表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/58

第十七話(後編):無数の赤い瞳

本話をご覧いただきありがとうございます!


いよいよ魔王現象の真の発生地――新たなダンジョンへと足を踏み入れる四人。


相変わらず「世界の危機よりトマト」なエリックですが、最強(?)の仲間たちと共についに本格的な攻略が始まります。


緊迫感とテンポのギャップを楽しんでいただけたら嬉しいです!

「この中だな。」


 そう言って一歩踏み出そうとしたエリックを、レイナが慌てて止めた。


「待て。」


「この前の知的ゴブリンを忘れたのか。」


「相手は考えて動く。」


「罠を張って待っている可能性もある。」


 エリックは足を止め、小さく頷いた。


「あ。」


「なら確認。」


「戦えること。」


 レイナが首を傾げる。


「戦えること?」


「知的ゴブリン。」


「罠ある。」


「知らないまま入る。」


「効率悪い。」


 エリシアが納得したように頷く。


「確かに、その通りですね。」


 エリックはエリシアへ視線を向けた。


「なぁ。」


「あのポンコツ女神から加護、もらったんだろ。」


 レイナが即座にツッコむ。


「女神様をポンコツ呼ばわりするな!」


「いいから答えて。」


 エリックは真顔だった。


エリシアは軽く咳払いをした。


「私の加護は《魔導監視網》です。」


「魔力の流れや敵意、周囲の異常を感知できます。」


「この水晶を媒介にすれば、さらに広範囲を解析可能です。」


 エリックは短く頷いた。


「なるほど。」


「罠。」


「分かる?」


「絶対ではありませんが。」


「魔力を利用した罠であれば、高い確率で察知できます。」


「十分。」


 エリックは今度はレイナを見る。


「レイナ。」


「加護。」


 レイナは胸を張った。


「私は《不意打ちされない》加護だ。」


「殺気や敵意を感じ取れる。」


「だから奇襲には強い。」


「そのおかげで王都でも前線を任されている。」


「なるほど。」


 エリックは静かに頷く。


「前。」


「任せる。」


「おう。」


「任せとけ。」


 次に視線はリシェルへ向いた。


「リシェル。」


 リシェルは静かに微笑む。


「私は植物魔法と精霊魔法。」


「それから、杖と剣の二刀流です。」


 レイナが目を丸くした。


「そういえば聞いてなかったな。」


「はい。」


「勇者様と旅をしていた頃は、後衛だけでは務まりませんでしたから。」


 エリックは一度だけ頷いた。


「なるほど。」


 リシェルは少し首を傾げる。


「そういえば、エリックは……。」


「どのような加護をお持ちなのですか?」


 その場が静まり返った。


 レイナとエリシアが顔を見合わせる。


「あ……。」


「そういえば、お話ししていませんでしたね。」


 レイナが苦笑する。


「こいつな。」


「女神様から加護を貰えるって言われたのに。」


「全部断った。」


 リシェルは目を丸くした。


「全部……ですか?」


「ああ。」


 エリックはあっさり答えた。


「要らなかった。」


「でも……。」


 リシェルは足元の転移魔法陣を見る。


「その魔法陣は……。」


「自分で作った。」


 エリックは当然のように言う。


「リシェルの魔法書。」


「参考。」


「でも、そのままだと使いにくかった。」


「だから描き直した。」


 リシェルは苦笑しながら頷いた。


「そうでしたね。」


「あれはもう、私の知る魔法ではありません。」


「エリックだけの魔法です。」


 エリシアも静かに微笑む。


「加護を授からず、ここまで辿り着く方は、おそらく世界中を探してもエリックさんだけでしょう。」


 レイナはため息をついた。


「結局、一番規格外なのは加護なしのお前なんだよな……。」


 エリックは首を傾げた。


「そうか?」


「そうなんだよ。」


 レイナは即座にツッコんだ。


エリックは洞窟の入口を見つめたまま言った。


「よし。」


「レイナ。」


「盾、頼む。」


「了解。」


 レイナは剣を抜き、一歩前へ出る。


「エリシア。」


「後方支援。」


「お任せください。」


 エリシアは水晶を握り直し、周囲の魔力を探り始める。


「リシェル。」


「レイナの後ろ。」


「はい。」


 リシェルは杖を握り、腰の剣へそっと手を添えた。


 エリックは三人を見回す。


「……それにしても。」


「凄いメンバーだな。」


 レイナが苦笑する。


「今さらか?」


 エリックは真顔だった。


「俺。」


「要らないだろ。」


 一瞬、沈黙。


 レイナは呆れたように額へ手を当てる。


「何言ってる。」


「一番訳分からないのがお前だ。」


 エリシアも苦笑する。


