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第六十七話(前編):魔境の森に広がる交流

賑やかな朝食を終えたエリックたち。


そこへ、フィリアと十人ほどの薬師たちが魔境の森へやって来ました。


フィオネ姫も同行し、薬草調査が始まります。


一方、マルタにも新しい考えがあるようで……。

「エリック!」


フィオネが。


駆け寄ってくる。


その手には。


籠があった。


「見つけました!」


「……お」


エリックが。


籠を覗き込む。


「六個、全部か?」


「はい!」


フィオネが。


嬉しそうに頷く。


「全部、見つけました!」


「そっか」


エリックが。


フィオネを見る。


そして。


ぽん。


頭に手を置いた。


「よくやったな、フィオネ」


「…………え?」


フィオネが。


固まる。


頭に置かれた手。


そして。


呼び捨てにされた自分の名前。


「……い、今」


「ん?」


「私のこと……」


「フィオネ?」


エリックが。


不思議そうに首を傾げる。


「……嫌だったか?」


「い、いえ!」


フィオネが。


慌てて首を横に振る。


「嫌ではありません!」


「そうか」


エリックは。


それ以上気にせず。


手を離した。


「じゃあ、卵を持っていこう」


「…………」


フィオネは。


その背中を見つめる。


「……本当に」


小さく。


呟いた。


「不思議な人ですね……」


その時。


「……ボス」


ミーナが。


やぐらからそっと近づいてくる。


「ん?」


エリックが。


振り返る。


ミーナの隣には。


ルチアもいた。


二人とも。


何故か。


少しだけ期待するような顔をしている。


「……どうした?」


「いえ!」


ミーナが。


元気よく答える。


「私たちも、ちゃんと頑張ってます!」


「……うん?」


エリックが。


首を傾げる。


ルチアも。


こくこくと頷いた。


二人の尻尾が。


パタパタ。


パタパタ。


いつもより。


少しだけ大きく揺れている。


「……ああ」


エリックが。


二人を見比べる。


そして。


ぽん。


ぽん。


二人の頭を。


順番に撫でた。


「いつも助かってるぞ」


「…………!」


ミーナの尻尾が。


ぶんぶんと揺れ始める。


「ボス……!」


ルチアも。


嬉しそうに目を細めた。


「ありがとうございます、ボス」


「……?」


エリックは。


二人の様子を見て。


首を傾げる。


「……なんだ?」


少し離れたところで。


フィオネが。


その光景を見ていた。


「…………」


そして。


自分の頭に。


そっと手を当てる。


「……なるほど」


小さく。


呟いた。


「……さてと」


エリックが。


軽く手を叩く。


「レイナの手作りの朝食でも食べに行くか」


「はい、楽しみですね」


フィオネが。


嬉しそうに頷いた。


ミーナとルチアも。


顔を見合わせる。


「ボス、今日の朝食は何でしょうね!」


「レイナさんのお料理、楽しみです」


「……お前たち、さっきから食べることばかりだな」


エリックが。


呆れたように呟く。


「ボスも楽しみですよね?」


「……まあな」


そんな会話をしながら。


一行は。


家へと戻っていった。


やがて。


家の前に着くと。


ふわり。


温かな料理の香りが漂ってきた。


「……いい匂いですね」


フィオネが。


小さく息を吸う。


食卓には。


野菜がたっぷり入ったスープ。


表面にこんがりと焼き色のついた魚のムニエル。


新鮮な野菜や具材を挟んだサンドイッチ。


そして。


搾りたての山羊のミルクが並んでいた。


「お、うまそうだな」


エリックが。


食卓を見て頷く。


「レイナ、ありがとう」


「いえ。皆さんの分も用意しましたから」


レイナが。


少し照れたように答える。


「遠慮せずに食べてください」


「では、お言葉に甘えて」


フィオネが。


席に着く。


ミーナとルチアも。


待ちきれない様子で座った。


「いただきます!」


二人の声が。


揃って響く。


エリックも。


スープを一口飲む。


「……うん。うまい」


野菜の甘みが。


口いっぱいに広がる。


続いて。


ムニエルを一口。


外側は香ばしく。


中の身はふっくらとしていた。


「これもいいな」


「本当ですね」


フィオネも。


嬉しそうに頷く。


サンドイッチを手に取る者。


スープをおかわりする者。


山羊のミルクを飲んで。


ほっと息をつく者。


食卓は。


あっという間に賑やかになった。


「レイナさん、スープのおかわりをいただいてもいいですか?」


「はい、もちろんです」


「私もお願いします!」


「ミーナ、そんなに急がなくても料理は逃げないぞ」


「でも、おいしいんです!」


「……そうか」


エリックが。


小さく笑う。


フィオネも。


その様子を見ながら。


楽しそうに微笑んでいた。


王城の食卓とは違う。


気取らず。


誰もが好きなものを食べ。


自然と会話が弾む朝食。


魔境の森の家には。


そんな穏やかな時間が流れていた。


その時。


