第六十五話(後編):塩おにぎりへの道
田んぼの稲も順調に育ち、初めての稲刈りが近づいてきました。
炊きたてのお米で塩おにぎりを食べたいエリック。
しかし、そのためには一つ問題がありました。
エリックは、ドワーフたちに相談することに……。
エリックは。
歩き出しながら。
ふと思い出す。
「……そういえば」
「マルタ、まだ寝てるかな?」
少し考えて。
付け加える。
「まあ、精米装置くらいなら、イラストを描けば作れるだろう」
「……」
エリックは。
自分の考えに納得したように頷く。
「まあ、行ってみるか」
エリックは。
ルークを連れて。
ドワーフたちの舎宅へ向かった。
ドワーフたちの舎宅に着く。
エリックは。
建物を見上げた。
「……ここか」
中へ入ると。
木の匂いがした。
廊下の両側には。
いくつもの扉が並んでいる。
共同で使う食堂や。
作業に使う部屋もあるようだった。
「……」
エリックは。
周囲を見回す。
朝早いせいか。
まだ静かだった。
「マルタの部屋は……」
以前。
聞いていた部屋の場所を思い出す。
廊下を進み。
一つの扉の前で足を止めた。
「……まだ寝てるかな」
小さく呟く。
けれど。
今さら帰るわけにもいかない。
エリックは。
扉を軽くノックした。
コンコン。
「マルタ、いるか?」
「…………」
返事はない。
「……」
もう一度。
ノックしようとした時。
中から。
女性の声が返ってきた。
「……誰だい、こんな朝早くに!」
「エリックだけど」
「……エリック?」
中で。
ガタガタと音がした。
「ちょっと待ってな!」
「服を着るから、待ってておくれ!」
「……分かった」
エリックは。
扉の前で待つ。
ルークも。
隣で。
ちょこんと座っていた。
やがて。
ガチャッ。
扉が開く。
「はいはい、待たせたね……」
マルタが。
顔を出した。
そして。
目の前に立つエリックを見て。
目を丸くする。
「……エリック?」
「うん」
「本当に、エリックなのかい?」
「そうだけど」
次の瞬間。
マルタが。
エリックへ駆け寄った。
「帰ってきたんだね!」
ぎゅうっ。
エリックを。
思いきり抱きしめる。
「よかった……!」
「無事だったんだね!」
「苦しい苦しい!」
エリックが。
思わず声を上げる。
「マルタ、苦しいって!」
「おっと、すまないね!」
マルタは。
慌てて腕を緩めた。
けれど。
嬉しそうな顔は。
変わらない。
「まったく……」
「帰ってきたなら、顔くらい見せに来な!」
「今、来たところだよ」
「そうかい!」
マルタが。
大きく頷く。
そして。
突然。
舎宅の中へ振り返った。
「おーい!」
「みんな、起きな!」
「エリックが帰ってきたよ!」
「…………」
エリックは。
思わず。
額に手を当てた。
「いや、まだ朝だぞ……」
「何言ってるんだい!」
マルタが。
笑う。
「エリックが帰ってきたんだよ!」
その声に。
舎宅の奥から。
「……何だ?」
「エリックだって?」
「本当か!?」
次々と。
寝ぼけた声が上がり始めた。
「……」
エリックは。
隣のルークを見る。
ルークは。
尻尾を。
パタパタ。
振っていた。
「……お前まで嬉しそうだな」
「キュウ!」
舎宅の中は。
あっという間に。
騒がしくなった.
その時。
後ろから。
聞き慣れた声が聞こえた。
「坊主、レイナはどうだった?」
「……ボルグか」
エリックが。
振り返る。
「無事だよ」
「そうか!」
ボルグが。
ほっとしたように。
頷く。
「今は風呂に入ってる」
「風呂か!」
ボルグが。
嬉しそうに笑う。
「そいつは良かった!」
「出たら、声をかけてやってくれ」
「おう、分かった!」
ボルグが。
力強く頷いた。
「……そうだ、ボルグ」
エリックが。
ふと思い出したように。
口を開く。
「六十階層の扉について、後で話がある」
「……あの扉か」
ボルグが。
真剣な顔になる。
「夕食後、時間を空けてくれ」
「分かった」
ボルグが。
頷く。
「俺も、あの扉の施錠について話したいことがある」
「……そうか」
エリックが。
頷く。
「じゃあ、夕食後に話そう」
「ああ」
ボルグも。
頷き返した。
その時。
「ちょっと、二人とも!」
マルタが。
二人の間に割って入った。
「朝っぱらから、難しい話をしてるんじゃないよ!」
「……いや、夕食後の話だぞ」
エリックが。
淡々と答える。
「そういう問題じゃない!」
マルタが。
腰に手を当てる。
「せっかくエリックが帰ってきたんだ。まずは、みんなで話をしようじゃないか!」
「……分かった」
エリックが。
小さく頷いた。
「マルタ、頼みたいものがある」
「何だい?」
マルタが。
エリックを見る。
「米を食べられるようにする機械を作りたい」
「米?」
「うん」
エリックが。
頷く。
「籾から、白米にするんだ」
「……籾から白米?」
マルタが。
首を傾げる。
「殻を取るだけじゃないのかい?」
「それだけじゃない」
エリックが。
少し考える。
「まず、外側の硬い殻を取る」
「そのあと、表面を削るんだ」
