第六十六話(前編):風車を作ろう!
精米機作りの相談をしていたエリックたち。
しかし、図面を眺めていたエリックは、あることを思いつきます。
それは、風の力を利用すること。
ドワーフたちも加わり、魔境の森で新たなものづくりが始まります。
「……ちょっと待てよ」
エリックが。
描いた図を見つめる。
「上手くいけば……」
一拍。
「小麦粉も作れるんじゃないか?」
「……小麦粉?」
マルタが。
首を傾げる。
「今まで通り、石臼で挽けばいいんじゃないのかい?」
「いや」
エリックが。
図を指差す。
「風車で動力を作れるなら、石臼も回せるだろ?」
「……あ」
ドワーフの一人が。
声を漏らす。
「つまり、人がずっと石臼を回さなくてもいいってことか?」
「そういうこと」
エリックが。
頷く。
「米をつく仕組みとは別に、石臼を回す仕組みも付ければいい」
「なるほど……」
マルタが。
腕を組む。
「米のために考えたものが、小麦粉作りにも使えるってわけかい」
「うん」
エリックは。
再び紙に目を落とす。
「……これ、思ったより便利かもしれないな」
「だったら、なおさら作らなきゃね!」
マルタが。
勢いよく言った。
「よし、みんな!」
「風車作りだよ!」
「おお!」
ドワーフたちが。
一斉に声を上げる。
「……いや、まだ作ると決まったわけじゃ」
エリックの声は。
またしても。
誰にも届かなかった。
その時。
「……それに、あれも……」
エリックが。
何かを思い出したように呟く。
だが。
すぐに首を振った。
「いや、流石に無理か……」
「何が無理なんだい?」
マルタが。
不思議そうに尋ねる。
「いや、今はいい」
エリックは。
描いた図を見直す。
風車。
回転する軸。
そして。
石臼。
「……とりあえず」
エリックが。
顔を上げる。
「小麦粉を、風の力を借りて作ってみないか?」
「小麦粉かい?」
「うん」
エリックが。
頷く。
「今ある石臼を使えば、試せるだろ?」
「なるほどね」
マルタが。
石臼を見る。
「風車で石臼を回すわけか」
「そういうこと」
エリックは。
紙に。
風車と石臼をつなぐ軸を描き加えた。
「まずは、これが上手く動くか試したい」
「それで、米の方は?」
ドワーフの一人が。
尋ねる。
「次に米が収穫できたら、白米を作る機械を考えよう」
エリックが。
田んぼの方角を見る。
「今はまだ、米が育ってる途中だからな」
「……確かに」
マルタが。
頷く。
「先に小麦粉作りで試しておけば、風車の動力が使えるかどうかも分かるね」
「うん」
エリックが。
小さく頷いた。
「どうだ?」
マルタは。
集まったドワーフたちを見る。
「私は賛成だよ!」
「おう、やってみようぜ!」
「風車か……面白そうだな!」
次々と。
声が上がる。
「よし、決まりだね!」
マルタが。
手を叩いた。
「まずは風車作りだ!」
「……ああ」
エリックは。
描き上がった図を見つめた。
米を白米にするために考え始めた機械だったが。
どうやら。
先に小麦粉作りが始まりそうだった。
「……よし」
エリックが。
紙を広げる。
「まずは、風車からだな」
一本。
線を引く。
大きな羽根。
支柱。
回転する軸。
エリックは。
頭の中にある構造を。
次々と紙に描いていく。
「…………」
マルタが。
横から覗き込む。
「へえ……」
エリックは。
一枚目を描き終えると。
新しい紙を取り出した。
今度は。
風車を。
正面から描く。
羽根の大きさ。
軸の位置。
支柱との接続部分。
それぞれの位置関係が。
分かるように。
細かく描き込んでいく。
次の紙には。
横から見た図。
さらに。
内部の構造。
風車の軸から。
歯車を通して。
石臼へと力を伝える仕組みまで。
描いていく。
「…………」
ドワーフたちが。
次第に。
真剣な顔になっていく。
「おい……」
一人が。
図面を覗き込む。
「これ、本当に風の力だけで動かすのか?」
「そうだ」
エリックが。
頷く。
「風車が回れば、石臼も回る」
「なるほどな……」
