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第六十七話(後編):風車が回る日

マルタが作り上げた、風車の最後の部品。


いよいよ、魔境の森に風車が完成します。


果たして、風の力で石臼を動かすことはできるのでしょうか。


そして、エリックの頭には、次の計画も浮かび始めているようです。

――しばらくして。


「できたよ、エリック!」


マルタが。


最後の部品を持ってきた。


「羽根を軸に固定する部品さ」


そう言って。


エリックに差し出す。


「これ、どうだい?」


「……すげーー」


エリックは。


部品を受け取ると。


図面と見比べた。


「…………ん?」


首を傾げる。


もう一度。


部品を見る。


そして。


図面を見る。


「……これ、向きが反対だろ」


マルタは。


ニヤリと笑った。


「エリック、いいかい」


「ん?」


「羽根は右回りだ」


マルタが。


部品を指で示す。


「この部品を、羽根と同じ向きに取り付けるとね」


「回り続けるうちに、少しずつ緩んで外れることがあるんだよ」


「……!」


エリックが。


部品を見直す。


それは。


まるで。


エリックの描いた図面を。


鏡に映したように。


真逆の向きになっていた。


「だから、わざと反対向きにしたのか?」


「そういうことさ」


マルタが。


満足そうに頷く。


「図面どおりに作るだけなら、誰にだってできるからね」


「…………」


エリックは。


しばらく部品を眺めていた。


やがて。


顔を上げる。


「……マルタ」


「なんだい?」


「やっぱり、すげえな」


「ふふっ」


マルタが。


嬉しそうに笑った。


「褒めても、手は抜かないよ」


「分かってる」


エリックは。


部品を大事そうに持ち直した。


「よし。取り付けてくる」


五段に組まれた。


大きな木製のやぐら。


その一番上では。


ミーナとルチアが。


風車の羽根を支えていた。


「ボス、準備できてます!」


「こっちも大丈夫です!」


「よし」


エリックが。


二人のもとへ向かう。


三人で。


最後の羽根を軸に合わせる。


「もう少し右」


「はい!」


「……そこで止めてくれ」


ミーナが。


羽根を支え。


ルチアが。


軸の位置を確かめる。


エリックは。


マルタが作った部品を。


慎重に取り付けた。


「……よし」


固定を確かめる。


これで。


風車の羽根は完成だ。


その下では。


エリシアが。


図面を片手に。


作業の様子を見守っていた。


「エリックさん、取り付けは終わりましたか?」


「ああ。これで最後だ」


「分かりました!」


エリシアが。


嬉しそうに頷く。


その隣で。


マルタも。


完成した風車を見上げた。


「さあ……」


小さく。


呟く。


「ちゃんと回っておくれよ」


エリックは。


風車の羽根を見上げた。


「……よし」


固定具を確かめる。


そして。


ミーナとルチアに声をかけた。


「よし、羽根のストッパーを外すぞ」


「はい、ボス!」


「分かりました!」


二人が。


羽根を支えながら。


固定されていたストッパーを外す。


――カチッ。


これで。


羽根を止めるものはなくなった。


エリックは。


ゆっくりと。


一歩下がる。


「……さて」


風車を見上げた。


その下では。


エリシアとマルタも。


固唾をのんで見守っている。


森を吹き抜ける風が。


風車の羽根を揺らした。


――ギ……。


わずかに。


羽根が動いた。


風車の羽根が。


ゆっくりと。


動き始めた。


一回転。


そして。


もう一回転。


風を受けた羽根が。


少しずつ。


回転を速めていく。


「…………!」


エリシアが。


息を呑んだ。


マルタも。


口元に手を当てる。


「回った……」


誰かが。


小さく呟いた。


次の瞬間。


「やったーー!」


ミーナが。


大きな声を上げた。


「ボス! 回ってます!」


「本当ですね!」


ルチアも。


嬉しそうに声を弾ませる。


下からも。


歓声が上がった。


拍手が。


森に響き渡る。


けれど。


エリックは。


風車を見上げたまま。


「……いや、まだだ」


「えっ?」


エリシアが。


思わず振り返る。


「まだって……回ってますよ?」


「風車はな」


エリックが。


下を指差した。


「次は、これを石臼につなぐ」


風車の回転を伝えるために。


用意していた軸と歯車。


それらを使って。


風車の動きを。


石臼へ伝えるのだ。


エリックは。


やぐらを下りると。


石臼のそばへ向かった。


「マルタ、こっちの固定具はどうだ?」


「しっかりできてるよ。軸もずれないはずさ」


「よし」


エリックは。


図面を確かめながら。


