幕間 容疑者整理
【容疑者整理】
これまでの証言と調査で、事件は単純な密室殺人ではなくなった。
音楽室の中で、低いラ、金属音、悲鳴が連続して聞こえたように思えた。
しかし、その音はすべて同じ場所で鳴ったとは限らない。
ここで、現時点の容疑者と疑問点を整理する。
◆ 雨宮玲司
蓮司によく似た人物。
紗英さんは、玲司さんが部屋にいたと証言したが、姿を見ていたわけではない。
気配と寝返りの音で、部屋にいたと判断していた。
そのため、玲司さんのアリバイは完全ではない。
また、蓮司さんと外見が似ているため、静乃さんが見た男の背中が玲司さんだった可能性も残る。
◆ 紗英
玲司さんを守ろうとしている人物。
蓮司さんからの手紙を受け取っていたが、それを隠していた。
玲司さんのアリバイを支える証言者だが、その証言は「見たこと」ではなく「思ったこと」に近い。
玲司さんを守るためなら、情報を隠す可能性がある。
◆ 篠原千鶴
宗一郎の元秘書。
第五楽章を探すことに強い抵抗を示していた。
時計塔で見つかった本物の第五楽章では、もう一人の名前が消されていた。
篠原さんの送られなかった手紙から、消された名前は篠原さん自身のものだった可能性がある。
七年前の真相にかなり近い人物。
◆ 久世将臣
美術商。
第五楽章を価値ある品として見ている。
午後九時半頃に音楽室へ入ったと証言した。
その時点で、自動演奏ピアノには紙ロールが入っていたが、譜面台に第五楽章はなかったという。
この証言が正しければ重要な手がかりだが、嘘であれば久世さん自身が紙ロールを仕掛けた可能性もある。
◆ 雨宮奏太
宗一郎に憧れていた音大生。
低いラを複数回聞いたと証言した。
十一時頃には、自分でも音楽室へ入り、低いラを押していた。
その後、金属音を聞いたという。
音に関する重要証言者だが、当初は音楽室へ入ったことを隠していた。
◆ 雨宮静乃
宗一郎の妻。
十一時半頃、男の背中を見たと証言した。
それが玲司さんなのか、蓮司さんなのかは分からない。
また、七年前の十一時二十分について、宗一郎の罪と関係があると示唆している。
多くを知っているが、まだ核心を語っていない。
◆ 鷺沼
雨宮家の使用人。
鍵を管理している人物。
書斎、音楽室、時計塔、宗一郎の鍵束について詳しい。
長く雨宮家に仕えているため、七年前のことも知っている可能性がある。
ただし、宗一郎への忠誠から、必要なことを隠している可能性がある。
◆ 美和
雨宮家の使用人。
篠原さんを発見し、その後の手当ても行っていた。
現時点では大きな疑いは少ない。
ただし、館内の移動や、誰がどこにいたかについて、何かを見ている可能性がある。
【現時点の注意点】
・怪しい人物が、そのまま殺人犯とは限らない。
・嘘をついた人物が、蓮司さんを殺したとは限らない。
・沈黙には、それぞれ別の理由がある。
・今は「誰が犯人か」よりも、「誰が何を隠したか」を分ける必要がある。




