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第二十六話(後編): 編集する魔法

いつも読んでいただきありがとうございます!


前編では、ガーディアン・ゴーレムと封印扉の核が同期していることが判明しました。


今回は、そのギミックをどう攻略するのか――エリックらしい方法で挑みます。


最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです!

レイナが再び地を蹴った。


「私が前へ出る!」


ゴーレムが迎え撃つように左腕を振る。


ブォン!!


空気が唸る。


レイナは身体を沈め、その一撃を紙一重でかわす。


懐へ飛び込む。


「はぁぁぁっ!!」


ギィィン!!


剣が岩肌を削る。


ザンッ!!


左脚へ深い亀裂が走る。


ゴーレムがわずかによろめいた。


その瞬間。


巨大な拳がレイナへ振り下ろされる。


「しまっ――!」


カリ。


エリックのGペン型の杖が宙を走る。


「防壁。」


ゴォォン!!


透明な障壁が拳を受け止めた。


「助かった!」


レイナは障壁を踏み台にし、さらに高く跳ぶ。


「《真・終焉一刀・アルティメットファイナルブレイク》!!」


ズバァァァン!!


巨大な左脚が切断され、ガーディアン・ゴーレムが片膝をつく。


その一瞬だった。


エリックがGペン型の杖を掲げる。


「……。」


カリ。


カリカリカリ――。


空中へ、巨大な魔法陣が一つ描かれる。


さらに。


もう一つ。


左右へ並ぶように、二つの魔法陣が同時に展開された。


一つはガーディアン・ゴーレムの胸部。


もう一つは巨大な封印扉の前。


エリシアが息を呑む。


「二つ……!」


リシェルも目を見開いた。


「魔法陣を二つ同時に!?」


エリックは短く答える。


「核。」


「二つ。」


「ここ。」


Gペン型の杖が二つの魔法陣を指した。


「通して。」


一瞬の沈黙。


エリシアは小さく笑う。


「なるほど……。」


「私たちの魔法を、この魔法陣へ通すのですね。」


「はい!」


リシェルも杖を構える。


「分かりました!」


エリックは二人を見た。


そして。


カリ。


リシェル側の魔法陣へ、ほんの数本だけ線を書き足す。


エリシアが目を細める。


(……違う。)


(こちらと構図が違います。)


エリックは頷いた。


「少し。」


「深くした。」


「リシェル。」


「こっち。」


「エリシア。」


「そのまま。」


レイナがゴーレムの攻撃を受け流しながら叫ぶ。


「まだか!」


エリックは二つの魔法陣を見つめる。


二つの核。


二人の魔法。


全ての線が重なる。


その瞬間――。


エリックが初めて大きな声を張り上げた。


「――今だぁぁぁ!!」


「撃てぇぇぇぇ!!」


「はい!」


「《終焉・エクスプロージョン》!!」


「《スーパーペイントブラスター》!!」


二つの魔法が同時に放たれる。


それぞれエリックの魔法陣へ吸い込まれ――。


空間がわずかに歪んだ。


リシェルの魔法だけが、一瞬遅れる。


そして。


二つの光が完全に重なった。


ドォォォォォン!!!


ゴーレムの核。


封印扉の核。


二つを同時に貫いた。


ゴゴゴゴゴ……。


ガーディアン・ゴーレムの身体が止まる。


赤い瞳の光が消えた。


全身に無数の亀裂が走る。


パキッ。


パキパキパキッ――。


巨大な岩の身体は崩れ落ち、灰となって静かに消えていく。


カラン。


床へ一つの大きな魔石が転がった。


同時に。


巨大な封印扉も音を立てて崩れ始める。


「……終わった。」


レイナが大剣を肩へ担ぐ。


リシェルは転がる魔石を見つめた。


「本当に倒せたんですね……。」


エリシアはエリックへ視線を向ける。


「ですが、一つだけ。」


「どうして、あれほど正確に同時になったのですか?」


リシェルも頷く。


「私の魔法の方が速いはずです。」


「なのに、ぴったり同時でした。」


エリックは答える。


「リシェル。」


「背景。」


「少し。」


「描き足した。」


三人が固まる。


「……背景?」


エリックは頷く。


「構図。」


「深くなる。」


「少しだけ。」


「処理が増える。」


「だから。」


「ほんの少し。」


「遅くなる。」


エリシアは目を見開いた。


「……まさか。」


「術式の処理量を意図的に増やし、到達時間を合わせたのですか。」


「うん。」


「百分の数秒。」


「合わせた。」


リシェルは感心したように息をついた。


「そんなこと出来る人、初めて見ました……。」


エリシアは小さく微笑む。


「やはり……。」


「エリックさんは魔法を『使う』のではなく、『編集』しているのですね。」


レイナは床へ転がった魔石を拾い上げ、口元を緩めた。


「それより驚いたのは、あっちだ。」


「お前があんな大声を出すとはな。」


エリシアは思わず吹き出す。


「ふふっ……確かに。」


「私も初めて見ました。」


リシェルも嬉しそうに頷く。


「はい。私もです。」


エリックは少しだけ首を傾げた。


「……?」


「人工大理石。」


「欲しかった。」


一瞬の静寂。


レイナは肩を震わせる。


「……理由、それかよ。」


三人の笑い声が、静かになった五十階層へ響いた。


笑いが落ち着くと、エリシアは懐から水晶を取り出した。


そっと魔力を流し込む。


淡い光が水晶の中で揺らめき、周囲の魔力反応が映し出されていく。


エリシアは水晶を見つめた。


「おそらく、三十七階層と同じ《魔力休止域マナ・レストエリア》でしょう。」


「位置は……五十九階層付近です。」


レイナが大剣を担ぎ直す。


「なら、そこまで行くか。」


リシェルも頷く。


「一度休める場所があるなら助かりますね。」


しかし。


エリックだけは、水晶の反応を見つめていた。


「……。」


レイナが気付く。


「どうした?」


エリックはゆっくり顔を上げる。


「五十九階層。」


「マナ・レストエリア。」


「なら。」


少し間。


「試したいことがある。」


三人が固まる。


「……嫌な予感がします。」


エリシアが小さく呟いた。


エリックはいつもの表情で答える。


「大丈夫。」


「たぶん。」


レイナがため息をつく。


「その『たぶん』が一番怖いんだよ。」

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


今回は、エリックの「魔法を編集する」という一面を描いてみました。


魔法を強くするのではなく、術式を調整して到達時間まで合わせる――そんな少し変わった戦い方は、この作品らしさでもあります。


そして、無事に五十階層を突破!

……と思ったら、エリックはもう次の実験を考えているようです。


次回は五十九階層の《魔力休止域マナ・レストエリア》で、新たな出来事が待っています。


ブックマークや評価、ご感想をいただけると、とても励みになります!

これからもよろしくお願いいたします。

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