別のドワーフが。
横から図面を見る。
「正面から見た図と、横から見た図があるのか」
「その方が分かりやすいだろ」
「確かにな!」
マルタが。
図面を手に取る。
しばらく。
じっくりと眺めていたが。
やがて。
にっと笑った。
「よし!」
「大きな構造は分かったよ」
マルタが。
細かな部品の図を指差す。
「こういう木の部品なら、私に任せな!」
「本当か?」
「家具職人を誰だと思ってるんだい!」
マルタが。
胸を張る。
「木の寸法も、組み合わせも、細工もね」
「任せておきな!」
「……頼む」
エリックが。
小さく頷く。
「他の部分も、みんなで作れそうか?」
「おう!」
ドワーフたちが。
次々と声を上げる。
「この図面があれば、形にできそうだ!」
「材料を集めるところからだな!」
「よし、さっそく取りかかろうぜ!」
たちまち。
ドワーフたちが。
動き始めた。
「……」
エリックは。
広げた図面を見る。
最初は。
白米を食べたい。
ただ。
それだけだった。
それが。
いつの間にか。
風車を作る話にまで。
広がっていた。
「……まあ」
エリックが。
小さく呟く。
「小麦粉も作れるなら、悪くないか」
「キュウ!」
足元で。
ルークが鳴いた。
「……お前も食べたいのか?」
「キュウ!」
エリックは。
小さく笑った。
風車の図面を囲み。
ドワーフたちが。
それぞれ作業の相談を始めた。
その中で。
何人かの若いドワーフたちが。
少し困ったように顔を見合わせていた。
やがて。
一人が。
エリックの前へ歩み出る。
「なあ、エリック」
「ん?」
「俺たちにも、何か手伝わせてくれ」
「……」
エリックは。
集まった若者たちを見る。
風車の部品作りは。
マルタを中心に。
すでに担当が決まり始めていた。
「そうだな……」
エリックは。
少し考える。
そして。
新しい紙を取り出した。
「なら、こっちを頼む」
そう言うと。
エリックは。
再びペンを走らせた。
今度描き始めたのは。
風車そのものではない。
高くそびえる。
木製のやぐらだった。
四本の支柱。
それらを支える横木。
地面に固定する部分。
そして。
最上部に。
風車を取り付けるための台座。
正面から見た図。
横から見た図。
さらに。
支柱の組み方まで。
丁寧に描き込んでいく。
「……おお」
若者たちが。
図面を覗き込む。
「これを作ればいいのか?」
「うん」
エリックが。
頷く。
すると。
一人の若者が。
図面を見上げた。
「……こんなに高いやぐらを作るのか?」
「風の力が必要だからな」
エリックが。
空を見上げる。
「高いところの方が、風を受けやすいだろ」
「なるほど……」
若者たちは。
もう一度。
図面を見る。
「材料はどうするんだ?」
「それなら」
エリックが。
森の方を指差した。
「俺たちの家の隣に、山羊小屋があるだろ?」
「ああ」
「あそこにリシェルがいるはずだ」
エリックは。
図面を一枚。
若者へ渡す。
「これを見せて、風魔法で木を切ってくれって頼んでくれ」
「リシェルさんに?」
「うん」
エリックが。
頷く。
「頼めば、すぐに切ってくれるはずだ」
「分かった!」
若者が。
図面を受け取る。
「すぐに行くよ!」
「ああ、頼む」
若者たちは。
図面を大事そうに抱えると。
山羊小屋へ向かって。
勢いよく駆け出した。
「……」
エリックは。
その後ろ姿を見送る。
風車の部品を作る者。
やぐらを組み立てる者。
材料を準備する者。
それぞれが。
自分にできる仕事を見つけていく。
「……よし」
エリックは。
残った図面をまとめた。
これなら。
風車作りも。
順調に進みそうだった。
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精米機作りから始まった話は、いつの間にか風車作りへ。
マルタたちドワーフも、それぞれの得意分野を生かして動き始めました。
果たして、魔境の森にどんな風車が出来上がるのでしょうか。
次回もよろしくお願いします!




