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霧雨館の第五楽章  作者: うよし
第三章 十一時二十分のアリバイ

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第4話 奏太と静乃

 雨宮奏太。


 雨宮静乃。


 僕はメモ帳の新しいページに、二人の名前を書いた。


 一人は、宗一郎に作曲を師事していた若い音大生。


 もう一人は、宗一郎の妻だった老婦人。


 年齢も、立場も、宗一郎との距離もまるで違う。


 けれど、二人には共通点があった。


 音を聞いている。


 奏太さんは、低いラを複数回聞いた。


 静乃さんは、十一時半頃に男の足音を聞いた。


 この二人の証言は、事件の時間を考えるうえで避けて通れない。


「奏太さん」


 白瀬さんが静かに呼んだ。


 奏太さんは、腕時計を握ったまま顔を上げた。


「はい」


「まず、あなたが聞いた低いラについて確認します」


「……はい」


「あなたは、低いラを複数回聞いたと言いました」


「はい」


「一度目は、十一時半より少し前」


「そうです」


「二度目は、零時頃。真柴さんの声が聞こえる直前」


「はい」


「そして三度目は、音楽室を施錠した後」


「聞きました」


「この三回は、すべて同じ音に聞こえましたか」


 奏太さんは少し考えた。


「似ていました」


「同じ、ではなく?」


「同じ音だと思います。でも……」


「でも?」


「三度目は、少し遠く聞こえました」


「遠く」


 白瀬さんの目が細くなる。


「音楽室からではないように聞こえた?」


「分かりません」


 奏太さんは慌てて首を振った。


「ただ、廊下の奥から聞こえたような気がして」


「廊下の奥とは、音楽室の方ですか」


「はい」


「音楽室の中からか、音楽室の方角からかは分からない」


「……はい」


 僕はメモする。


 奏太:三度目の低いラは、音楽室の中からではなく、音楽室の方角から聞こえたように感じた。


 白瀬さんは続けた。


「一度目の低いラを聞いた時、あなたはどこにいましたか」


「自室です」


「部屋の中?」


「最初は」


「最初は?」


 奏太さんは唇を噛んだ。


「扉を開けて、廊下に出ました」


「どこまで行きましたか」


「部屋の前です」


「本当に?」


 奏太さんは答えなかった。


 応接室に、雨音が入り込んでくる。


 窓を細かく叩く音。


 暖炉の火が小さく揺れる音。


 その中で、奏太さんの沈黙だけが目立っていた。


「奏太さん」


 白瀬さんの声は責めていなかった。


「ここで隠すと、あなた自身が犯人に近く見えます」


「僕は殺していません」


「では、何を隠していますか」


 奏太さんは腕時計を握りしめた。


 白い指先が震えている。


「音楽室へ行きました」


 小さな声だった。


 けれど、部屋中に聞こえた。


 玲司さんが顔を上げる。


「奏太」


「すみません」


「いつだ」


「十一時頃です」


「十一時頃?」


 白瀬さんが繰り返した。


「はい」


「久世さんが音楽室へ入った午後九時半より後。鷺沼さんが十時に戸締まり確認をした後」


「たぶん、そうです」


「扉は?」


「閉まっていました。でも、鍵はかかっていませんでした」


「中には入りましたか」


「入りました」


 僕は急いでメモする。


 奏太:十一時頃、音楽室へ入った。


 今まで隠していた。


「なぜ、今まで言わなかったんですか」


 玲司さんが問い詰めるように言った。


「怖かったんです」


「何が」


「僕が疑われると思って」


「実際、疑われます」


 白瀬さんが言った。


 奏太さんは顔を伏せた。


「分かっています」


「音楽室で何をしましたか」


「第五楽章を探しました」


「どこを?」


「譜面棚と、自動演奏ピアノの周りを少し」


「紙ロールはありましたか」


「ありました」


「端に『第五楽章』と?」


「はい」


「触れましたか」


「触れていません」


「譜面台に楽譜は?」


 奏太さんは首を横に振った。


「ありませんでした」


 久世さんが静かに笑った。


「私の証言と一致しますね」


「一致するから正しいとは限りません」


 白瀬さんは即座に返した。


 久世さんは肩をすくめた。


「手厳しい」


 白瀬さんは奏太さんへ視線を戻した。


「蓮司さんはいましたか」


「いません」


「血痕は?」


「見ていません」


「懐中時計のケースは?」


「見ていません」


「グランドピアノには触れましたか」


 奏太さんは、そこでまた沈黙した。


