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第五十三話(前編) : 小さな竜の名前

ドラゴンが。


エリックたちの。


仲間になりました。


そして。


まだ。


名前のないドラゴンに。


エリックが。


名前を付けることに。


今回も楽しんでいただければ嬉しいです。

「……誰だ、お前」


「申し訳ありません」


ドワーフの女性が。


ぺこりと頭を下げる。


「私は、マルタと申します」


「マルタ?」


「はい」


マルタは。


少し緊張したように。


エリックを見る。


「以前、ラグノで娘を助けていただきました」


「……娘?」


エリックが。


少し考える。


「もしかして……熱が出てた子か?」


「はい!」


マルタの顔が。


ぱっと明るくなる。


「あの時は、本当にありがとうございました」


「……そうか」


エリックは。


小さく頷く。


「元気になったならよかった」


「はい。今ではすっかり元気です」


マルタが。


嬉しそうに笑う。


「それで……」


「今日は薬の材料を取りに?」


「はい」


「そうか」


エリックは。


ふと。


手に持った種もみを見る。


そして。


マルタを見る。


「……なあ」


「はい?」


「箱、作れる?」


「箱……ですか?」


「うん」


エリックが。


種もみを見せる。


「これを育てるための箱が欲しいんだ」


マルタは。


種もみを覗き込む。


そして。


小さく笑った。


「それでしたら」


「私は、木製家具の店を営んでいますから」


「木箱くらいなら作れますよ」


「……そうか」


エリックが。


小さく頷く。


「じゃあ、頼む」


「これを育てるなら」


エリックが。


近くにあった紙を一枚取る。


「まず、苗を育てる箱が必要だな」


「はい」


マルタが。


エリックの手元を見る。


エリックは。


Gペン型の杖を取り出す。


紙の上に。


箱の形を描いていく。


「底は」


エリックが。


線を引く。


「水が溜まりすぎないようにする」


「水が……?」


「うん」


エリックは。


箱の底に。


いくつか小さな穴を描く。


「余分な水を逃がすため」


「なるほど」


マルタが。


真剣に図を見る。


「ここは少し低くして……」


エリックは。


さらに線を加える。


「土は、このくらい」


「……」


マルタは。


じっと見つめる。


「まあ、お上手ですね」


「そうか?」


「はい」


マルタが。


小さく笑う。


「とても分かりやすいです」


エリックは。


最後に。


箱全体の形を描き終える。


「これでいい」


「はい」


マルタが。


完成した図を見る。


「これなら作れます」


「じゃあ、頼む」


「分かりました」


マルタは。


図を大事そうに受け取る。


「では、ドワーフの宿舎へ行きましょう」


「うん」


エリックたちは。


ドワーフの宿舎へ向かった。


「この箱を作ってほしい」


マルタが。


図を見せる。


ドワーフたちは。


紙を覗き込む。


「苗を育てる箱か」


「面白い形だな」


「材料はこれで足りるだろ」


すぐに。


作業が始まった。


エリックは。


しばらく。


その様子を眺めていた。


そして。


ふと。


後ろを見る。


ドラゴンが。


いつものように。


ペタ。


ペタ。


ついて来ている。


「……」


そういえば。


こいつは。


魚が好物だった。


「魚……」


エリックが。


小さく呟く。


「まだ食べてないな」


ドラゴンが。


