第五十一話(後編) : 急いで、ラグノへ
グルメアを。
後にした。
エリックたちは。
帰路へと。
つきます。
しかし。
その途中で。
思わぬ知らせが。
届くことに。
今回も楽しんでいただければ嬉しいです。
揺れる馬車の中。
エリックは。
疲れ切った様子で。
うとうとしていた。
「……」
ボルグは。
窓の外を見る。
空を。
ミズク鳥が。
忙しそうに飛び回っていた。
「もう、こんな季節かのう」
「冬支度ですね」
ミーナが。
窓の外を見る。
「そうですね」
ルチアも。
頷く。
「ミズク鳥は。
卵を。
オスとメスが。
交代で温めるって。
知ってましたか?」
「知ってます」
ルチアが。
嬉しそうに答える。
「おしどり夫婦なんですよ」
「へえ……」
エリシアが。
ミズク鳥を見ながら。
ふと。
口を開く。
「卵と言えば……」
「……」
エリシアが。
エリックを見る。
「ドラゴンの卵は。
どうなったのでしょう?」
「……」
うとうとしていた。
エリックの目が。
少しだけ開く。
「ドラゴン?」
ミーナが。
驚いた顔をする。
「ドラゴンの卵が。
魔境の森にあるのですか?」
「はい」
エリシアが。
頷く。
「あるのですが。
どれくらいで。
孵化するのか。
少し気になっていて」
「気になりますね」
ルチアが。
頷く。
「はい。
気になります」
そして。
少し考えてから。
「なんせドラゴンは。
最初に見た者を――」
「そうね」
エリシアが。
続ける。
「最初に見た者を。
親だと思うから」
「そうなんですか?」
ミーナが。
目を丸くする。
「はい」
ルチアが。
頷く。
「親以外の者の言うことは。
聞かないと思います」
「……」
エリックは。
何も言わない。
ただ。
少しだけ。
目を覚ましていた。
――魔境の森。
ジンとリシェルは。
いつものように。
森で過ごしていた。
時折。
薬草を採りに来る。
ドワーフたちの姿もある。
しかし。
魔鏡の家。
その奥。
卵の部屋。
そこに。
一つの。
ドラゴンの卵があった。
「……」
卵は。
静かに。
そこにある。
だが。
よく見ると。
表面に。
小さな亀裂が。
入っていた。
ピシッ。
ほんの。
小さな音。
卵が。
わずかに。
揺れる。
そして。
もう一度。
ピシッ。
「……」
亀裂が。
少しだけ。
広がった。
しかし。
それに気付く者は。
まだ。
誰もいなかった。
帰路中馬車の中
ピコン。
球体魔法陣が。
突然。
回り始める。
ギュイーーン。
青い光が。
球体を包む。
『警告』
『ドラゴンの卵に。
異常を確認しました』
「……異常?」
『亀裂を確認しました』
「……」
エリックは。
しばらく。
黙っていた。
「ミーナとルチアが言ってたことは……」
エリックが。
少し考える。
「本当なのか?」
『確認します』
球体魔法陣が。
ギュイーンと。
回り始める。
『確認しました』
一拍。
『間違いありません』
「……」
『ドラゴンは。
最初に見た者を。
親と認識する傾向があります』
「……そうか」
『ただし』
「?」
『個体差はあります』
「……」
エリックは。
窓の外を見る。
王都は。
まだ遠い。
「……帰りたい」
エリック」
エリシアが。
ふと。
口を開く。
「ここに。
転移魔法陣を書いたら。
どうでしょう?」
「……!」
エリックが。
エリシアを見る。
「そうだ」
一瞬。
「それだ!」
エリックが。
少しだけ身を乗り出す。
「転移すればいい」
その時。
「ピコン」
球体魔法陣が。
突然。
回り始める。
青い光が。
球体を包んだ。
『警告』
「……?」
『三点転移魔法陣の。
領域外への転移は。
推奨されません』
「三点?」
エリックが。
首を傾げる。
『現在。
三点の転移地点が。
存在しています』
『国境近くのラグノ』
『めっちゃ美人な女神像の前』
『魔境の森』
「……」
エリックが。
少し黙る。
「めっちゃ美人?」
『はい』
「……自分で言うんだ」
『事実です』
「……」
エリシアが。
小さく笑う。
「鑑定さんらしいですね」
『それよりも』
球体魔法陣が。
淡く光る。
『現在の三点転移魔法陣の領域外に。