――ブゥゥン。


家の外で。


魔法陣が。


淡く光り始めた。


「……ん?」


エリックが。


顔を上げる。


やがて。


魔法陣の光が消えると。


そこには。


フィリアと。


十人ほどの薬師たちが立っていた。


初めて訪れた魔境の森。


薬師たちは。


目の前に広がる景色を見て。


驚いたように周囲を見回している。


「……ここが、魔境の森」


一人の薬師が。


思わず呟いた。


その時。


リシェルが。


彼らのもとへ歩み寄る。


「皆さん、無事に着きましたね」


「はい。ありがとうございます、リシェルさん」


フィリアが。


微笑んで頷いた。


「それでは、森をご案内しますね」


リシェルが。


森の奥へ目を向ける。


「まずは、こちらから行きましょう」


その時。


「皆さん」


フィオネが。


一歩前へ出た。


「朝のお仕事、ご苦労様でした」


薬師たちが。


一斉に振り返る。


フィリアは。


胸の前に両手を添え。


丁寧に頭を下げた。


「フィオネ姫様、おはようございます」


「おはようございます、フィリアさん」


フィオネが。


穏やかに微笑む。


「本日は、ここ魔境の森で薬草の調査を行います」


「皆さん、どうぞよろしくお願いします」


「承知いたしました」


フィリアが。


改めて頭を下げる。


薬師たちも。


次々と頭を下げた。


「それでは」


フィオネが。


リシェルを見る。


「森の案内をお願いしますね」


「はい、お任せください」


リシェルが。


頷く。


「では、皆さん。こちらへどうぞ」


リシェルが。


歩き始めようとした。


「私も、ご一緒します」


フィオネが。


自然に続ける。


「実際に森を歩いて、薬草を見てみたいですから」


「承知しました」


リシェルが。


微笑む。


その隣には。


レイナが。


静かに付き添っていた。


姫の護衛として。


片時も離れるつもりはない。


「では、行きましょう」


フィオネが。


薬師たちに声をかける。


「はい、フィオネ姫様」


フィリアを先頭に。


薬師たちが。


リシェルの案内に従って歩き出す。


フィオネとレイナも。


その後に続いた。


こうして。


フィオネ姫を含めた薬草調査の一行は。


魔境の森の奥へと向かっていった。


「よし!」


エリックが。


椅子から立ち上がる。


「俺たちも、風車作りの続きをするか」


「そうだね」


マルタも。


立ち上がる。


だが。


ふと。


森の方へ目を向けた。


「……それにしても」


「ん?」


「エルフの薬師が、あんなに大勢で来るなんてねぇ」


マルタが。


少し驚いたように。


目を丸くする。


「いったい、どうなってるんだい?」


「……いろいろあってな」


エリックが。


少し考えてから。


口を開く。


「レイナのために、一番いいと思ってな」


「……レイナのために?」


マルタが。


不思議そうに首を傾げる。


「ああ」


エリックが。


短く頷く。


「詳しい話は、また後でな」


「そうかい」


マルタは。


それ以上、深く聞かなかった。


「まあ、何か事情があるんだろうね」


そう言って。


小さく微笑む。


「それじゃ、風車作りの続きを始めようか」


「うん」


エリックが。


図面を手に取った。


―― 工房。


マルタは。


細かな木製部品を。


手際よく削っていた。


しばらくして。


ふと。


エリックに声をかける。


「ねえ、エリック」


「ん?」


「エルフの薬師の誰かにさ」


マルタが。


手を動かしながら。


続ける。


「私たちに、薬の作り方を教えてくれるように頼んでくれないかい?」


「……それなら」


エリックが。


少し考える。


「レイナに頼めば?」


「レイナに?」


マルタが。


手を止める。


「ああ」


エリックが。


頷く。


「確か、レイナの側使いが」


「エリシアと同じように、勉強熱心らしい」


「へえ……」


マルタが。


感心したように声を漏らす。


「それなら、教えるのも好きかもしれないね」


「どうだろうな」


エリックが。


図面に目を落とす。


「本人に聞いてみればいい」


「そうだね」


マルタが。


再び部品を削り始めた。


「せっかくだから、お願いしてみようかね」


エリックも。


図面へ目を落とした。


風車作り。


薬の研究。


それぞれが。


自分にできることを。


少しずつ広げていく。


そして。


魔境の森では。


エルフとドワーフの新たな交流が。


静かに。


始まろうとしていた。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!


面白いと思っていただけましたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。


薬師たちを迎え、魔境の森で薬草調査が始まりました。


そして、マルタから出てきたのは、薬作りを学びたいという新しい提案。


エルフとドワーフの交流が、また一つ広がりそうです。


次回もよろしくお願いします!

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