「キュウ?」


首を傾げる。


「魚、食べたいか?」


「キュウ!」


尻尾が。


パタパタと揺れる。


「そうか」


エリックが。


少し考える。


「じゃあ……」


空を見上げる。


「釣りに行くか」


「キュウ!」


ドラゴンが。


嬉しそうに跳ねた。


「……お前、本当に分かりやすいな」


エリックが。


少し笑う。


「じゃあ、行くか」


「私も行きます」


リシェルが。


立ち上がる。


「魚を釣るんですよね?」


「うん」


「なら、私も手伝います」


ジンも。


腰を上げる。


「俺も行くぜ」


「じゃあ、釣竿を持ってくるか」


エリックが。


倉庫へ向かう。


しばらくして。


エリックは。


釣竿を手に戻ってきた。


リシェルも。


小さな籠を持っている。


ジンは。


自分の釣竿を肩に担いでいた。


「準備できたな」


「はい」


「おう」


三人が。


川へ向かって歩き始める。


その後ろを。


ペタ。


ペタ。


ドラゴンがついてくる。


「……そういえば」


エリックが。


後ろを見る。


「こいつ、まだ名前がないな」


「そうでしたね」


リシェルが。


ドラゴンを見る。


「名前を付けてあげたほうがいいですね」


「うん」


ジンが。


腕を組む。


「俺が考えてやるか」


「どんな名前?」


「ドラゴンだから……」


ジンが。


少し考える。


「ドラゴン丸」


「…………」


エリックが。


ジンを見る。


「却下」


「早えな!」


リシェルが。


くすっと笑う。


「では、私も考えてみます」


リシェルは。


ドラゴンを見つめる。


「優しい子ですから……」


「優しい?」


「はい」


リシェルが。


少し笑う。


「それに、ずっとエリックについてきています」


「そうだな」


エリックが。


後ろを見る。


ドラゴンは。


エリックの顔を見上げていた。


「……」


「なら」


エリックが。


少し考える。


「こいつが呼びやすい名前がいい」


「呼びやすい名前……」


リシェルが。


考える。


「短いほうがいいかもしれませんね」


「そうだな」


ジンも。


頷く。


「ドラゴンだからって、無理に強そうな名前にする必要もねえしな」


「うん」


エリックが。


ドラゴンを見る。


小さな身体。


短い足。


そして。


ずっと振っている尻尾。


「……」


「……ルーク」


「キュウ?」


ドラゴンが。


首を傾げる。


「昔、好きだった名前なんだ」


エリックが。


少しだけ笑う。


「なんとなく、お前にも合う気がする」


「キュウ!」


ドラゴンの尻尾が。


パタパタと揺れる。


「……気に入ったのか?」


「キュウ!」


さらに。


尻尾が揺れる。


リシェルが。


嬉しそうに笑う。


「どうやら、気に入ったみたいですね」


ジンも。


頷く。


「じゃあ、決まりだな」


エリックが。


ドラゴンの頭を撫でる。


「じゃあ、ルーク」


「魚、釣りに行くぞ」


「キュウ!」


ルークが。


エリックの隣を。


ペタ。


ペタ。


歩き始めた。


しばらくして。


釣り場に着く。


エリックが。


釣り竿を取り出す。


その隣に。


ルークが。


ちょこん。


と座った。


「さて」


「魚、釣るか」


「キュウ!」


エリックが。


釣り糸を垂らす。


リシェルと。


ジンも。


それぞれ。


釣りを始める。


しばらくして。


エリックの。


釣り竿が。


ぐっと曲がった。


「来たな」


エリックが。


竿を引く。


バシャッ!


