88 わたしも、鳴人さんを信じる事にしたんです
いつも通り、スープを仕込んだだけです。
それが理由。
本当に、それだけ。
銭湯に行く途中で、れんげちゃんは閉店時間の事情を話してくれた。
聞けば、なんの事はない。単にスープの量を普段通りに仕込んだだけの事だった。
「昨日は、鳴人さんもまだ慣れておらなかったでしょうし、練習用に仕込んだスープの分も作り直しませんでしたから」
なんでもないように話す彼女だが、いつもより足どりが遅い。
かなり、疲れているみたいだ。
「じゃあ、どうして今日は普通通りに?」
「マスターが、鳴人さんを信じて、麺茹でをお任せしたから。
わたしも、鳴人さんを信じる事にしたんです」
「信じる?」
「はい。マスターは、お怪我をなされても、いつも通りにお店を開ける事に決められたんです。だから、わたしも、できる限り“いつも通り”にしたんです」
いつも通り、か。
「じゃあ、どうして普段より店を遅くまで開けていたの?」
「それは…わたしの手際が、悪くて…ゴメンナサイ…」
いや、それは断じてありえない。それこそ、俺はれんげちゃんを信じているから。
俺もれんげちゃんを、信じてる。
だから、手際が悪かっただけなんて、信じないよ?
短いけど、ここでカット。
話の転換点な、もんでね。




