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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第14章 鳴人の修行、親父の決断、彼女の思い

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87 ここは、俺が頑張らないとな…

 麺方、二日目。

 あれ、割と順調じゃん。

 俺って、もしかして、天才かも?


 …白河は、そんなチョロイもん書いたりしません。

 二日目も、俺は順調に麺を茹で上げていた。

 麺のほぐしなどの準備も、だいぶ手慣れてきたし。

 もちろん、手際はまだ悪くて、一度に茹でる麺の数はまだ増やせないけど、少なくとも茹で過ぎてやり直し、という事は無くなってきた。

 親父も、ほっと一安心したようで、午前のお客を全て捌き終わった後、病院やその他の用事を足しに出かけていった。

 店を開ける夕方には帰ってくると言っていたが、麺のほぐしなどの仕込みは、もう俺一人に任せてもいいと判断したようだ。

 ハハ、俺、わりと才能あるのかもしれん。

 調子よく鼻唄なんか呟きながら、冷たい麺を指先でほぐしていく。

 しばらくやっていると、汗がでる位に体が温かくなってくるし、指も血の巡りが良くなってくるらしく、火照ってくる。

 以前に親父が言っていた「アイのあるラーメン」って、こういう事なのかもしれないな。

 指から沸きだす熱気、情熱が、麺の一本一本に宿っていく。

 それが、アイなのかなぁ、なんて。

 まあ、昨日今日の、しかも成り行きでしかたなく麺を茹で始めたような俺が言えるセリフじゃないけど。

 そんな俺を尻目に、れんげちゃんは実にテキパキとスープや具材の準備を済ませていく。

 普段は、俺も手伝える所は手伝ってるんだけど。

 仕事の進み具合は、俺がいる時と変わらないんだよね。

 メインスープの様子を確認して、ダシをとり終わった牛骨や鶏ガラをゴミ専用の大きなポリバケツに放り込んで、重そうに外に運び出していく。

「れんげちゃん、そんな力仕事は俺がやるから…」

「あっ、いえ、大丈夫ですから。鳴人さんは麺の支度に専念して下さい。マスターが帰ってくる前に済ませちゃいましょうね」

「おっけー!」

 まあ、ゴミ出しは、本来は俺がやっていた仕事なのだが。

 確かに今のおぼつかない手つきで麺をほぐす俺の様子では、れんげちゃんが優しく催促するのも頷ける。

 お言葉に甘えて、麺ほぐしを再開した。

 それにしても、あのポリバケツ、普段はそんなに重かった、か?

 普段は、スープのダシガラ位しか入らないから、店を閉めてから、最後に外に出す位で充分間に合っていたと思ってたけど…

「鳴人さんっ、手が止まってますよっ!」

「は、はいっ!」

 うひゃっ、れんげちゃん、にっこり笑ってこっちを睨んでるよ。

 まあ、親父よりはずっといいけど。

 俺は急いで手を動かし始めた。


 親父も帰って来て、時間通りに5時から店を開ける。

 俺も、なんとかコツを掴んできたようで、親父やれんげちゃんから指摘される事もほとんど無くなってきた。

 余計な事は考えないようにして、ひたすら集中して茹でているのが、上手い具合に働いてきたようだ。

 気がつくと、もう茹でる麺が無くなっていた。

「あれ?オーダーストップ?」

「ハイ、お疲れさまでしたっ!」

 額に汗をびっしょりとかきながら、それでも笑顔でれんげちゃんが、最後のドンブリを客席に運んでいった。

「うん、鳴人君、上出来、上出来だよ…」

 親父も、ほっとしたような笑みを浮かべて、どっかりと腰を下ろした。

 そうか、終ったのか…

 気が抜けた俺も、一緒にかがみ込んだ。

「…はい、御会計千円になります…ありがとうございましたっ!」

「アリガトやしたッ!」

「アリガトっしたっ!」

 屈んだまま、それでも声だけは張り上げる。

 とはいえ、一旦座り込むと、中々立てない。

 どっと疲れが吹き出してきたみたいだ。

「どうだい、鳴人くん、これからもやっていけそうかい?」

 心配そうに、親父が声を掛けてくる。

「キツイですけどね。でも、親父さんが毎日やってきたことですから、若い俺が出来ないとは、言えないですよ」

「そうか、うん、その意気、その意気だヨ…」

 親父、疲れたような笑みを浮かべて、ふらふらと立ち上がる。

 後片付けでも手伝うつもりでいるらしい。

 ハハ、けが人にそんな事させらないよ。

 れんげちゃんも、相当疲れているみたいだし。

 ここは、俺が頑張らないとな…

 足に力を込めて、なんとか立ち上がる。もう一踏ん張りだ。

 と、ふと目に留まった時計の針は、すでに10時を廻っていた。

「あ、あれ?」

 普段は、夜9時まで店を開けてはいるのだが、実質8時半位でスープか麺が切れてオーダーストップになるのだ。

 実際、昨日はスープ切れで、普段通りに店じまいしている。

 なのに、なんで今日に限って、こんな時間まで店を開けてるんだ?

「れんげちゃん?」

 すでにテキパキとテーブルを拭き上げて、イスを片づけ始めている彼女を見ると。

 むりやり作ったような笑顔で「スイマセン、わたしの手際が悪くて…」と、申し訳なさそうに頭を下げた。

 いや、彼女に限って、手際が悪いなんてことは絶対にありえない。

 じゃあ、なんで…

 順調に店仕舞いまで、たどり着きました。

 ただ、普段はスープ切れで8時半には店仕舞いなんですけどね。

 夜10時まで?


 ん?

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