風車の軸と。


石臼側の歯車をつないでいく。


エリシアたちも。


息を潜めて。


その作業を見守った。


やがて。


最後の固定具が。


カチリとはまった。


エリックは。


ゆっくりと立ち上がる。


「……これで、つながった」


風車は。


今も回り続けている。


その力が。


軸を伝わり。


石臼へ届くはずだった。


エリックは。


石臼を見つめた。


「……頼むぞ」


風車は。


風を受けて。


ゆっくりと回っている。


――ギギ……。


歯車が。


小さな音を立てた。


「…………」


エリックが。


石臼を見つめる。


――ガタッ。


一瞬。


軸が揺れた。


「……っ」


ミーナが。


思わず息を呑む。


だが。


次の瞬間。


――ゴトン。


石臼の上側が。


わずかに動いた。


そして。


ゆっくりと。


回転を始める。


「…………!」


エリシアが。


目を見開いた。


「回ってる……!」


「本当だね……!」


マルタも。


驚いたように。


石臼を見つめる。


風車の羽根が回る。


軸が回る。


歯車が回る。


そして。


石臼が。


確かに。


動いていた。


「よし……!」


エリックが。


小さく拳を握る。


「動いたぞ!」


その声を聞いた瞬間。


再び。


大きな歓声が上がった。


「やったーー!」


ミーナの尻尾が。


勢いよく揺れる。


ルチアも。


何度も拍手していた。


エリシアは。


図面と石臼を見比べながら。


興奮を隠せない。


「風の力で……石臼が動いているんですね!」


「ああ」


エリックが。


頷く。


「これなら、人がずっと回し続けなくても小麦を挽ける」


「すごい……!」


エリシアが。


石臼へ近づこうとした。


「待て」


エリックが。


手で制する。


「まだ小麦を入れてないだろ」


「……あっ」


エリシアが。


ぴたりと止まった。


エリックは。


小さく息を吐く。


「まずは、ちゃんと粉になるか試さないとな」


「そうですね!」


エリシアが。


大きく頷く。


マルタも。


嬉しそうに笑った。


「じゃあ、次は小麦だね」


「ああ」


エリックは。


風車を見上げた。


魔境の風を受けて。


大きな羽根が回っている。


その力が。


今。


石臼を動かしていた。


「……よし。小麦を持ってこよう」


エリックは。


そう言って。


歩き出した。


――しばらくして。


エリックは。


小麦を石臼へ入れた。


風車は。


変わらず。


ゆっくりと回っている。


軸が回り。


歯車が動き。


石臼が。


小麦を挽いていく。


やがて。


石臼の出口から。


細かな粉が流れ出した。


「……!」


エリックが。


それを手に取る。


指先で。


そっと確かめた。


「ヨシ、いいぞ!」


思わず。


声が弾む。


「小麦粉ができた!」


「本当にできましたね!」


エリシアが。


嬉しそうに声を上げた。


ミーナとルチアも。


顔を見合わせて。


拍手する。


マルタは。


流れ出てくる小麦粉を眺めながら。


何度も頷いていた。


「こいつは便利だねぇ。風が吹いていれば、石臼を回してくれるんだから」


「ああ。これなら、ずっと手で回さなくてもいい」


エリックは。


出来上がった小麦粉を見つめる。


そして。


ふと。


何かを思いついたように。


顔を上げた。


「……待てよ」


「どうしました、エリックさん?」


エリシアが。


首を傾げる。


エリックは。


風車と石臼を。


交互に見た。


「これなら、上手くやれば白米も作れるかもしれない」


「白米?」


「ああ」


エリックが。


頷く。


「まずは籾殻を取って……そのあと、表面を削る必要があるけどな」


風車の羽根を。


見上げる。


「……上手くいけば、米を搗くのも風の力でできるはずだ」


エリックの頭の中では。


すでに。


次の仕組みが動き始めていた。


「よし。米が収穫できたら、次はそっちだな」


魔境の風が。


風車の羽根を回し続ける。


小麦粉作りから始まった挑戦は。


やがて。


この森で初めての。


白米作りへと。


つながろうとしていた。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!


面白いと思っていただけましたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


マルタの職人技も加わり、ついに風車が完成!


風の力で石臼が動き、見事に小麦粉を作ることができました。


そして、エリックの次の目標は白米作り。


魔境の森のものづくりは、まだまだ続きそうです。


次回もよろしくお願いします!

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