第六十四話(後編):ここが魔境の森?
転移魔法陣の実験に挑むエリックたち。
無事に成功した魔法陣を使い、フィオネ姫たちも魔境の森へ向かいます。
しかし、そこで彼女たちが目にしたのは……?
――翌朝。
エリックたちは。
スワイルとカリナの家にいた。
「それじゃあ、世話になったな」
スワイルが。
笑いながら手を振る。
「いえ」
エリシアが。
小さく頭を下げる。
「食事まで用意していただいて、ありがとうございました」
「いいってことよ!」
スワイルが。
豪快に笑う。
カリナも。
穏やかに微笑んだ。
「またいつでもいらっしゃい」
「はい」
リシェルが。
嬉しそうに頷く。
エリックは。
二人に軽く頭を下げた。
「ありがとう」
「おう!」
スワイルが。
エリックの肩を叩く。
「また腹が減ったら来いよ!」
「……考えておく」
「ははは!」
スワイルが。
楽しそうに笑った。
挨拶を終えたエリックたちは。
帰りの転移魔法陣を使い、魔境の森へ戻る準備を整える。
だが。
その前に。
「……」
エリシアが。
ふと、周囲を見渡した。
「フィオネ様たちは、まだでしょうか?」
「そうですね」
リシェルが。
頷く。
「レイナも、そろそろ来る頃だと思います」
エリックは。
二人の顔を見る。
「……待つか」
「はい」
エリシアが。
微笑んだ。
「すみません、遅くなりました」
フィオネ姫が。
少し申し訳なさそうに頭を下げる。
「レイナさんから、農家着がよいと聞いておりましたので」
「古着を針子に頼んで、急いで仕立て直していただいたのですが……」
フィオネ姫が。
自分の服を見下ろす。
赤い刺繍の入った上着に。
動きやすそうなズボン。
元は王族のローブだったのだろう。
農家着としては。
ずいぶんと立派な仕上がりだった。
「おお……!」
ミーナが。
目を輝かせる。
「フィオネ様、かわいいです!」
「とてもお似合いです!」
ルチアも。
嬉しそうに頷く。
「はい。よくお似合いです」
リシェルも。
微笑んだ。
「……そうか?」
フィオネ姫が。
少し照れたように。
服の裾を整える。
「ありがとうございます」
その隣で。
エリックが。
じっと服を見ていた。
「…………」
「エリックさん?」
エリシアが。
不思議そうに尋ねる。
エリックは。
一度頷いた。
「合格」
「…………は?」
レイナが。
思わず声を上げた。
「何の試験ですか!?」
「農家着として」
「いや、姫様の服装を勝手に採点しないでください!」
「動きやすそうだし」
エリックが。
淡々と答える。
「問題ないだろ」
「そういう問題ではありません!」
レイナの声が。
森に響いた。
その横で。
エリシアが。
ふと思い出したように口を開く。
「そういえば」
「実は、私も農家着を持っているんですよ」
「……え?」
レイナが。
エリシアを見る。
「レイナの分もあります」
「私の分も?」
「はい」
エリシアが。
嬉しそうに頷く。
「魔境の森の家に、二人分とも置いてあるんです」
「……いつの間に」
「いいですよね、農家着」
エリシアが。
自分の服を見下ろす。
「動きやすいですし、薬草採取にも便利です」
「…………」
レイナは。
フィオネ姫を見る。
エリシアを見る。
そして。
エリックを見る。
「……皆さん」
一拍。
「魔境の森を、何だと思っているんですか?」
「生活する場所?」
エリックが。
首を傾げた。
「そういうことを聞いているのではありません!」
フィオネ姫が。
くすっと笑う。
「ふふっ」
「皆さんと一緒なら、楽しそうですね」
レイナは。
小さく息を吐いた。
「……姫様まで」
けれど。
その表情には。
ほんの少しだけ。
笑みが浮かんでいた。
その時。
「姫様!」
スワイルが。
ぱっと顔を輝かせた。
カリナと一緒に。
フィオネ姫のもとへ駆け寄る。
二人は。
胸に両手を添え。
深く頭を下げた。
「フィオネ姫様」
「ようこそ、お越しくださいました」
「お久しぶりです、スワイルさん、カリナさん」
フィオネ姫が。
穏やかに微笑む。
「お二人とも、どうか頭をお上げください」
「はっ」
二人が。
顔を上げる。
そして。
改めて。
フィオネ姫の姿を見た。
赤い刺繍の入った上着に。
動きやすそうなズボン。
「……おや?」
スワイルが。
首を傾げる。
「姫様、そのお召し物は……?」
「農家着です」
フィオネ姫が。
にっこりと答えた。
「薬草を採取するのですから、動きやすい服がよいと思いまして」
「な、なるほど……」
スワイルが。
少し戸惑う。
カリナは。
姫の服を見つめてから。
そっと微笑んだ。
「とてもよくお似合いですよ」
「ありがとうございます」
フィオネ姫が。
嬉しそうに頷く。
エリックは。
集まった顔ぶれを見回す。
「……これだけか?」
「はい」
フィオネ姫が。
頷く。
「フィリアは、朝の仕事を終えたあとに来る予定です」
「それと」
