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第六十話(前編) : 雲海の先に

雲海の先に広がる、エルフたちの郷。


懐かしい顔ぶれとの再会。

そして――。


今回も楽しんでいただければ嬉しいです。

「……あの」


リシェルが。


町のエルフへ。


声をかける。


「少し、尋ねたいことがあるのですが」


「ん?」


エルフが。


振り返る。


そして。


リシェルを見る。


「…………」


一瞬。


目を見開いた。


「……リシェル?」


「え?」


リシェルが。


首を傾げる。


すると。


エルフが。


嬉しそうに笑った。


「お久しぶりね」


「……!」


リシェルが。


目を丸くする。


「あなた……」


「覚えてる?」


「もちろんです」


リシェルが。


小さく笑う。


「久しぶりですね」


「ヨォ!」


その横から。


別のエルフが。


声を上げる。


「リシェルだよなぁ!」


「……?」


リシェルが。


そちらを見る。


「変わってないなぁ!」


「あなたも……変わりませんねスワイル」


「そりゃそうだ!」


スワイルが。


豪快に笑う。


そして。


リシェルの後ろを見る。


「……ん?」


「後ろの人間は?」


エルフが。


エリックを見る。


「私と一緒に来た方達です」


リシェルが。


そう答える。


「へぇ……」


エルフが。


エリックを見つめる。


そして。


その隣を見る。


「……ん?」


「獣人もいるじゃないか」


「珍しいなぁ」


「……え?」


ミーナが。


一歩。


後ろへ下がる。


だが。


遅かった。


「おお!」


エルフが。


ミーナの頭へ。


ぽん。


「…………」


ミーナが。


固まる。


「耳もあるぞ!」


「ちょっと……」


ぽん。


ぽん。


「ふわふわだなぁ」


「や、やめてください……」


ミーナが。


困った顔をする。


その隣では。


「おお、こっちもか!」


ルチアの頭にも。


ぽん。


「…………」


ルチアが。


目を丸くする。


「耳が動いたぞ!」


「えっ」


ぽん。


「わっ」


ルチアの耳が。


ぴくっ。


「面白いなぁ!」


「…………」


ミーナと。


ルチアが。


顔を見合わせる。


「……ボス」


「うん?」


「助けてください」


「…………」


エリックは。


二人を見る。


そして。


スワイルを見る。


「楽しそうだから」


「そのままでいいんじゃないか?」


「ボス!?」


「ひどいです!」


リシェルが。


思わず。


くすっと笑う。


「二人とも」


「この町では珍しいのでしょうね」


「そうですね……」


ミーナが。


撫でられながら。


小さく呟く。


「……珍しいからって」


「こんなに触るものなんですか?」


「久しぶりに見たからなぁ!」


スワイルは。


楽しそうに笑っていた。


「……」


スワイルは。


ミーナとルチアを。


しばらく撫でていた。


「いやぁ」


「珍しいなぁ」


「獣人を見るのも久しぶりだ」


「…………」


ミーナは。


少し困った顔をしている。


ルチアも。


されるがままになっていた。


すると。


スワイルが。


ふと。


エリックを見る。


「ところで」


「お前さん」


「腹減ってないか?」


「……?」


エリックが。


首を傾げる。


「減ってるだろ」


「いや」


「まだ……」


「減ってるな」


「…………」


エリックが。


黙る。


「うちに寄ってけ」


「いや、俺たちは――」


「いいから」


エルフが。


エリックの肩を。


がしっ。


「ちょっと待ってください」


エリシアが。


驚いたように声を上げる。


「私たちはレイナを――」


「その話も飯食いながら聞く!」


「え?」


「カミさんが今、飯作ってるんだ」


「……」


リシェルが。


少し笑う。


「昔から変わりませんね」


「おう!」


スワイルが。


嬉しそうに笑う。


「リシェルが来たんだ」


「飯くらい食ってけ!」


「……ありがとうございます」


リシェルが。


頭を下げる。


「ほら!」


スワイルが。


みんなを見る。


「行くぞ!」


「え、ちょっと……」


エリシアが。


戸惑う。


ミーナとルチアも。


顔を見合わせる。


そして。


エリックは。


引っ張られながら。


小さく呟いた。


「……強引だな」


「昔からそうなんです」


リシェルが。


笑っていた。


スワイルに。


連れてこられた。


大きな木の幹に。


沿うように作られた。


ツリーハウス。


「ここが俺の家だ!」


スワイルが。


