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霧雨館の第五楽章  作者: うよし
第三章 十一時二十分のアリバイ

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幕間 容疑者整理

【容疑者整理】


 これまでの証言と調査で、事件は単純な密室殺人ではなくなった。


 音楽室の中で、低いラ、金属音、悲鳴が連続して聞こえたように思えた。


 しかし、その音はすべて同じ場所で鳴ったとは限らない。


 ここで、現時点の容疑者と疑問点を整理する。



◆ 雨宮玲司


 蓮司によく似た人物。


 紗英さんは、玲司さんが部屋にいたと証言したが、姿を見ていたわけではない。


 気配と寝返りの音で、部屋にいたと判断していた。


 そのため、玲司さんのアリバイは完全ではない。


 また、蓮司さんと外見が似ているため、静乃さんが見た男の背中が玲司さんだった可能性も残る。



◆ 紗英


 玲司さんを守ろうとしている人物。


 蓮司さんからの手紙を受け取っていたが、それを隠していた。


 玲司さんのアリバイを支える証言者だが、その証言は「見たこと」ではなく「思ったこと」に近い。


 玲司さんを守るためなら、情報を隠す可能性がある。



◆ 篠原千鶴


 宗一郎の元秘書。


 第五楽章を探すことに強い抵抗を示していた。


 時計塔で見つかった本物の第五楽章では、もう一人の名前が消されていた。


 篠原さんの送られなかった手紙から、消された名前は篠原さん自身のものだった可能性がある。


 七年前の真相にかなり近い人物。



◆ 久世将臣


 美術商。


 第五楽章を価値ある品として見ている。


 午後九時半頃に音楽室へ入ったと証言した。


 その時点で、自動演奏ピアノには紙ロールが入っていたが、譜面台に第五楽章はなかったという。


 この証言が正しければ重要な手がかりだが、嘘であれば久世さん自身が紙ロールを仕掛けた可能性もある。



◆ 雨宮奏太


 宗一郎に憧れていた音大生。


 低いラを複数回聞いたと証言した。


 十一時頃には、自分でも音楽室へ入り、低いラを押していた。


 その後、金属音を聞いたという。


 音に関する重要証言者だが、当初は音楽室へ入ったことを隠していた。



◆ 雨宮静乃


 宗一郎の妻。


 十一時半頃、男の背中を見たと証言した。


 それが玲司さんなのか、蓮司さんなのかは分からない。


 また、七年前の十一時二十分について、宗一郎の罪と関係があると示唆している。


 多くを知っているが、まだ核心を語っていない。



◆ 鷺沼


 雨宮家の使用人。


 鍵を管理している人物。


 書斎、音楽室、時計塔、宗一郎の鍵束について詳しい。


 長く雨宮家に仕えているため、七年前のことも知っている可能性がある。


 ただし、宗一郎への忠誠から、必要なことを隠している可能性がある。



◆ 美和


 雨宮家の使用人。


 篠原さんを発見し、その後の手当ても行っていた。


 現時点では大きな疑いは少ない。


 ただし、館内の移動や、誰がどこにいたかについて、何かを見ている可能性がある。



【現時点の注意点】


・怪しい人物が、そのまま殺人犯とは限らない。

・嘘をついた人物が、蓮司さんを殺したとは限らない。

・沈黙には、それぞれ別の理由がある。

・今は「誰が犯人か」よりも、「誰が何を隠したか」を分ける必要がある。

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