第五十三話(後編) : 田んぼを作ろう
ルークとの。
新しい毎日が。
始まりました。
そして。
エリックは。
また一つ。
スローライフへの。
一歩を踏み出します。
今回も楽しんでいただければ嬉しいです。
ルークが。
飛び出した。
「キュウ!」
魚へ。
まっすぐ。
飛びかかる。
ぱしゃっ!
水が。
跳ねる。
「……!」
ルークの前足が。
魚を押さえた。
「キュッ!?」
ルークが。
驚いたように。
魚を見る。
魚が。
まだ。
ぴちぴち。
動いている。
「……」
ルークが。
一瞬。
固まる。
エリックが。
じっと見ている。
「どうした?」
「さっきまで食べてた魚だろ」
「キュ……」
ルークが。
魚を見る。
そして。
恐る恐る。
口を近づける。
ぱくっ。
「……!」
今度は。
逃げなかった。
ルークが。
魚を咥えた。
「キュウ!」
尻尾が。
ぶんぶん。
揺れる。
「……やったな」
エリックが。
小さく笑う。
ルークは。
魚を咥えたまま。
エリックのところへ。
ペタ。
ペタ。
戻ってくる。
そして。
エリックの足元へ。
ぽとっ。
魚を落とした。
「……」
エリックが。
魚を見る。
そして。
ルークを見る。
「俺にくれるのか?」
「キュウ!」
ルークが。
胸を張る。
「そうか」
エリックが。
魚を拾う。
「じゃあ」
「今日はこれで十分だな」
ルークが。
嬉しそうに。
尻尾を振る。
リシェルたちのいる場所から。
声が聞こえた。
「エリックさーん!」
「そろそろ戻りますかー?」
「……ああ」
エリックが。
ルークを見る。
「戻るか」
「キュウ!」
ルークが。
エリックの隣を。
ペタ。
ペタ。
歩き始めた。
その尻尾は。
さっきまでより。
少しだけ。
誇らしそうに。
揺れていた。
エリックは。
水桶を。
転移魔法陣の上へ置く。
「よし」
「これでいい」
――ふわっ。
淡い光が。
水桶を包む。
次の瞬間。
桶が。
消えた。
「……」
エリックは。
少し待つ。
「よし」
「戻るか」
ルークと。
リシェルと。
ジンは。
そのまま。
歩いて帰る。
しばらくして。
魔境の森。
魔境の家。
エリックが。
庭へ戻ってくる。
「……」
転移先を見る。
水桶が。
ちゃんと。
そこにあった。
「よし」
ルークが。
駆け寄る。
「キュウ!」
桶の中を。
覗き込む。
その時。
「エリックさん」
リシェルが。
声をかけた。
「マルタさんから連絡がありました」
「……マルタ?」
「はい」
リシェルが。
頷く。
「頼まれていた木箱が」
「完成したそうです」
「……そうか」
エリックが。
頷く。
「じゃあ、取りに行くか」
「キュウ!」
ルークが。
尻尾を。
パタパタ。
振った。
「マルタさん、ありがとう」
エリックが。
完成した木箱を見る。
「……早速、植えるか」
エリックは。
木箱に土を入れる。
「この土なら……」
少し触って。
「うん」
次に。
水を入れる。
「水は……」
少しずつ。
「これくらいだな」
エリックは。
米の種を手に取る。
一つずつ。
土に植えていく。
「……」
ルークが。
隣から覗き込む。
「キュウ?」
「米だ」
エリックが。
小さく答える。
「これが育つと……」
植え終わった木箱を見る。
「米になる」
「キュウ……」
ルークは。
よく分からない顔で。
木箱を見ていた。
その時。
「エリック」
ジンが。
声をかける。
「そろそろ昼飯にするか」
「……うん」
エリックが。
立ち上がる。
ルークも。
「キュウ!」
嬉しそうに。
尻尾を振った。
昼飯の時間。
ジンが用意した料理を。
みんなで囲む。
「沢山採れたからな」
ジンが。
釣った魚を見る。
「マルタたちも一緒に食べるか」
「いいのかい?」
マルタが。
少し驚く。
「もちろん」
リシェルが。
笑う。
「私たちも」
マルタが。
持ってきた袋を見る。
「手作りのパンを持ってきてるからね」
「それなら」
エリックが。
少し考える。
「分け合って食べるか」
「そうだね」
パンを。
みんなに配る。
エリックは。
山羊のミルクで作ったバターを。
パンに塗る。
「これを塗って」
その上に。