扉を開ける。


「おかえりなさい」


中から。


女性の声がした。


「あなた」


カリナが。


顔を出す。


そして。


リシェルを見る。


「まあ……」


「久しぶりね」


「お久しぶりです、カリナ」


リシェルが。


微笑む。


「相変わらずね」


「あなたもね」


カリナが。


優しく笑う。


その後ろから。


料理の香りが。


漂ってくる。


「ほら!」


スワイルが。


胸を張る。


「カリナが作ってくれてるぞ!」


「あなた」


カリナが。


少し呆れた顔をする。


「勝手に連れてきたのに」


「ちゃんと人数分あるわよ」


「さすがカリナ!」


スワイルが。


笑う。


「ほら、座れ!」


エリック達は。


木のテーブルを囲む。


やがて。


料理が並べられていく。


川魚の香草焼き。


きのこと根菜のスープ。


焼きたてのパン。


そして。


最後に。


大きな皿が置かれた。


「……」


エリックが。


皿を見る。


細長い麺。


きのこ。


野菜。


香草。


「……パスタ」


思わず。


口から出た。


「ん?」


スワイルが。


首を傾げる。


「知ってるのか?」


「うん」


エリックが。


頷く。


「食べたことがある」


前世で。


食べたことがある。


けれど。


この世界に来てからは。


一度も。


食べていない。


「へぇ」


スワイルが。


笑う。


「なら、食ってみろ」


エリックは。


フォークを手に取る。


パスタを。


少しだけ巻く。


そして。


口に入れる。


「……」


噛む。


きのこの香り。


香草の風味。


小麦の味。


「……」


エリックが。


小さく頷く。


「うまい」


「だろ?」


スワイルが。


嬉しそうに笑う。


ミーナと。


ルチアは。


そんな二人を見ながら。


料理を口に運んでいた。


食事をしながら。


エリックは。


ふと。


窓の外を見る。


巨大な枝。


木々の間に。


いくつもの家がある。


少し離れたところには。


別のツリーハウス。


木と木を繋ぐ橋を。


エルフたちが。


行き交っている。


「……」


静かな場所だった。


自然があって。


食べ物があって。


魔法があって。


人がいる。


エリックは。


もう一度。


パスタを見る。


「……」


何も言わず。


もう一口。


パスタを食べた。


食事をしながら。


しばらく。


昔話が続いた。


やがて。


リシェルが。


ふと。


手を止める。


「そういえば」


「スワイル」


「ん?」


スワイルが。


顔を上げる。


「一人」


「探している人がいるんです」


「人?」


「はい」


リシェルが。


頷く。


「人間の女性です」


「戦士のような雰囲気で」


「かなりの重傷だったはずです」


「……」


スワイルが。


少し考える。


「人間の女?」


「そうです」


「この町で?」


「多分」


リシェルが。


答える。


「転移魔法陣で」


リシェルが。


続ける。


「ここへ来たのだと思います」


「……ああ」


スワイルが。


頷く。


「それなら」


「血判の儀式を受けてるな」


「……やっぱり」


リシェルが。


小さく呟く。


「血判の儀式って?」


エリックが。


尋ねる。


スワイルが。


エリックを見る。


「この町の外から」


「転移魔法陣を使って入るための儀式だ」


「誰でも使えるわけじゃない」


「そうなのか?」


「おう」


スワイルが。


頷く。


「昔からそういう決まりになってる」


「血判を受けた者だけが」


「転移魔法陣を通れるんだ」


「なるほど……」


エリシアが。


小さく頷く。


スワイルが。


続ける。


「だから」


「その女が本当に転移魔法陣から来たなら」


「血判の儀式を受けてるはずだ」


「……」


リシェルが。


静かに頷く。


「やはり」


「私の考えていた通りです」


カリナが。


口を開く。


「それなら」


「運ばれたのは中層でしょうね」


「薬師が多いから」


「……中層」


エリックが。


顔を上げる。


「行けば分かる?」


「たぶんな」


スワイルが。


笑う。


「薬師のところを当たってみな」


しばらくして。


食事が。


終わった。


「ごちそうさまでした」


エリックが。


小さく頭を下げる。


「おう」


スワイルが。


頷く。


「腹いっぱいになったか?」


「うん」


「それなら」


スワイルが。


立ち上がる。


「中層へ行くんだろ?」


「はい」


リシェルが。


頷く。


「なら」


スワイルが。


家の外を指差す。


「少し先に」


