第六十五話(前編): ここが魔境の森の常識!
魔境の森へやって来たフィオネ姫たち。
そこに広がっていたのは、想像していた恐ろしい森とは違う光景でした。
畑に学校、そして子供たちの遊び場。
フィオネ姫たちは、エリックたちの暮らしを見て回ることに。
「……エリックさん」
フィオネ姫が。
静かに口を開く。
「ここは、本当に魔境の森なのですよね?」
「うん」
エリックが。
いつも通りに頷く。
「そうだけど」
「…………」
フィオネ姫は。
もう一度。
村のようになった森を見渡した。
フィオネ姫は。
庭先から。
森の向こうへと視線を移した。
「あちらにも、建物がありますね」
「ああ」
エリックが。
そちらを見る。
「ドワーフの人たちが、薬を作ってるところ」
「薬を……?」
「本を読みながら、薬やポーションの作り方を勉強してるんだ」
「…………」
フィオネ姫は。
もう一度。
建物を見つめた。
魔境の森で。
ドワーフたちが薬を作っている。
それだけでも。
驚くべきことだった。
しかし。
まだ。
驚きは終わらない。
「ミーナさん、あそこを見てください」
ルチアが。
森の奥を指差す。
「……あれは?」
木々の間に。
丸太や板を組み合わせた。
不思議な設備が見えた。
「遊具ですかね?」
ミーナが。
首を傾げる。
「なんでしょう?」
ルチアも。
不思議そうに眺める。
「私にも分かりません」
二人は。
しばらく。
顔を見合わせた。
「ボスに聞いてみますか?」
「そうですね」
ミーナが。
エリックへ向き直る。
「ボス、あれは何ですか?」
「アスレチック」
「アスレチック?」
「子供たちが遊ぶところ」
「へえ……!」
ミーナの尻尾が。
パタパタと揺れる。
ルチアも。
改めて設備を眺めた。
「楽しそうですね」
「……あれも、子供たちのための施設なのですか?」
フィオネ姫が。
驚いたように尋ねる。
「うん」
エリックが。
あっさり頷く。
「ジンが子供たちに教えてる」
「ジンさんと言うかたが……?」
フィオネ姫は。
さらに。
森の奥へと視線を向けた。
建物があり。
畑があり。
ドワーフたちが働き。
子供たちが学び、遊んでいる。
ここが。
危険な魔境の森だとは。
とても思えなかった。
「…………」
フィオネ姫は。
小さく息を吐いた。
「エリックさん」
「ん?」
「少し、見て回ってもよろしいでしょうか?」
「いいよ」
エリックが。
いつも通りに頷く。
「案内する」
「ありがとうございます」
フィオネ姫は。
嬉しそうに微笑んだ。
そのすぐ後ろで。
レイナも。
嬉しそうに微笑んでいた。
さらに後ろでは。
二人の側使いが。
口をぽかんと開けながら。
きょろきょろと。
周囲を見回している。
「……あれは何でしょう?」
一人が。
建物を指差す。
「さあ……?」
もう一人も。
首を傾げた。
エリックは。
二人の視線を追う。
「ああ、あれは脱衣所」
「脱衣所……?」
フィオネ姫が。
不思議そうに繰り返す。
その時。
建物の向こうから。
白い湯気が。
ゆっくりと立ち上っているのが見えた。
「……あちらから、湯気が見えますが」
フィオネ姫が。
そちらへ視線を向ける。
「あれは露天風呂」
「露天風呂……?」
フィオネ姫は。
ゆっくりと。
レイナの方を振り返った。
「……レイナさん」
「はい、姫様」
「もしかして」
フィオネ姫が。
少しだけ。
目を輝かせる。
「あれが、レイナさんの言っていた……」
「美白の効能があるという、露天風呂ですか?」
フィオネ姫が。
露天風呂を見つめたまま。
小さく声をかける。
「ん?」
「……手だけ」
フィオネ姫は。
少しだけ。
ためらった。
「手だけ、温泉につけてみても?」
「いいけど」
エリックが。
あっさり答える。
フィオネ姫は。
ほっとしたように。
微笑んだ。
その時。
側使いたちの後ろから。
エリシアが。
ひょこりと顔を出した。
「フィオネ姫様」
「……エリシアさん?」
「朝風呂は気持ちいいですよ」
エリシアが。
露天風呂へ視線を向ける。
「よかったら、一緒に入りませんか?」
「……!」
フィオネ姫の目が。
ぱっと輝いた。
「よろしいのですか?」
「もちろんです」
エリシアが。
にっこりと笑う。
「せっかくですから、ぜひ」
「では……」
フィオネ姫が。
少しだけ。
頬を緩めた。
「お言葉に甘えて」
その隣で。
レイナも。
嬉しそうに微笑んでいた。
「姫様、ご案内しますね」
「お願いします、レイナさん」
女性陣が。
露天風呂へ向かおうとする。
「……じゃあ」
エリックが。
ルークを見る。
「俺たちは田んぼを見に行くか」
「キュウ!」
ルークが。
元気よく鳴いた。
「……田んぼ?」
フィオネ姫が。
振り返る。
「うん。ちょっと様子を見てくる」
エリックは。
いつも通りに答えた。
「では、また後ほど」
「うん」
エリックが。
軽く手を振る。
そのまま。
ルークを連れて。
田んぼへ向けて歩き出した。
背後では。
女性陣の楽しそうな声が。
聞こえ始めていた。
「おぉ、すげーー!」
エリックが。
思わず声を上げた。
「見てみろ、ルーク!」
目の前には。
一面に広がる田んぼ。
稲穂が。
風に揺れていた。
「キュウ?」
ルークが。
エリックの隣から。
田んぼを覗き込む。
「流石、魔境だな」
エリックは。
稲穂を見ながら。
感心したように頷いた。
「もう、ここまで大きくなってる」
青々とした葉の間から。
実った稲穂が。
頭を垂れている。
「このぶんだと……」
エリックが。
一株を確かめる。
「あと数日で、刈り取りできるかもしれない」
「キュウ!」
ルークが。
嬉しそうに鳴いた。
「……いや」
エリックが。
ふと。
ルークを見る。
「お前、米は食べられるのか?」
「キュ?」
ルークが。
首を傾げる。
「……まあ、いいか」
エリックは。
もう一度。
田んぼを見渡した。
「収穫したら、何を作るかな……」
その顔には。
いつの間にか。
次の料理を考える楽しみが。
浮かんでいた。
「まず、やっぱり塩おにぎりだな」
エリックは。
実った稲穂を見ながら。
小さく頷いた。
「……」
塩を振って。
炊きたての米を握る。
想像しただけで。
腹が減ってきた。
「……待て」
エリックが。
ふと。
考え込む。
「精米装置、必要だよな」
「キュウ?」
ルークが。
首を傾げる。
「収穫しただけじゃ、すぐに食べられないか……」
エリックは。
田んぼを見渡した。
あと数日で。
刈り取りができるかもしれない。
なら。
その前に。
準備しておきたい。
「……よし」
エリックが。
顔を上げる。
「ドワーフの舎宅に行くか」
「キュウ!」
ルークが。
元気よく鳴いた
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魔境の森での暮らしに驚くフィオネ姫たち。
そして、レイナから聞いていた露天風呂にも興味津々のようです。
一方、エリックとルークは田んぼの様子を見に行くことに。
どうやら、初めての稲刈りも近づいているようですね。
次回もよろしくお願いします!