 白瀬さんは何も言わずに待った。


「鍵盤を、一つだけ押しました」


「どの鍵盤を?」


「低いラです」


 僕の手が止まった。


 低いラ。


 夕方、白瀬さんが押した音。


 真柴が聞いた音。


 事件前後に何度も鳴った音。


「なぜ、その音を?」


 白瀬さんが尋ねる。


「夕食前から、ずっと頭に残っていたんです」


「音楽室から聞こえていた音ですか」


「はい。低いラが、何度も」


「あなたが押したのは、十一時頃」


「はい」


「その後、金属音は聞こえましたか」


 奏太さんは頷いた。


「小さく。チン、という音が」


「夕方、真柴さんと私が聞いた音と同じような?」


「たぶん」


 白瀬さんは僕に目配せした。


 僕は書く。


 奏太:十一時頃、音楽室に入り、グランドピアノの低いラを押した。


 その後、小さな金属音を聞いた。


「では、あなたが聞いた一度目の低いラとは、自分で鳴らした音ですか」


 奏太さんは首を振った。


「いいえ」


「違う?」


「僕が押したのは、十一時頃です。その後、部屋に戻りました。一度目に聞いた低いラは、十一時半より少し前です」


「つまり、低いラは少なくとも、あなたが押した一回と、その後に聞いた複数回がある」


「そうなります」


 僕は頭の中が混乱し始めた。


 低いラは、いったい何回鳴っているのか。


 夕方、白瀬さんが鳴らした。


 十一時頃、奏太さんが鳴らした。


 十一時半前、奏太さんが聞いた。


 零時頃、僕や他の人が聞いた。


 施錠後にも鳴った。


 同じ低いラでも、すべて同じ原因とは限らない。


 それどころか、別々の人物や仕掛けによって鳴らされている可能性がある。


「奏太さん」


 白瀬さんが言った。


「あなたが十一時頃に音楽室へ入った時、自動演奏ピアノは動いていましたか」


「いいえ」


「紙ロールは入っていたが、演奏はしていなかった」


「はい」


「何か機械音は?」


「ありませんでした」


「部屋の匂いで気づいたことは?」


「匂い?」


「古い紙や木の匂い以外に」


 奏太さんは少し考えた。


「少し、煙草の匂いがしました」


 応接室の空気が変わった。


「煙草?」


 僕は思わず聞き返した。


「はい。強くはなかったです。けれど、誰かが少し前に吸っていたような」


「音楽室で煙草を吸う人物に心当たりはありますか」


 白瀬さんが全員を見た。


 玲司さんは首を振る。


「伯父は昔吸っていましたが、晩年は吸っていませんでした」


 久世さんが手を挙げるように指を動かした。


「私は吸います。ただ、音楽室では吸っていません」


「午後九時半に音楽室へ入った時は?」


「吸っていません」


「自室では?」


「吸いました」


「煙草の種類は」


「葉巻ではなく紙巻きです。輸入物ですが」


「鷺沼さん」


 白瀬さんが呼ぶ。


「館内で煙草を吸う方は?」


「現在、把握している範囲では久世様のみです」


「使用人は?」


「私は吸いません。美和も吸いません」


 美和さんは小さく頷いた。


「篠原さんは?」


「吸いません」


「奏太さんは?」


「吸いません」


 白瀬さんは僕を見た。


「メモに残してください」


 十一時頃、音楽室に煙草の匂い。


 久世は喫煙者だが、音楽室では吸っていないと主張。


 この匂いが何を意味するのかは、まだ分からない。


 久世さんの証言とつながるのか。


 それとも、別の誰かが久世さんの存在を匂わせたのか。


 どちらもあり得る。


「奏太さん」


 白瀬さんは、最後に確認するように言った。


「あなたが音楽室にいた十一時頃、蓮司さんの姿はなかった」


「ありません」


「第五楽章の楽譜もなかった」


「ありません」


「紙ロールはあった」


「はい」


「低いラを押すと金属音がした」


「はい」


「そのことを隠していた」


「はい」


「理由は、自分が疑われると思ったから」


「はい」


 奏太さんは、絞り出すように答えた。


 白瀬さんは小さく頷いた。


「分かりました」


「僕は、本当に殺していません」


「今は、その言葉を証明する段階ではありません」


「では何を」


「あなたの隠し事が、事件のどこに置かれるかを確認する段階です」


 奏太さんは、よく分からないという顔をした。


 けれど、僕には少し分かってきた。


 奏太さんの行動は怪しい。


 だが、怪しいから犯人とは限らない。


 彼は低いラを鳴らし、金属音を聞いた。


 その事実は、犯行そのものよりも、仕掛けの存在を示しているのかもしれない。


 白瀬さんは、次に静乃さんへ向き直った。


「静乃さん」


「ようやくね」