「中層まで続く螺旋状の階段がある」


「それと」


一拍。


「礼拝堂の中に」


「転移魔法陣もあるぞ」


「転移魔法陣?」


エリシアが。


首を傾げる。


「ああ」


スワイルが。


頷く。


「中層までなら」


「そこから行ける」


「礼拝堂に……」


エリシアが。


少し驚く。


「そういう場所にもあるんですね」


「昔からあるぞ」


リシェルが。


二人を見る。


「スワイルさん、カリナさん」


「その前に、お願いがあるのですが」


「ん?」


スワイルが。


顔を上げる。


「ここに」


リシェルが。


少しだけ。


言葉を選ぶ。


「帰りの転移魔法陣を描かせてもらってもいいですか?」


「転移魔法陣?」


カリナが。


首を傾げる。


「はい」


リシェルが。


頷く。


「帰る時に、すぐ戻れるようにしておきたいんです」


「なるほどな」


スワイルが。


頷く。


「俺達は構わないぞ」


「ありがとうございます」


リシェルが。


ほっとしたように微笑んだ。


そして。


床の空いた場所へ。


しゃがみ込む。


杖を取り出し。


魔法陣を描き始めた。


円を描き。


その内側に。


いくつもの紋様を刻んでいく。


やがて。


最後の線を引き終える。


「これで大丈夫です」


リシェルが。


立ち上がる。


スワイルが。


魔法陣を覗き込む。


「へぇ……」


「これが帰りの転移魔法陣か」


「はい」


リシェルが。


頷く。


「これで、いつでも戻れます」


「よし」


エリックが。


頷く。


「じゃあ、中層へは礼拝堂の魔法陣で行こう」


「そうですね」


エリシアが。


頷く。


「その方が早いでしょう」


「なら」


スワイルが。


扉を開ける。


「案内してやる」


「ありがとう」


スワイルに。


案内されて。


エリック達は。


礼拝堂へ向かった。


大きな木の幹を。


そのまま利用した建物だった。


中へ入る。


「……」


静かな空間。


正面には。


女神像が。


祈りを捧げるように。


静かに立っている。


「ここが礼拝堂だ」


スワイルが。


そう言う。


「転移魔法陣は」


「その奥だ」


エリシアが。


女神像を見る。


「綺麗ですね」


「そうだな」


リシェルも。


静かに頷く。


エリックは。


女神像を。


じっと見る。


「…………」


『…………』


「…………」


エリックは。


何も言わない。


そして。


女神像の奥を見る。


そこには。


淡く光る。


転移魔法陣が。


描かれていた。


「これか」


「おう」


スワイルが。


頷く。


「中層へ行けるぞ」


エリックは。


魔法陣を見る。


リシェルが。


静かに詠唱する。


「――スペースリンク」


魔法陣へ。


魔力を流し込む。


その時。


――ふわっ。


魔法陣が。


青白く輝いた。


エリック達の身体が。


光に包まれる。


――ふわっ。


青白い光が。


消えていく。


「……」


エリックは。


周囲を見る。


そこには。


地上では見えなかった。


広大な景色が。


広がっていた。


「……雲海」


エリシアが。


小さく呟く。


足元より下に。


白い雲が。


どこまでも。


広がっている。


中層は。


巨大な枝の上に。


作られた場所だった。


少し離れたところでは。


何人ものエルフが。


薬草を摘んでいる。


「これは……」


エリシアが。


周囲を見る。


「薬師たちですね」


「そうですね」


リシェルが。


頷く。


薬草を摘む者。


乾燥させる者。


籠へ仕分ける者。


中層には。


薬師たちの生活が。


広がっていた。


「……」


リシェルが。


ふと。


遠くを見る。


そして。


足を止めた。


「…………」


「どうした?」


エリックが。


尋ねる。


リシェルは。


少し離れた場所を。


見つめていた。


そこには。


一人のエルフが。


薬草を摘んでいる。


「……フィリア」


リシェルが。


小さく呟いた。

お読みいただき、ありがとうございます!


雲海の先に広がる、エルフたちの郷。


懐かしい再会の予感とともに、物語は新たな展開へと進んでいきます。


リシェルが見つけた人物は、いったい誰なのか。

次回も楽しんでいただければ嬉しいです。


もし本作を気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。


皆さまの応援が、続きを書く力になります。


これからも、エリックたちの物語をよろしくお願いいたします!

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