第五十二話(後編): 魔境の朝
ドラゴンが。
仲間になりました。
そして。
エリックたちの。
魔境での暮らしにも。
少しずつ。
変化が訪れています。
今回も楽しんでいただければ嬉しいです。
それから、数日後。
エリシアたちは。
王都へ向かう街道を。
馬車で進んでいた。
「……」
エリシアが。
窓の外を見る。
しばらくして。
ふと。
前方へ目を向ける。
「そういえば……」
「そろそろレイナの姿が見えても、おかしくない頃ですね」
「そうじゃのう」
ボルグも。
前方を見る。
「昨日のうちに。
追いついてくると思っておったが……」
「大丈夫でしょう」
エリシアが。
静かに答える。
「レイナですから」
「そうじゃな」
ボルグが。
頷く。
「ああ見えて、賢明なレイナのことじゃ」
少し考えて。
「馬を庇って、ゆっくり来ておるのじゃろう」
「そうですね」
エリシアも。
頷く。
その時。
ミーナが。
ぽつりと呟いた。
「もしかしたら……」
「ボスと一緒に、魔境の森へ戻ったのかもしれませんね」
ルチアも。
頷く。
「なんせ、あのボスですから」
「何を言い出すか、分かったもんじゃないです」
「……」
エリシアが。
少し考える。
「それも、ありそうですね」
ボルグも。
頷く。
「うむ」
一方魔境の森
エリックは。
魔鏡の家の外へ出た。
「……」
少し歩く。
そして。
畑を見る。
「……広がってる」
以前より。
明らかに広くなっていた。
「はい」
後ろから。
リシェルの声がする。
「ジンとドワーフの皆さんが頑張ってくれました」
「そうか」
エリックは。
畑を眺める。
そのまま。
ふと遠くを見る。
「……?」
森の中に。
見慣れない建物が並んでいる。
「……あれ、何だ?」
「四軒ありますね」
リシェルが。
指を差す。
「一番右が、ドワーフの皆さんの宿舎です」
「宿舎?」
「はい」
「その隣は?」
「薬を精製したり、調合したりする施設です」
「……」
エリックは。
さらに隣を見る。
「その隣は?」
「孤児たちがアスレチックで遊んでいるでしょう?」
「うん」
「疲れた時に、そのまま寝泊まりできるように作ってみました」
「……なるほど」
エリックは。
もう一つの建物を見る。
「じゃあ、あれは?」
「ドワーフの子供たちと、孤児たちの学校です」
「…………」
エリックは。
しばらく黙って。
建物を眺めた。
「学校まで作ったのか」
「はい」
リシェルが。
にこりと笑う。
「必要だと思いまして」
エリックは。
建物を眺める。
「……えらいぞ、リシェル」
「え?」
リシェルが。
目を丸くする。
「さすがだよ」
「そんな……」
リシェルが。
少し照れる。
エリックは。
ジンを見る。
「ジンも、ありがとう」
「お、おう」
ジンが。
少し戸惑いながら頷く。
エリックは。
もう一度。
周囲を見渡す。
畑。
新しい建物。
子供たちが遊べる場所。
そして。
これから作る田んぼ。
「……まさに」
エリックが。
小さく呟く。
「俺が望んでたスローライフに、一歩近づいたよ」
「……!」
リシェルの顔が。
ぱっと明るくなる。
ジンも。
満足そうに頷いた。
その横で。
ドラゴンが。
パタパタと尻尾を振っていた。
エリックは。
畑を見渡す。
「……」
そして。
みんなを見る。
「まず、朝飯だな」
「はい」
リシェルが。
頷く。
「俺はニワトリの卵を拾う」
「じゃあ、私は」
リシェルが。
山羊を見る。
「ミルクをもらってきますね」
「うん」
エリックは。
ジンを見る。
「ジンは、野菜を頼む」
「サラダ用か?」
「食べる分だけでいい」
「分かった」
三人は。
それぞれの仕事へ向かった。
その後ろを。
ドラゴンが。
ペタ。
ペタ。
とついてくる。
「……お前はどうする?」
エリックが。
振り返る。
ドラゴンは。
尻尾を。
パタパタと振った。
「……まあ、好きにしろ」
エリックは。
畑へ向かった。
「卵、取ってくる」
ニワトリたちは。
畑の中を自由に歩き回っている。
「……」
エリックは。
一羽ずつ。
様子を見ながら。
卵を探していく。
「……あった」
一つ。
「こっちにも」
もう一つ。
以前より。
畑が広くなったせいで。
卵を探すのも。
少し大変になっていた。
その後ろを。
ペタ。
ペタ。
ドラゴンが。
ついてくる。
「おい」
「その芽、踏むなよ」