魚が。


水面から。


勢いよく跳ね上がった。


「釣れたぞ」


エリックが。


魚を外す。


その魚を。


ルークの前へ。


「ほら」


「魚だ」


魚が。


ぴち。


ぴち。


跳ねる。


「キュ……?」


ルークが。


恐る恐る。


近づく。


くん。


くん。


匂いを嗅ぐ。


次の瞬間。


「キュウ!」


ルークが。


魚へ飛びついた。


ぱくっ。


魚を。


夢中で食べ始める。


むしゃ。


むしゃ。


尻尾が。


ぶんぶん。


揺れている。


「……」


エリックが。


目を細める。


「そんなに美味いか?」


「キュウ!」


ルークは。


魚を食べながら。


嬉しそうに鳴いた。


あっという間に。


魚を食べ終える。


ルークは。


口の周りを。


ぺろぺろ。


舐める。


そして。


ふと。


川を見る。


「……」


水の中を。


魚が泳いでいる。


ルークの目が。


魚を追う。


尻尾が。


パタ。


パタ。


揺れる。


「……気になるのか?」


「キュウ!」


ルークが。


川へ近づく。


「そうか」


エリックも。


立ち上がる。


「川に入って見るか?」


「キュウ!」


ルークが。


嬉しそうに鳴く。


「冷たいぞ」


エリックが。


先に。


川へ足を入れる。


ちゃぷ。


「……」


ルークも。


恐る恐る。


足を入れる。


ちゃぷ。


水面が。


小さく揺れた。


「どうだ?」


ルークが。


川の中を。


覗き込む。


そこへ。


一匹の魚が。


すっと。


近づいてきた。


「……」


ルークが。


固まる。


魚が。


もう一度。


すっと。


泳いでいく。


「キュッ!?」


ルークが。


慌てて。


後ろへ飛び退いた。


「……」


エリックが。


ルークを見る。


「怖いのか?」


「キュ……」


ルークが。


エリックの後ろへ。


隠れる。


エリックは。


川の中を見る。


そして。


ルークを見る。


「……」


「食べるのは平気なのにな」


「キュ……」


ルークが。


少しだけ。


顔を出した。


エリックは。


ルークを見る。


そして。


川を見る。


「このままじゃ」


一拍。


「駄目だな」


エリックが。


「自分で取れるようにならないと」


「取る練習するか?」


「キュウ!」


ルークが。


嬉しそうに鳴く。


「ここだと」


「リシェルたちの邪魔になりそうだな」


エリックが。


川の上流を見る。


「向こうで練習するか」


「向こうは浅いし」


ルークが。


エリックの後を。


ペタ。


ペタ。


追いかけていく。


しばらく歩くと。


小さな浅瀬があった。


水草が。


水面に浮かんでいる。


川底の岩には。


苔が生えていた。


透き通った水が。


ゆっくりと。


流れている。


「……」


エリックが。


辺りを見渡す。


「構図的には」


一拍。


「文句なしだな」


エリックが。


ルークを見る。


「ここで練習するか」


「キュウ!」


ルークが。


川の中を覗き込む。


エリックも。


水の中を見る。


「……」


魚が。


岩の下に隠れている。


エリックは。


少し考える。


(この構図なら……)


「……よし」


「どっちが先に取れるか」


エリックが。


ルークを見る。


「競争だ」


「キュウ!」


ルークが。


尻尾を。


パタパタ。


振る。


「じゃあ」


エリックが。


川へ入る。


そして。


岩の下へ。


手を伸ばした。


「……」


魚が。


びくっと動く。


「よし」


エリックが。


手を伸ばす。


魚は。


するり。


岩の下から飛び出した。


そのまま。


ルークの方へ。


「キュッ!」


ルークが。


魚を追う。


だが。


魚は。


ルークの横を。


すり抜けていった。


「……」


ルークが。


振り返る。


魚は。


さらに上流へ逃げていく。


「一回目は失敗か」


エリックが。


笑う。


ルークが。


悔しそうに。


尻尾を揺らす。


「もう一回だ」


エリックが。


別の岩へ向かう。


「今度は」


岩の下へ。


手を入れる。


「……」


魚の感触。


「いた」


エリックが。


手を動かす。


魚が。


勢いよく飛び出した。


「キュウ!」


ルークが。


身構える。


魚は。


まっすぐ。


ルークの方へ。


「今だ」


ルークが。


飛び出した。


今回は。


小さなドラゴンに。


名前が付きました。


その名前は。


「ルーク」。


これから。


エリックたちと一緒に。


どんな毎日を。


過ごしていくのでしょうか。


そして。


魚を食べるのは好きでも。


魚を捕るのは。


まだ苦手なルーク。


果たして。


自分で魚を捕まえることが。


できるのでしょうか。


次回も楽しんでいただければ嬉しいです。


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