「……ふむ」
マルタが。
腕を組む。
「つまり、二段階の加工が必要ってことかい?」
「そういうこと」
エリックが。
頷いた。
「だから、二つの仕組みを組み合わせた機械を作りたいんだ」
「なるほどね……」
マルタが。
楽しそうに笑う。
「また面白いものを考えたね、エリック!」
「みんな、ちょっと来ておくれ!」
マルタが。
舎宅の奥へ向かって声を張り上げた。
「エリックが困ってるんだ!」
「誰か、いい知恵を貸しておくれ!」
「……いや、困ってるというか」
エリックが。
小さく呟く。
だが。
その声は。
誰にも届かなかった。
しばらくすると。
奥から。
ドワーフたちが。
ぞろぞろと集まってきた。
「どうしたんだ?」
「エリックが困ってるって?」
「何を作るんだ?」
マルタが。
エリックを見る。
「ほら、説明しておくれ」
「……うん」
エリックは。
籾から白米にする機械を作りたいこと。
籾殻を取り除き。
さらに表面を削る必要があることを。
簡単に説明した。
「なるほどな……」
一人のドワーフが。
腕を組む。
「石臼を使えばどうだ?」
「石臼?」
「ああ。臼の隙間を調整して、荒く削るんだ」
「……」
エリックは。
少し考える。
「それだと、削りすぎるかもしれないね」
「確かにな……」
ドワーフが。
顎を撫でる。
「米まで砕いちまったら、元も子もないか」
その時。
集まったドワーフたちの中から。
一人の若者が。
口を開いた。
「……なら」
みんなが。
若者を見る。
「石臼の下側を、木にすればどうだ?」
「……木?」
エリックが。
若者を見る。
「上側は石で削る。でも、下側を木にすれば、少しは当たりが柔らかくなるんじゃないか?」
「…………」
エリックは。
考え込んだ。
石と石で挟むのではなく。
片方を木にする。
確かに。
それなら。
米への負担を減らせるかもしれない。
「……なるほど」
エリックが。
小さく呟く。
「試してみる価値はありそうだ」
若いドワーフの顔が。
ぱっと明るくなった。
「だろ?」
「うん」
エリックが。
頷く。
「いい考えだと思う」
「よし!」
マルタが。
両手を叩く。
「じゃあ、試作品を作ってみようじゃないか!」
舎宅の中に。
再び。
賑やかな声が広がった。
「なあ、エリック」
一人のドワーフが。
声をかけた。
「いつも小麦粉を作る時に使ってる石臼を見てくれ」
「……石臼?」
「ああ」
ドワーフが。
作業場の隅を指差す。
「これだ」
そこには。
普段から使われている。
石臼があった。
エリックは。
近づいて。
じっと観察する。
「……」
上側の石。
下側の石。
そして。
二つの石が重なる部分。
「どれぐらい荒くすればいい?」
ドワーフが。
尋ねる。
「……そもそも」
エリックが。
顔を上げた。
「米粒って、どれぐらいの大きさなんだ?」
「米粒?」
ドワーフたちが。
顔を見合わせる。
「このくらいじゃないか?」
一人が。
指先で。
小さな隙間を作る。
「いや、もう少し小さいか?」
「……」
エリックは。
少し考えると。
紙とペンを取り出した。
そして。
紙の上に。
線を描き始める。
さらさら。
まずは。
米粒の形。
細長い楕円を描く。
その隣に。
石臼の断面図。
上側の石と。
下側の石。
二つの間に。
わずかな隙間を描いた。
「米粒が、これくらいだとすると……」
エリックが。
米粒の絵を指差す。
「この隙間は、これくらい必要だな」
次に。
石臼の隙間を。
少し広げた図を描く。
「狭すぎると、米が割れる」
さらに。
隙間を広げた図を描く。
「でも、広すぎると殻が取れない」
「……なるほど」
ドワーフたちが。
一斉に絵を覗き込む。
「じゃあ、最初から隙間を固定するんじゃなくて、調整できるようにすればいいんじゃないか?」
一人が。
声を上げる。
「そうだな……」
エリックが。
石臼の図に。
調整用の仕組みを描き加える。
「これなら、実際に試しながら変えられる」
「なるほど!」
ドワーフたちが。
頷いた。
マルタも。
絵を覗き込みながら。
感心したように呟く。
「なるほどねぇ……」
そして。
エリックの肩を。
ぽんと叩いた。
「よし、エリック!」
「まずは、これを作ってみようじゃないか!」
「……うん」
エリックは。
描き上がった図を見つめた。
まだ。
完成形ではない。
けれど。
最初の一歩は。
見えてきた。
「……ちょっと待てよ」
エリックが。
描いた図を見つめる。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
面白いと思っていただけましたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。
久しぶりに帰ってきたエリックを、マルタたちドワーフも大歓迎!
そして、初めてのお米を食べるため、精米装置作りが始まりました。
ドワーフたちの知恵とエリックの漫画家脳。
果たして、どんな装置が出来上がるのでしょうか。
次回もよろしくお願いします!




