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第二十三話 (後編) 一回な。

いつもお読みいただきありがとうございます!


今回は三十七階層攻略後の帰り道です。


……なのですが、帰るだけで終わるはずもなく(笑)。


演出魔法を使いたくてうずうずする二人と、それを容赦なく管理するエリックを楽しんでいただければ嬉しいです。


それでは第二十三話後編、どうぞ!

帰り道。


エリシアは何度も自分の杖を眺めていた。


刀身ではない。


だが、そこには確かにエリックの魔法陣と、小さな作者サインが刻まれている。


「……。」


「……。」


歩きながら、うずうずしていた。


リシェルも同じだった。


杖を握っては眺め。


また握っては眺める。


レイナが苦笑する。


「使いたいんだろ。」


二人は同時に頷いた。


「はい。」


「はい!」


エリックが首を傾げる。


「使えば?」


エリシアは慌てて首を振る。


「ここでは駄目です!」


「またダンジョンが壊れます!」


リシェルも頷く。 


「村まで吹き飛んだら困ります……。」


「そう?」


エリックは本気で分かっていなかった。


レイナは額を押さえる。


「お前、自覚ないのか。」 


「この剣。」


「さっきナイトメアホエールを真っ二つにしたんだぞ。」


「うん。」


「演出。」


「演出じゃない!」


三人の声が綺麗に重なった。


エリシアが小さく呟く。


「帰ったら……一回だけ試してもいいですか?」


リシェルも上目遣いで尋ねる。


「わ、私も……。」


その時だった。


前方の暗がりから、スケルトンが一体カタカタと骨を鳴らし、剣を振り上げて現れた。


リシェルが杖を強く握る。


「……。」


「……。」


エリシアも杖を構える。


「……。」


二人は互いに顔を見合わせた。


「やります?」


「……やめましょう。」


レイナが首を傾げる。


「何でだ?」


エリシアは至極真顔だった。


「スケルトン一体に。」


「《真・終焉……》」


少し言葉を詰まらせ、呟く。


(……ダ、ダサい)


(ですが……一度くらいは、演出魔法を撃ってみたい。)


「……。」


「……名前を最後まで覚えていません。」


リシェルも困った顔で続けた。


「叫ぶの、恥ずかしいです……。」


「しかも。」


「スケルトン相手ですし……。」


レイナは思わず吹き出した。


「確かにな。」


その直後。


エリックがスケルトンを見やった。


カリ。


足元に小さく描かれた魔法陣。


パンッ。


弾けるような音と共に、スケルトンは一瞬で消滅した。


「はい。」


終わり。


何事もなかったかのように杖を引くエリックを見て、三人は同時に深いため息を吐いた。


「普通に倒した……。」


エリックが二人の肩をポンと叩く。


「雑魚相手。」


「禁止な。」


長い階段を上り、ようやく入口が見えてくる。


 外の光が差し込んだ。


「……戻ってきましたね。」


 リシェルが小さく息を吐く。


 レイナは周囲を確認する。


「問題ない。」


「だが、このまま放置するわけにもいかないな。」


 エリシアが頷く。


「一時的な封印を施します。」


 杖を構える。


「通常なら、ギルドが管理する術式ですが……。」


 ちらりとエリックを見る。


「あなたが作った三十七階層を考えると。」


「入口だけ普通に封じる方が安心ですね。」


 エリックは首を傾げる。


「普通?」


 三人。


「そこです。」


 リシェルが一歩前へ出た。


 いつもの穏やかな笑顔ではない。


 どこか嬉しさを隠しきれない、にやけた表情だった。


「ここは、私に任せてください!」


 杖をぎゅっと握る。


 エリシアがその表情を見て、小さく苦笑した。


「……リシェル。」


「もしかして、ずっとこの機会を待っていましたね?」


 リシェルは照れ笑いを浮かべる。


「えへへ……。」


「少しだけ。」


 レイナは額に手を当てる。


「少しどころじゃない顔してるぞ。」


 リシェルは姿勢を正す。


 そして、深く息を吸い込んだ。


 杖に刻まれた魔法陣が淡く輝き始める。


そして、顔を真っ赤に染めながら、意を決して大声を張り上げた。


「……いでよ!《真・終焉しん・しゅうえん――描かれし絶対不可侵の境界線スーパーペイント・シールド》ッ!!」


 恥ずかしさに耐えながらも、必死に叫びきる。

 直後。


 ズドォォォォンッ!!!!


 ただのダンジョン入口のはずだった場所に、天を突くほどの極太な光の柱が立ち昇り、三重の巨大な魔法陣が幾重にも回転しながら地表へと叩きつけられた。


 爆風が吹き荒れ、眩い光が収まったあとには――誰も二度と近づけないような、神々しくも禍々しい「超絶封印」が完成していた。


「……はぁ、はぁ……!」


 やりきったリシェルは、額の汗を拭いながら満足げに振り返る。


「ふぅ……! 封印、完了です!」


 そこへ、エリックがトコトコと歩み寄ってきた。


 そして、リシェルの肩をポンと叩く。


「はい。」


「一回な。」


「えぇぇぇっ!?!?」


 リシェルは目を見開いて叫んだ。


「い、今のは封印作業です! 業務です! 試し撃ちの『一回』にはカウントされません!!」


「撃った。」


「撃ちましたけど! これをやらないとダンジョンが開いたままになっちゃうから、仕方なくです!!」


「一回。」


「理不尽すぎますー!!」


 必死に抗議するリシェルを見て、レイナが腹を抱えて吹き出した。


「くくっ……。」


「甘かったな、リシェル。」


「気持ちは分かる。」


「だが、あいつにその言い訳は通じない。」



 エリシアも口元を押さえながら、思わずくすくすと笑ってしまう。


(……危ないところでした。私が先に名乗りを上げていたら、私の一回が消えていたところです……!)


 密かに胸を撫でおろしつつ、半泣きのリシェルの肩を優しく叩いた。


「……残念でしたね、リシェル。」


「エリシアさんまで……うぅ……っ!」


 そんな賑やかなやり取りを繰り広げながら街道を歩き――


 やがて見えてきたのは、エリックが自らの手で建築した、あの異様なまでに立派な家だった。


「……ただいまです。」


 まだ納得がいかない様子のリシェルが扉を開ける。


 無事に帰宅を果たした一行だったが、エリシアの瞳には「自分にはまだ一回残っている」という静かな情熱が燃え上がっていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


リシェル、ついに念願の演出魔法を撃てました。


……撃てましたが、エリックの判定は「一回」。


本人としては業務だったのでノーカウントにしたかったようですが、残念ながら却下されました(笑)。


一方のエリシアは、ちゃっかり一回を温存。


この「あと一回」が、今後どう使われるのかも楽しみにしていただけると嬉しいです。


次回からは再び拠点でのスローライフが始まります。

とはいえ、このメンバーなので、きっと何か一筋縄ではいかない出来事が待っているはず……?


ブックマークや評価、いいね、ご感想など、本当にいつも励みになっています。


これからもエリックたちを、よろしくお願いいたします!

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