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第二十六話( 前編) : 見開きの構図

いつも読んでいただきありがとうございます!


今回はいよいよ五十階層へ続く封印扉の守護者との戦いです。


普通の強敵……と思いきや、エリックらしい視点でギミックを見抜いていきます。


最後まで楽しんでいただけたら嬉しいです。

巨大な石扉がゆっくりと開く。


『警告。』


『高密度魔力反応。』


『接近。』


ゴゴゴゴゴゴ……。


部屋全体が震えた。


巨大な石像の瞳へ、赤い光が灯る。


ガーディアン・ゴーレム。


ゆっくりと右腕を持ち上げる。


レイナは大剣を抜いた。


その時!


巨大な拳が床へ叩きつけられる。


ドォォォン!!


床が砕け、無数の破片が宙を舞った。


レイナは横へ飛ぶ。


だが。


飛び散る瓦礫までは避けきれない。


その瞬間。


エリックが杖を振る。


「防壁。」


淡い魔法の壁が展開され、レイナの前で瓦礫を弾き飛ばした。


「……助かった。」


レイナが振り返る。


エリックは小さく頷く。


「速い。」


「巨体。」


「なのに。」


「速い。」


 全身を覆う岩肌が軋み、赤く輝く瞳が四人を見下ろした。


 レイナは大剣を構え、笑う。


「よし。」


「今回は私が動きを止める。」


 エリシアも静かに一歩前へ出た。


「では私は目を封じます。」


 リシェルも杖を握り直す。


「それでは私は核を狙います!」


 三人は同時に駆け出した。


(……。)


 エリックはその背中を眺め、小さく頷く。


(今回も。)


(俺の出番、なさそう。)


(完全に。)


(あいつら。)


(中二病患者だな。)


次の瞬間――。


 レイナが地を蹴った。


 ガーディアン・ゴーレムの巨大な拳が唸りを上げる。


 だが。


 レイナは紙一重で身をかわし、その懐へ飛び込んだ。


「《真・終焉一刀・アルティメットファイナルブレイク》!!」


 漆黒の斬撃が閃く。


 ズバァァァン!!


 巨大な右脚が根元から切断され、ガーディアン・ゴーレムが大きく体勢を崩した。


「今です!」


 エリシアが長い詠唱を終える。


「――《終焉・エクスプロージョン》」


 轟音。


 極大の光が炸裂し、ガーディアン・ゴーレムの頭部を跡形もなく吹き飛ばした。


「リシェルさん!」


「はい!」


 リシェルの杖先へ魔力が収束する。


「《貫け――エアロ・ランス》!」


 鋭い風槍が一直線に胸部へ突き刺さる。


 ドガァァァン!!


 胸の奥にあった核が粉々に砕け散った。


 三人は勝利を確信した。


 しかし――。


 ゴゴゴゴゴ……。


 切断された脚が動き出す。


 砕けた頭部が岩を集め始める。


 砕け散った核さえ、光を帯びながら再び形を取り戻していく。


「……え。」


 リシェルが目を見開く。


「核を壊したのに……。」


 エリシアも驚愕する。


「再生しています……。」


 レイナが距離を取りながら舌打ちした。


「冗談だろ……。」


ゴゴゴゴゴゴ……。


 砕け散った岩が、まるで時間を巻き戻すかのように動き始める。


 切断された脚。


 吹き飛んだ頭部。


 砕け散った核。


 すべてが元の姿へ戻っていく。


 エリシアも信じられないという表情で呟く。


「あり得ません……。」


「再生速度が異常です。」


 レイナは舌打ちしながら距離を取る。


「面倒な相手だな!」


 ガーディアン・ゴーレムは何事もなかったかのように立ち上がる。


 エリックは静かにGペン型の杖を構えた。


「鑑定。」


 淡い光がガーディアン・ゴーレムを包み込む。


《対象:ガーディアン・ゴーレム》


《状態:正常》


《自己修復 作動中》


《核 検出》


《警告》


《核 一基》


《同期対象 検出》


《接続先──五十階層封印扉》


エリックの脳裏に、一冊の本が開く。


左ページ。


ガーディアン・ゴーレム。


右ページ。


封印扉。


中央をまたぐ一本の線。


「……。」


「見開きかよ。」


レイナが振り向く。


「は?」


「何が分かった?」


 エリックは扉を指差した。


「核。」


「一つじゃない。」


「二つ。」


 三人が同時に振り返る。


「え?」


「ゴーレム。」


「扉。」


「同じ。」


「一つ壊しても。」


「もう一つ。」


「直す。」


 エリシアは息を呑んだ。


「核が……同期している?」


「だから再生を……。」


 エリックは頷く。


「うん。」


「見開き。」


「構図。」


「二つ。」


「同時。」


「壊す。」


 一瞬、静寂が流れた。


 レイナが口元を吊り上げる。


「なるほど。」


「そういうギミックか。」


エリシアは扉を見つめる。


「ゴーレムだけではなく……封印扉そのものが守護装置だったのですね。」


 リシェルも杖を握り直した。


「二つの核を、同時に破壊しなければいけない……。」


 エリックは静かに頷く。


「うん。」


「見開き。」


「構図。」


「二つ。」


 Gペン型の杖を握り直す。


「でも。」


「問題。」


「ある。」


 レイナが眉を上げる。


「問題?」


 エリックは二人を見る。


「魔法。」


「速度。」


「違う。」


 リシェルが首を傾げた。


「違う?」


「私とエリシアさんの魔法速度が……ですか?」


 エリックは頷く。


「うん。」


「リシェル。」


「速い。」


 リシェルが驚く。


「え?」


 エリシアも理解する。


「つまり……私の魔法に合わせる必要がある、と?」


「うん。」


「少し。」


「深くする。」


「背景。」


「足す。」


 沈黙。


 レイナがゆっくり振り返った。


「……待て。」


「今から?」


「この戦闘中に?」


 エリックは当然のように答える。


「うん。」


「調整。」


「する。」


 レイナは頭を抱えた。


「本当にお前は……。」


 エリシアは微笑む。


「ですが……可能なのですね。」


「私の魔法陣の構図を理解し。」


「リシェルさんの魔法を調整し。」


「二つを同時に成立させる。」


 エリックは杖を構える。


「大丈夫。」


「漫画。」


「見開き。」


「一番大事。」


 その言葉に、三人は一瞬黙る。


 そして。


 レイナが笑った。


「……分かった。」


「なら、最高の一撃にするぞ。」


 リシェルも頷く。


「はい。」


「今度こそ、完璧な演出魔法を。」


 エリシアは杖を掲げる。


「では……私も負けられませんね。」


 ガーディアン・ゴーレムが再び動き出す。


 巨大な拳が迫る。


 だが。


 今度の四人には、構図がある。


「俺が、合わせる。」

最後まで読んでいただきありがとうございました!


エリックは戦闘力で圧倒する主人公ではありませんが、「構図」や「漫画家脳」という少し変わった視点で攻略していきます。


今回の「見開き」という発想は、この作品らしいギミックになったかなと思っています。


次回はいよいよ二つの核を同時に破壊する総攻撃です。


引き続き応援していただけると励みになります!ブックマークや評価、感想もお待ちしています。ありがとうございました!

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