 静乃さんは、待っていたように微笑んだ。


「あなたは十一時半頃、男の足音を聞いた」


「ええ」


「姿も少し見た」


「背中だけね」


「どこで?」


「私の部屋の前よ。一階の寝室」


「音楽室から見て、どの方向ですか」


「反対側。書斎や親族用の部屋がある方」


「その人物は、音楽室へ向かっていたのではなく、音楽室から離れる方向だった?」


「そう見えたわ」


 僕はメモする。


 十一時半頃、男の足音。


 音楽室から離れる方向。


 玲司か蓮司か不明。


「歩き方に特徴は?」


 白瀬さんが尋ねた。


「急いでいたわけではないわ」


「落ち着いていた?」


「そうね。けれど、迷っている感じもなかった」


「どこへ向かっているようでしたか」


「書斎か、時計塔へ続く廊下の方」


「時計塔へ?」


 玲司さんが反応した。


「叔母様、時計塔へは鍵がないと入れません」


「ええ」


「なら、誰も行けないはずです」


「鍵を持っていれば行けるわ」


 静乃さんはあっさり言った。


 鷺沼がわずかに顔を上げた。


「時計塔の鍵は、通常、書斎の鍵箱に保管しております」


「鍵箱の鍵は?」


 白瀬さんが尋ねる。


「私が管理しております」


「書斎には、今夜誰が入りましたか」


「私、玲司様、白瀬様、真柴様。それから、日記を確認した際に篠原様と紗英様が廊下に」


「事件前は?」


「確認できておりません」


 鍵。


 書斎。


 時計塔。


 また新しい線が増える。


 低いラと金属音。


 十一時二十分。


 時計塔。


 この三つは、どこかでつながっている気がした。


「静乃さん」


 白瀬さんが続けた。


「その男の背中を見て、玲司さんか蓮司さんか分からなかった」


「ええ。二人はよく似ているもの」


「七年前の蓮司さんと、今の玲司さんを比べても?」


「似ているわ」


「蓮司さんは七年前に失踪している。今夜、遺体で発見されるまで、誰も現在の姿を知らなかったはずです」


「そうね」


「それでも、あなたは背中だけで、玲司さんか蓮司さんかもしれないと思った」


 静乃さんは、そこで小さく笑った。


「白瀬さん、あなたは意地が悪いわね」


「よく言われます」


「私は、蓮司が戻ってくるかもしれないと思っていたのよ」


 玲司さんが息を呑む。


「叔母様」


「知っていたわけではないわ。ただ、思っていた」


「なぜですか」


 白瀬さんが尋ねる。


「宗一郎さんは、死ぬ前に何度も言っていたの」


「あの子はまだ館の中にいる」


「ええ」


「それを、あなたは比喩ではない可能性があると思っていた」


「この館では、比喩ほど現実になるのよ」


 静乃さんは杖の握り手を撫でた。


「宗一郎さんは、音楽に人を閉じ込める人だった。あの人の中では、蓮司はずっと館にいたのでしょう」


「蓮司さんが、本当に館に隠れていた可能性は?」


「さあ」


「知らないのですか」


「知らないわ」


「では、七年前に何があったのですか」


 静乃さんはしばらく黙った。


 応接室の雨音が、少し強くなった。


 窓の外は白い霧で覆われている。


 どれだけ目を凝らしても、その向こうは見えない。


「七年前の十一時二十分」


 静乃さんはゆっくりと言った。


「あの時、時計塔が止まった」


「落雷で?」


「表向きはね」


「本当は?」


「宗一郎さんが止めたのかもしれないわ」


 その言葉に、全員が静まり返った。


「旦那様が?」


 鷺沼が初めて、わずかに声を強めた。


「私はそう思っているだけよ」


 静乃さんは涼しい顔で答えた。


「証拠はありません」


「なぜ、そう思うのですか」


 白瀬さんが尋ねる。


「あの人は、時間を支配したがる人だったから」


「時間を支配する」


「音楽も時計も、時間を分けるものでしょう」


 その言葉は、白瀬さんが初めて音楽室を見た夜に言った言葉と同じだった。


 音楽と時計は似ています。


 どちらも、時間を分けるものですから。


「宗一郎さんは、十一時二十分に何かを閉じ込めたかった」


 白瀬さんが言った。


「あなたはそう考えているのですね」


「ええ」


「何を?」


「罪よ」


 静乃さんは、あまりにも簡単に言った。


 罪。


 その一文字が、応接室に重く落ちた。


「誰の罪ですか」


「宗一郎さんの罪」


「具体的には?」


「それは、私が言うことではないわ」


「なぜです」


「私は妻だったけれど、共犯ではなかったから」


 篠原さんの表情がわずかに変わった。


 白瀬さんは、それを見ていた。


 僕も見ていた。


 しかし、何を意味するのかは分からない。


「静乃さん」


 白瀬さんはさらに踏み込んだ。