「きゅっ」
ドラゴンが。
慌てて足を止める。
エリックは。
拾った卵を籠へ入れる。
その頃。
リシェルは。
山羊のところへ向かっていた。
「今日もお願いしますね」
山羊に声をかけ。
乳を搾っていく。
ジンは。
畑から野菜を少しだけ収穫する。
「これくらいでいいか」
食べる分だけ。
必要な分だけ。
それが。
魔鏡の家の朝だった。
「さて」
エリックは。
集めた卵を見る。
「パンも作るか」
小麦粉を取り出す。
水を加え。
手で練っていく。
こねて。
まとめて。
形を整える。
しばらくして。
焼き上がったパンが。
食卓に並んだ。
焼きたてのパン。
採れたばかりの野菜。
目玉焼き。
そして。
搾りたての山羊乳。
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
ドラゴンも。
食卓の横で。
嬉しそうに尻尾を振っている。
エリックは。
ドラゴンを見る。
「……お前も食べるか?」
ドラゴンが。
パタパタと尻尾を振る。
「卵なら大丈夫だろ」
エリックは。
目玉焼きを。
小さく切る。
そして。
ドラゴンの前に置いた。
「ほら」
ドラゴンが。
顔を近づける。
くん。
くん。
そして。
ぱくっ。
「……」
エリックが。
見守る。
もぐ。
もぐ。
ドラゴンは。
嬉しそうに尻尾を振った。
「食べたな」
「きゅっ」
「じゃあ、少しだけな」
リシェルが。
微笑む。
「気に入ったみたいですね」
「うん」
エリックは。
ドラゴンを見ながら。
パンを一口食べる。
「魚は明日だな」
ドラゴンの尻尾が。
また。
パタパタと揺れた。
「……分かりやすいな」
「可愛いですね」
リシェルが。
パンを食べながら。
エリックを見る。
「旅のお話、聞かせてください」
「いろいろあった」
エリックは。
パンを食べながら。
答える。
「ガルリィアにも行った」
「ガルリィアですか?」
「うん」
「それで?」
ジンも。
興味深そうに聞いている。
エリックは。
旅先であったことを。
少しずつ話し始めた。
料理のこと。
祭りのこと。
ドワーフたちのこと。
そして。
王都であったこと。
二人は。
朝食を食べながら。
エリックの話を聞いていた。
旅の土産話を。
しばらく話していると。
「……そういえば」
エリックが。
ふと思い出す。
「ミーナたちにもらった、あの米の種……」
エリックが。
ポケットから。
小さな布袋を取り出す。
中に入っているのは。
硬く引き締まった。
稲の種もみだった。
ジンが。
首を傾げる。
「米ってのは、どうやって育てるんだ?」
リシェルも。
まったく見当がつかないといった様子で。
瞬きをする。
「水に浸けるものなんですか?」
「いや」
エリックが。
種もみを見つめる。
「最初からドバッと水に浸けたりはしないな」
「なんだ、知ってるのか?」
ジンが。
目を丸くする。
「昔、漫画の取材で農家に一年ほど住み込みで働いたことがあるんだよ」
「えっ」
ジンが。
さらに目を丸くする。
「まずは小さな木箱に土を入れて、そこで苗を育てるところからだな」
リシェルが。
ポンと手を叩く。
「それなら、ドワーフの皆さんに頼んで、ちょうどいい大きさの木箱を作ってもらいましょうか」
「そうだな」
エリックは。
手のひらの種もみを見つめ。
小さく頷く。
ジンが。
腕を組んで笑う。
「いいじゃねえか」
「手始めには、ちょうどいい」
足元で。
ドラゴンが。
「キュウ?」
と首を傾げた。
「お前も手伝えよ」
エリックが。
小さく笑う。
「スローライフへの道は、まず小さな苗作りからだな」
その時。
「……あの時は、ありがとうございました」
「エリックさん」
「……?」
エリックの動きが。
止まる。
聞き覚えのない声。
ゆっくりと。
振り返る。
「……誰だ。」
今回は。
ドラゴンを迎えてからの。
魔境での朝を。
描きました。
畑が広がり。
新しい建物も増え。
エリックの望む。
スローライフへ。
少しずつ近づいています。
そして。
最後に現れた人物は。
いったい誰なのでしょうか。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。
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