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第五十二話(前編) : 小さな竜

エリックは。


急いで。


魔境へと。


戻ってきました。


果たして。


ドラゴンの卵は。


どうなったのでしょうか。


今回も楽しんでいただければ嬉しいです。

ラグノにある。


転移魔法陣。


エリックが。


転移魔法陣を見る。


「……」


一度。


足元を見る。


『金属反応を確認しました』


「分かってる」


『転移を実行するには、一時的な制限解除が必要です』


「一時的に解除する。すぐ戻す」


レイナが。


少し離れた場所から見守る。


エリックが。


Gペン型の杖を握る。


魔法陣が。


青白く光り始める。


「魔境へ行ってくる」


「ああ」


レイナが。


頷く。


「リシェルさんとジンに、よろしくな」


「うん」


光が。


さらに強くなる。


「……」


エリックは。


魔法陣の中で。


静かに立っている。


次の瞬間。


青白い光が。


一気に広がった。


エリックの姿が。


光の中へ消える。


「……行ったか」


レイナは。


しばらく。


その場に立っていた。


やがて。


光が消える。


残されたのは。


静かな転移魔法陣だけだった。


魔境の森。


魔境の家。


転移魔法陣が。


青白く光る。


次の瞬間。


エリックが。


魔境へ戻ってきた。


「……!」


その時。


家の奥から。


声が聞こえた。


「頑張って……!」


「もう少しだぞ!」


「……!」


エリックが。


すぐに走り出す。


「卵の部屋……!」


廊下を。


一気に駆け抜ける。


そして。


扉を開けた。


「エリック?」


リシェルが。


驚いたように振り返る。


「どうして……?」


ジンも。


目を見開く。


「何故ここに?」


「説明は後でいいか?」


エリックが。


卵を見る。


「それより……」


一歩。


卵へ近づく。


「ドラゴンは」


エリックが。


静かに口を開く。


「最初に見た者を、親だと判断するらしいんだ」


「……え?」


リシェルが。


目を瞬かせる。


「だから」


エリックが。


卵を見る。


「何が何でも、俺を最初に見せたい」


「……」


ジンが。


少し驚いた顔をする。


「それで、ここまで急いで?」


「うん」


エリックが。


頷く。


「レイナに頼んで、早馬で戻ってきた」


「そこまで……」


リシェルが。


卵を見る。


「でも、もうヒビが入ってから三日です」


「知ってる」


エリックが。


卵へ視線を向ける。


「鑑定さんに聞いた。ヒビが入ってから三日経っているって」


「鑑定さんに?」


ジンが。


首を傾げる。


「それなら……」


リシェルが。


不安そうに卵を見る。


「いつ孵ってもおかしくないですね」


「そうだな」


エリックが。


静かに頷く。


「だから、急いで戻ってきた」


その時。


「……!」


エリックが。


卵へ視線を向ける。


ピシッ。


小さな音が。


部屋に響いた。


「……!」


リシェルが息を呑み、ジンが身構える。


エリックは動かない。


卵の表面に亀裂が走る。


パリパリ、と音を立てて殻が弾けた。


濡れた翼が広がり、小さな竜が顔を出す。


竜はゆっくりと頭をもたげた。


そして――


その瞳が、まっすぐエリックを捉えた。


「こいつ、何を食べるんだ?」


「そういえば……」


リシェルが少し考える。


「エリックが買った時、お店の人は魚を食べると言っていました」


「魚か」


エリックがドラゴンを見る。


「一応、鑑定さんに聞いてみるか」


「鑑定さん?」


リシェルが首を傾げた。


その瞬間。


エリックの前に、球体魔方陣が現れる。


「……!」


リシェルの目が輝く。


「それ……!」


一歩、近づく。


「何ですか?」


「球体魔方陣」


「球体……魔方陣?」


リシェルは食い入るように見つめる。


「こんな魔法陣、見たことありません」


ジンは口を開けたまま、球体魔方陣を見ていた。


「鑑定さん」


『はい』


「このドラゴンは、何を食べる?」


『情報を検索します』


球体魔方陣が、ゆっくりと回転する。


『検索完了』


『食性を確認しました』


「……」


エリックが待つ。


『主な食性は、魚類です』


「魚か」


『ただし――』


「?」


『魔物の肉も食べることができます』


「なるほど」


エリックが頷く。


「魚を用意する」


「……」


リシェルは、球体魔方陣から目を離さない。


「エリック」


「ん?」


「今の……鑑定さん、ですよね?」


「うん」


「以前と違いませんか?」


「……?」


エリックが首を傾げる。


リシェルが球体魔方陣を指差す。


「ちゃんと、情報を調べていました」


「そうだな」


「ということは……」


リシェルの目が、さらに輝く。


「学習しているんですか?」


「……」


ジンがエリックを見る。


「何の話だ?」


その時。


『学習を、継続しています』


「……」


エリックが球体魔方陣を見る。


「……そうみたいだな」


リシェルは完全に球体魔方陣へ意識を奪われていた。


「この魔法陣……」


「もっと詳しく見てもいいですか?」


「……」


ジンは。


まだ口を開けたままだった。


エリックは。


そんな二人を見ていた。


そして。


ドラゴンを見る。


「魚か……」


小さなドラゴンは。


エリックの足元で。


大人しく座っている。


「魚は、明日取りに行くか」


「え?」


リシェルが。


球体魔方陣から顔を上げる。


「明日ですか?」


「もう夜も更けてるからな」


エリックが。


窓の外を見る。


「今日は休む」


「そうですね」


リシェルが。


頷く。


「エリックも、ずっと急いで戻ってきたんですから」


「うん」


エリックが。


立ち上がる。


「さてと」


「二階で着替えてくる」


そう言って。


歩き出す。


ペタ。


「……?」


エリックが。


足を止める。


ペタ。


小さな音。


振り返る。


ドラゴンが。


エリックの後ろにいた。


「……」


エリックが。


一歩進む。


ペタ。


また。


ついてくる。


「……お前も来るのか?」


ドラゴンは。


嬉しそうに。


尻尾を振った。


「……そうか」


エリックは。


そのまま歩き出す。


ペタ。


ペタ。


小さな足音が。


その後ろをついていった。


「……」


リシェルは。


その様子を見ていた。


そして。


小さく微笑む。


「本当に……」


「親だと思っているんですね」


ジンも。


ようやく口を閉じる。


「……ああ」


二人は。


その後ろ姿を。


静かに見送った。


エリックが。


二階へ上がる。


自分の部屋へ入り。


椅子に座る。


すると。


ドラゴンも。


その足元に座った。


「……」


エリックが。


立ち上がる。


ドラゴンも。


立ち上がる。


「……」


もう一度。


エリックが座る。


ドラゴンも。


座る。


「……そうか」


エリックは。


そのまま。


ベッドへ向かう。


横になる。


すると。


ドラゴンも。


ベッドの横で。


丸くなった。


「……」


エリックが。


目を閉じる。


ドラゴンも。


静かに目を閉じた。


――その頃。


王都へ向かう街道では。


レイナは。


馬を走らせていた。


エリックを見送った方向とは。


反対へ。


エリシアたちの馬車を。


目指している。


「……」


レイナは。


前を見る。


「急がないとな」


エリシア様たちが。


待っている。


そう思いながら。


馬を走らせていた。

今回は。


ついに。


ドラゴンが。


生まれました。


そして。


エリックの後ろを。


小さな竜が。


ついてくることに。


これから。


エリックと。


どんな毎日を。


過ごすのでしょうか。


次回も楽しんでいただければ嬉しいです。


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