新たな転移地点を作成し。
転移した場合――』
「どうなる?」
『異空間に。
閉じ込められる可能性があります』
「可能性は?」
一拍。
『99.3%です』
「……」
エリックは。
黙った。
そして。
窓の外を見る。
『国境近くのラグノへの転移を。
推奨します』
「……」
エリックが。
小さく呟く。
「ラグノか……」
エリシアが。
エリックを見る。
「どうします?」
「鑑定さん」
エリックが。
球体魔法陣を見る。
「何日かかる?」
『馬車の場合。
考慮して七日ほどです』
「間に合う?」
『ドラゴンの卵は。
殻を破るまで。
四日ほどかかると予測します』
「……」
エリックが。
一瞬。
黙る。
『間に合いません』
「早馬を使えば?」
『三日の夕暮れには。
ラグノへ到着できます』
「レイナ」
エリックが。
レイナを見る。
「乗せて行ってくれ」
「……私は。
エリシア様の護衛だぞ」
「卵が待ってる」
「……」
レイナが。
エリシアを見る。
エリシアは。
少しだけ笑った。
「行ってあげて」
「エリシア様……」
「大丈夫です」
エリシアが。
頷く。
「私たちは。
ボルグたちと一緒に。
馬車で向かいます」
レイナが。
小さく息を吐く。
「……分かった」
そして。
立ち上がる。
「行くぞ。
エリック」
「うん」
エリックも。
立ち上がる。
「誰か。
馬を」
レイナが。
声を上げる。
「俺の後ろに乗れ」
エリックが。
頷く。
「分かった」
レイナが。
馬を走らせる。
「食料と水袋」
エリックが。
荷物を確認する。
「落とさないように持ってろよ」
「分かってる」
「急いでくれ」
「分かってる」
レイナは。
手綱を握る。
馬の様子を。
ちらりと確認する。
「だが」
「馬が潰れたら意味がない」
「……」
「次の小川で休ませる」
「分かった」
エリックが。
前を見る。
遠くに続く道。
「……急ごう」
「ああ」
レイナは。
馬の状態を見ながら。
速度を上げていった。
それから。
二日目。
昼を過ぎた頃。
空が。
少しずつ暗くなってきた。
ぽつ。
雨が。
降り始める。
「……雨か」
レイナが。
空を見上げる。
「雲は薄い」
「すぐにやむだろう」
やがて。
雨は。
少しずつ強くなる。
「……」
エリックが。
空を見る。
「まだ、やまない」
レイナは。
馬の様子を見る。
「無理はしない」
「雨の中で速度を上げれば、馬が潰れる」
「……分かった」
それでも。
雨は。
なかなかやまなかった。
時間だけが。
過ぎていく。
その時。
「ピコン」
球体魔法陣が。
青く光る。
『警告』
『予定通りに到着できない可能性が高まりました』
「……」
エリックが。
前を見る。
「急ごう」
「分かっている」
レイナは。
手綱を握り直す。
「だが」
「焦って馬を潰すわけにはいかない」
「……」
エリックが。
レイナを見る。
「私を信じろ」
「……分かった」
その直後。
雨が。
少しずつ弱くなる。
やがて。
雲の隙間から。
光が差し込んだ。
「……やんだ」
レイナが。
前を見る。
「行くぞ」
馬が。
再び。
勢いよく走り出した。
三日間。
二人は。
ひたすら馬を走らせた。
途中。
小川で馬を休ませ。
水を飲ませる。
食料を補給しながら。
可能な限り。
速度を落とさず進んだ。
そして――。
三日目の夕暮れ。
「……見えた」
レイナが。
前方を見る。
「ラグノだ」
「……」
エリックも。
顔を上げる。
遠くに。
国境近くの街が見えていた。
「間に合った……」
エリックが。
小さく呟く。
レイナが。
馬を止める。
「ここからは?」
「転移する」
エリックが。
馬から降りる。
そして。
ラグノの転移魔法陣へ向かって。
歩き出した。
今回は。
グルメアからの。
帰路のお話でした。
そして。
魔鏡の家では。
ドラゴンの卵に。
小さな異変が。
起きています。
果たして。
エリックは。
間に合うのでしょうか。
次回も楽しんでいただければ嬉しいです。
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