが、今では王国を代表して他国へ向かうんじゃ。」


エリシアは少しだけ窓の外を見る。


「……私も、変わったんですね。」


「うむ。」


ボルグは頷いた。


「立派になった。」


「……ありがとうございます。」


エリシアは小さく笑った。


「……それに。」


エリシアが少しだけ苦笑する。


「私、ボルグさんには随分叱られましたよね。」


「そりゃそうじゃろ。」


ボルグは即答した。


「お前さんが無くした鍵じゃ。」


「……。」


「王都の古代金庫を開けてくれと、国王陛下に頼まれて出向いたら――」


「鍵を無くした張本人がおらん。」


「…………。」


エリシアが気まずそうに目を逸らす。


「わしは国王陛下に言ったんじゃ。」


「無くした本人に会わせろ。」


「鍵開けは、それからじゃとな。」


「そして。」


ボルグはエリシアを見る。


「まず謝りなさい、と。」


「……はい。」


「あの時は、随分厳しかったですよね。」


「当たり前じゃ。」


「鍵を無くしたなら、まず謝る。」


「それくらいは覚えてもらわんとな。」


エリシアは小さく笑う。


「……おかげで、ちゃんと謝れるようになりました。」


「うむ。」


ボルグは満足そうに頷いた。


「エリシア様でも、そんな事があったのですね。」


「知りませんでした。」


ルチアとミーナは、少し驚いたようにエリシアを見る。


「六歳頃の話じゃ。」


ボルグが笑う。


「それくらいのお年でしたら、そんなこともありますよね。」


「ええ。」


二人は納得したように頷いた。


そして。


ミーナが、ふとエリシアの隣を見る。


「……ところで。」


「はい?」


「お隣のお方は……?」


エリシアがエリックを見る。


「ああ。」


「エリックさんです。」


「新しいダンジョンの調査をしてもらっています。」


「新しいダンジョンの調査……。」


二人がエリックを見る。


「エリック。」


エリックは短く名乗った。


「よろしく。」


「ルチアです。」


「ミーナと申します。」


「よろしくお願いいたします。」


二人が頭を下げる。


「うん。」


エリックも頷いた。


それで自己紹介は終わった。


ミーナが、そっとルチアへ顔を寄せる。


「……ルチア。」


「何でしょう、ミーナ。」


「……何も驚きませんね。」


「はい。」


「私たちを見ても、普通ですね。」


「……やはり謎です。」


二人は、ちらりとエリックを見る。


エリックは二人を気にする様子もなく、窓の外を眺めていた。


「……。」


「……。」


その時。


ミーナが、ふと口を開いた。


「そういえば……。」


「はい。」


「先ほどの……。」


「移動式防壁。」


ルチアの目が輝く。


「……気になりますね。」


「はい。」


「防壁って、普通はその場に固定するものですよね?」


「そうです。」


「なのに、馬車と一緒に動いている。」


「……しかも、透明。」


二人は、そっとエリックを見る。


「……。」


「……。」


ミーナが小声で呟く。


「はったりでは?」


「はったりですね。」


ルチアも小さく頷く。


「多重防壁を移動させるなんて……。」


「できるわけありません。」


「ですよね。」


ミーナが、ちらりとエリックを見る。


「もし。」


「はい。」


「もし、はったりなら。」


ルチアの目が、すっと細くなる。


「殺してやります。」


「やりましょう。」


「神聖様を騙すなんて。」


「万死に値します。」


ミーナが、ふとエリシアを見る。


「……神聖様。」


「はい。」


「驚いてませんね。」


「……そうですね。」


「レイナさんも、知ってましたね。」


「知ってました。」


「……本物かもしれません。」


「……ですね。」


二人の足が。


カタカタ。


小さく震え始めた。


「……保留です。」


「了解です。」


その時。


「お前たち。」


二人の肩が跳ねる。


「はいっ!?」


レイナが呆れた顔で二人を見る。


「さっきから丸聞こえだぞ。」


「…………。」


「…………。」


「聞かれてましたね。」


「はい。」


「……殺されなくてよかったですね。」


「……はい。」


二人は、そっと前を向いた。


馬車は街道を進んでいく。


ガタ。


ガタ。


ガタ。


エリシアは窓の外を眺めている。


レイナも進行方向へ目を向けている。


ボルグは、時折口元を緩めながら座っていた。


そして。


エリックだけは。


窓の外を、じっと眺めていた。


しばらくして。


「……あれ。」


レイナが振り向く。


「ん?」


エリックは窓の外を指差した。


「田んぼだろ?」


その先に。


水を張った広い田んぼが、街道沿いに広がっていた。

今回は、エリシアたちの旅がいよいよ始まりました。


そして今回から、ルチアとミーナという二人の魔法使いも本格的に登場します。


小柄で、礼儀正しくて、二人でヒソヒソ話をしているだけなのですが……。


なぜか言っていることだけは物騒です。


「万死に値します。」


……怖いですね。


ただ、最後にはしっかり「保留です」。


この二人が今後どんな活躍をしてくれるのか、作者自身も楽しみにしています。


そしてエリックは、そんな二人のことよりも――。


やっぱり、気になるものがあるようです。


次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。