採れた野菜を挟む。
「野菜も入れると美味しいですよ」
「ほう」
マルタが。
パンを手に取る。
「それは美味そうだね」
「魚も挟めるぞ」
ジンが。
焼いた魚を見せる。
「それも美味しそうですね」
リシェルが。
笑う。
こうして。
二十人ほどの。
賑やかな昼飯が始まった。
マルタが。
ふと口を開く。
「そういえば……」
「エリックさん」
「ん?」
エリックが。
顔を上げる。
「田んぼって」
マルタが。
少し考える。
「聞いた話では、大量の水が必要なんだろう?」
「…………」
エリックが。
止まる。
「……」
木箱を見る。
そこには。
植えたばかりの。
米の種。
そして。
エリックは。
静かに。
空を見上げた。
「…………水」
「どうしたんだい?」
マルタが。
首を傾げる。
エリックは。
しばらく黙っていた。
「……問題だな」
「田んぼ……」
エリックが。
小さく呟く。
「水が必要だな」
「鑑定さん」
『はい』
「この辺に」
「使えそうな水源はある?」
『検索します』
少しの間。
『稲作に利用可能な水源は確認できません』
「……そうか」
エリックが。
周囲を見る。
ふと。
水桶用の魔法陣が。
目に入った。
「…………」
何度も。
水を運ぶ。
「いや」
首を横に振る。
「無理だ」
「時間がかかりすぎる」
マルタが。
不思議そうに見る。
「水桶を沢山作ってもらったら……」
「いや無理だ。水桶で運ぶ量じゃない」
「なるほど……」
マルタが。
田んぼを想像する。
「そりゃそうだね」
エリックは。
別の場所を見る。
露天風呂。
「…………」
温泉。
湯船。
エリックが。
じっと見る。
「温泉ならある」
「これを……」
少し考える。
「冷やせばいい」
「冷やす?」
リシェルが。
首を傾げる。
「うん」
エリックは。
頭の中で。
構図を組み立てる。
「ため池を作る」
「底に」
「冷気魔法を書いた板を何枚か敷く」
「そこに温泉を流す」
「冷やしてから」
「田んぼへ送る」
「……」
みんなが。
顔を見合わせる。
「できるのかい?」
マルタが。
尋ねる。
「やってみる」
エリックが。
答える。
露天風呂の。
少し下流。
そこに。
ため池を作る。
さらに。
その下に。
田んぼを作る。
「……」
エリックは。
地面を見る。
「ここだ」
「この土を」
「柔らかくする」
『了解しました』
『魔法モードへ切り替えます』
「頼む」
エリックは。
迷わなかった。
Gペン型の杖を。
地面へ向ける。
すらすらと。
魔方陣を書いていく。
「……」
最後の線を。
描き終える。
エリックが。
杖を。
トン。
と地面についた。
――ふわっ。
魔方陣が。
淡く光る。
その周囲の土が。
ゆっくりと。
柔らかくなっていく。
「……よし」
エリックが。
周囲を見る。
「穴、掘るぞ」
「今から」
「ため池を作る」
ジンが。
腕まくりをする。
「作るか」
「うん」
こうして。
みんなで。
ため池作りが始まった。
土を掘る。
土を運ぶ。
石を並べる。
冷気魔法を書いた板を。
池の底へ敷いていく。
そして。
露天風呂から。
温泉を引く。
――ごぽごぽ。
少しずつ。
湯が。
ため池へ流れ込む。
「…………」
みんなで。
池を見る。
やがて。
温泉が。
池いっぱいに溜まっていく。
「よし」
エリックが。
水面を見る。
「これで、後冷やすだけ……」
『警告します』
「……?」
『このままでは』
『稲は枯れます』
「…………」
エリックが。
固まった。
「なんでだ?」
今回は。
ルークが。
初めて自分で。
魚を捕まえました。
そして。
マルタが作ってくれた。
木箱を使って。
いよいよ。
米作りも始まります。
しかし。
田んぼを作るには。
水が必要でした。
エリックが考えたのは。
温泉を利用する方法。
果たして。
この方法で。
無事に米を育てることが。
できるのでしょうか。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。
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