フィオネ姫が。
続ける。
「薬師を十人ほど連れて来るそうです」
「……十人?」
エリックが。
少しだけ目を見開く。
「はい」
フィオネ姫が。
微笑む。
「皆さん、魔境の森に興味があるそうですよ」
「なるほど……」
エリックが。
小さく頷く。
「じゃあ、先に行こう」
「先に、ですか?」
リシェルが。
首を傾げる。
「うん」
エリックが。
リシェルを見る。
「転移魔法陣が、ちゃんと使えるか試したい」
「ああ、そうですね」
リシェルが。
頷く。
「昨日描いた魔法陣ですね」
「うん」
エリックが。
頷き返す。
「ちゃんと戻れるか、確認しておこう」
「分かりました」
リシェルが。
微笑む。
「では、私も一緒に行きますね」
「お願い」
エリックは。
フィオネ姫たちへ向き直る。
「ちょっと確認してくる」
「はい。お気をつけて」
フィオネ姫が。
穏やかに微笑んだ。
二人は。
スワイルとカリナの家に描いた。
転移魔法陣へ向かう。
そして。
魔法陣の上に立った。
「……準備はいい?」
エリックが。
リシェルを見る。
「はい」
リシェルが。
頷く。
二人は。
それぞれ杖を構えた。
「では」
エリックは。
万が一に備え、Gペン型の杖を構える。
リシェルが。
静かに詠唱する。
「――スペースリンク」
魔法陣へ。
魔力を流し込んだ。
――ふわっ。
二人の足元で。
魔法陣が。
淡く輝き始める。
次の瞬間。
視界が。
白い光に包まれた。
――シュンッ。
光が消える。
そこは。
魔境の森。
魔境の家の庭先だった。
「……」
エリックが。
周囲を見回す。
見慣れた家。
見慣れた庭。
間違いない。
「……成功だな」
「はい」
リシェルも。
ほっとしたように。
頷いた。
「無事に転移できましたね」
エリックは。
足元を見る。
魔法陣は。
問題なく機能している。
「これなら」
エリックが。
小さく頷く。
「みんなも、ここに来られるな」
「そうですね」
リシェルが。
微笑んだ。
「おーーい!」
エリックが。
魔境の家の庭先から。
魔法陣に向かって叫ぶ。
「転移、成功したぞー!」
一拍。
「早く来いー!」
「……もう」
リシェルが。
小さく笑う。
「せっかちですね」
すると。
魔法陣の向こうから。
エリシアの声が返ってきた。
「分かりました!」
リシェルが。
魔法陣へ向かって。
声をかける。
「では、皆さんも気をつけて来てくださいね」
「はい!」
エリシアが。
元気よく答える。
そして。
ルチアとミーナの顔を見る。
「では、私たちも行きましょう」
「「はい」」
ルチアとミーナが。
頷く。
エリシアを挟むように。
ミーナとルチアも。
魔法陣の上に立った。
三人が。
互いに顔を見合わせる。
「準備はいいですね?」
エリシアが。
二人に確認する。
「はい、ボスのところへ行きましょう!」
ミーナが。
尻尾を揺らす。
ルチアも。
静かに頷いた。
「それでは――」
エリシアが。
魔法陣へ魔力を流し込む。
「――スペースリンク」
魔法陣が。
淡く輝き始めた。
――ふわっ。
魔法陣が。
淡い光に包まれる。
次の瞬間。
エリシアと。
ミーナと。
ルチアの姿が。
魔境の家の庭先に現れた。
「おっ」
エリックが。
三人を見る。
「ちゃんと来られたな」
「はい!」
エリシアが。
嬉しそうに頷く。
「転移魔法陣は問題なく使えましたね」
リシェルが。
ほっとしたように微笑む。
「うん」
エリックが。
足元の魔法陣を見る。
「これなら大丈夫そうだ」
その時。
魔法陣が。
再び光り始めた。
「……次か」
エリックが。
魔法陣へ視線を向ける。
やがて。
光の中から。
フィオネ姫と。
レイナ。
そして。
それぞれの側使いたちが。
姿を現した。
「……!」
レイナが。
周囲を見回す。
見慣れた森。
そして。
目の前に立つエリック。
「エリック」
「おう」
エリックが。
いつも通りに頷く。
「ようこそ、魔境の森へ」
フィオネ姫が。
庭先を見渡す。
「ここが……」
「エリックさんのお住まいなのですね」
「そうだよ」
エリックが。
家を振り返る。
「まあ、ゆっくりしていってくれ」
その隣で。
ミーナとルチアの尻尾が。
パタパタと。
嬉しそうに揺れていた。
「……エリックさん」
フィオネ姫が。
ゆっくりと振り返る。
「ここは、本当に魔境の森なのですよね?」
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
面白いと思っていただけましたら、評価やブックマークで応援していただけると嬉しいです。
転移魔法陣は無事に成功!
ついにフィオネ姫たちも、魔境の森へやって来ました。
恐ろしい場所だと思っていた魔境の森。
そこで彼女たちが目にしたものとは……?
エリックたちの暮らしに、また新たな仲間が加わることになるのでしょうか。
次回もよろしくお願いします!