「エリックさんがいなければ、このダンジョンへ辿り着くことすら出来ませんでした。」


 リシェルも優しく微笑む。


「私もそう思います。」


エリックは少しだけ考え込んだ。


「……なるほど。」


「じゃあ。」


「トマト、助けに行く。」


 レイナは額を押さえた。


「だから世界の危機よりトマトなのか、お前は……。」


 エリシアが苦笑する。


「ですが、そのトマトを救うには、このダンジョンを攻略するしかありません。」


 エリックは頷いた。


「ああ。」


「なら。」


「行く。」


一歩、洞窟の奥へ足を踏み入れる。


 外の光はすぐに背後へ消えた。


 辺りは闇。


 足元すら見えない。


 エリシアは静かに杖を掲げる。


「《ライト》」


 淡い光球がふわりと宙へ浮かび上がった。


 柔らかな白い光が洞窟の壁を照らしていく。


 その瞬間。


 四人は息を呑んだ。


 壁を伝うのは、ただの水滴ではない。


 どろりとした黒い液体が、生き物のように岩肌を這い、不気味な光を放っていた。


 王都のダンジョンとは、根本的に違う。


 整えられた石壁も、人工的な通路も存在しない。


 そこにあるのは――濃密な悪意だけ。


 レイナは剣を握る手へ力を込めた。


「……空気が、重すぎる。」


 エリシアは光球を見つめたまま、小さく呟く。


「瘴気濃度が異常です……。」


「王都七十階層の最深部を、すでに上回っています。」


 リシェルも静かに辺りを見回した。


「生きているような……ダンジョンですね。」


 エリックは黒い壁へ手を触れ、小さく頷く。


「なるほど。」


「気持ち悪い。」


淡い光が洞窟の内部を照らした、その瞬間。


 エリックは足元へ枝を走らせた。


 さらさらさらっ――。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 次々と魔法陣が描かれていく。


 十を超えても止まらない。


 やがて十数枚もの魔法陣が四人の足元へ展開された。


 カッ。


 カッ。


 カッ。


 次々と淡い光を放つ。


 レイナが額を押さえた。


「……またか。」


 エリックは顔も上げない。


「普通だろ。」


「どこが普通なんだ!」


 レイナが思わず叫ぶ。


「全部、防御系魔法陣じゃないか!」


 エリックは最後の一枚を書き終え、立ち上がる。


「ああ。」


「攻撃は任せた。」


「俺は死にたくない。」


 レイナは呆れたように笑う。


「そこだけ妙に正直だな、お前。」


 エリシアは魔法陣を一枚一枚見回し、思わず息を呑んだ。


「……素晴らしい。」


「防御術式が重ね掛けされている。」


「しかも互いに干渉せず、一つの結界として機能しているなんて……。」


 リシェルも静かに頷く。


「二百年前でも、この発想はありませんでした。」


 エリックは首を傾げる。


「そうか?」


「普通だ。」


「だから普通じゃないんだ!」


 レイナの叫びが、静かなダンジョンへ響いた。


 十数枚の防御魔法陣が淡く輝く。


 その瞬間だった。


 ドクン。


 洞窟全体が、心臓の鼓動のように一度だけ脈打った。


 岩肌が震える。


 足元から低い振動が伝わってくる。


 レイナは反射的に剣を構えた。


「今のは……。」


 エリシアが水晶を見る。


「ダンジョンが……。」


「脈動しています。」


 ドクン。


 もう一度。


 今度はさっきよりも僅かに強い。


 リシェルが静かに呟く。


「生きています……。」


「まるで巨大な生き物の中に入ってしまったようです。」


 レイナが思わず顔をしかめる。


「気味が悪いな。」


 エリックは足元の岩へ触れた。


「なるほど。」


「成長中か。」


 エリシアが驚いて振り向く。


「分かるのですか?」


「ああ。」


「まだ完成してない。」


「だから脈打ってる。」


その時。


エリシアの表情が変わる。


《魔導監視網》が、一斉に反応を始めた。


エリシアの瞳が大きく見開かれる。


「来ます。」


ドクン。


ダンジョンがもう一度、大きく脈打つ。


その瞬間――


洞窟の奥で、


無数の赤い瞳が、一斉に開いた。

最後までお読みいただきありがとうございました!


加護すら断った一番の規格外・エリックと、頼もしすぎる(?)ヒロイン陣。


ラストで無数の赤い瞳が一斉に開くなど、ダンジョンは一筋縄ではいかない雰囲気を醸し出していますが……果たして無事にトマト(スローライフ)を取り戻すことはできるのか!?


もし「面白かった!」「エリックのマイペースさにクスッとした」と思っていただけたら、ぜひブックマーク登録や下部の「☆☆☆☆☆」からの評価・感想をいただけますと、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