「あなたは、第五楽章の本物がどこにあるか知っていますか」


「知らないわ」


「では、存在すると思いますか」


「ええ」


「なぜ」


「宗一郎さんが、隠す価値のないものを隠す人ではなかったから」


 久世さんが小さく笑った。


「それはよく分かる」


「あなたとは意味が違うわ、久世さん」


 静乃さんは軽く返した。


「宗一郎さんにとって、価値とは値段ではない。名前よ」


「名前?」


 僕は思わず呟いた。


「誰の名前で残るか。誰のものとして記録されるか。あの人は、それに取り憑かれていた」


 篠原さんの左手が、書類の端を強く押さえた。


 白瀬さんは静かに言った。


「第五楽章は、名前に関わる曲なのですね」


 静乃さんは答えなかった。


 ただ、暖炉の火を見ていた。


 僕はメモする。


 静乃:七年前、宗一郎が時計塔を止めた可能性を示唆。


 十一時二十分には、宗一郎の罪が閉じ込められていると語る。


 第五楽章は名前に関わる曲だと示唆。


「ここまでを整理します」


 白瀬さんが言った。


 僕は新しいページを開いた。


 奏太さん。


 十一時頃、音楽室へ入っていた。


 紙ロールを見た。


 譜面台に第五楽章はなかった。


 低いラを自分で押し、金属音を聞いた。


 音楽室には煙草の匂いがあった。


 その後、十一時半前、零時頃、施錠後にも低いラを聞いた。


 静乃さん。


 十一時半頃、男の足音を聞いた。


 男は音楽室から離れる方向へ向かっていたように見えた。


 玲司さんか蓮司さんかは不明。


 七年前の十一時二十分について、宗一郎の罪と関係があると示唆。


 僕は書き終えた後、思わず息を吐いた。


 証言を整理するほど、事件は単純にならない。


 むしろ、関係者全員がどこかで事件に触れているように見えてくる。


「奏太さんの隠し事は、犯行ではなく、音楽室へ入ったこと」


 白瀬さんが言った。


「静乃さんの証言は、七年前と今夜をつなぐ。ただし、彼女は核心をまだ話していない」


「つまり、まだ分からないことだらけですね」


 僕が言うと、白瀬さんは頷いた。


「はい」


「でも、一つ分かったことがあります」


「何ですか」


「低いラは、一つの出来事ではない」


 白瀬さんは、少しだけ目を細めた。


「続けてください」


「夕方にも鳴った。奏太さんも十一時頃に鳴らした。十一時半前にも聞こえた。零時頃にも聞こえた。施錠後にも聞こえた」


 僕はメモを見ながら言った。


「同じ音に聞こえても、全部同じ原因とは限らない」


「その通りです」


 白瀬さんは静かに言った。


「この事件の音は、重なっています」


「重なっている?」


「同じ低いラという音に、複数の意味が重ねられている。だから、聞いた人は一つの流れだと思ってしまう」


 低いラ。


 金属音。


 悲鳴。


 僕はそれを、一つの事件の連続として聞いた。


 だが、本当にそうなのか。


 低いラは別の場所から鳴り、金属音は別の仕掛けで響き、悲鳴はまた別の音だった可能性もある。


 もしそうなら、僕が聞いた一連の音は、犯行そのものではなく、誰かに組み立てられた演奏だったことになる。


「真柴さん」


 白瀬さんが言った。


「次に確認すべきものは何だと思いますか」


「音の出どころです」


「ええ」


「低いラが、どこからどうやって鳴ったのか」


 僕はそこで一度、言葉に詰まった。


「それから……金属音です。あれが何の音だったのか」


「はい」


「それと、悲鳴。本当に人の声だったのか」


 白瀬さんは頷いた。


「次に、音楽室をもう一度調べる必要があります」


「警察が来る前に?」


「必要最低限に。ですが、音がまた鳴るなら、放置はできません」


 玲司さんが苦しそうに言った。


「兄の遺体がある部屋を、また調べるんですか」


「はい」


「残酷です」


「残酷でも、必要です」


 白瀬さんは言った。


「蓮司さんが殺された理由も、誰が殺したのかも、あの部屋に残っています」


 音楽室。


 事件現場。


 低いラ。


 鍵盤。


 紙ロール。


 第五楽章。


 僕は、宗一郎の日記の一文を思い出した。


 第五楽章は楽譜ではない。


 鍵盤が覚えている。


 鍵盤が何を覚えているのか。


 それを確かめるためには、もう一度あの部屋へ入るしかない。


 窓の外では、雨が降り続いている。


 館は閉ざされている。


 時計は止まっている。


 けれど、事件だけは少しずつ動いていた。


 十一時二十分の針が、見えないところで音もなく進んでいるように。

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