表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第14章 鳴人の修行、親父の決断、彼女の思い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

81/100

80 ハハ、考え事していても、手は動いているんだ

 新章開幕。


 年明けの来々軒。

 店内はともかく、看板とか外装は、ねぇ。

 でもなぁ、そんな簡単に、改装費を貸してくれそうな所なんて、ないよねぇ。 

「帰ってきたね」

「帰ってきましたね」

 俺とれんげちゃんは、互いの意志を確かめあうように言葉をかわすと、薄汚れた『来々軒』の看板の前で一息ついた。

 店の中の清掃は、充分すぎるくらい行き届いているのだが。

 外装だけは、さすがのれんげちゃんでも、どうしようもない。

 建物自体が相当古いのだから、なんらかの手を入れる時期ではあるのだが。

 借家だから、大家さんとの話もあるだろうし。

 第一、改装資金なんかどこにもないだろうし。

 まあ、しばらくはこのままで行くしかないだろう。

 それでも。

「早速、取りかかるの?」

「いえ、明日の開店に間に合えば良いのですから、まずはお茶でも飲んで、一息入れましょう」

「おっけー。荷物おいて、着替えてくるよ」

「ハイ」


 三日程、留守にしていただけなのに、店の中が妙に新鮮に感じる。

 れんげちゃんという「主」が留守にしていた間、来々軒も骨休みしていたかのようだ。

 照明を入れて、窓を開けて戸外の換気を入れる。

 その間に、れんげちゃんはテキパキとお茶の準備をしてくれた。

「親父さん、もうこっちに帰ってきてるのかな?」

 いつもながらの、美味しいお茶。

「さあ…保証人の事、上手くいっているといいんですけど」

「揉めると、長引く、かも?」

「ええ。…もしそうだったら、鳴人さん、マスターの代わりにお店を開けて下さいますか?」

「ええっ?!」

 びっくりして顔を上げると、れんげちゃん、いたずらっ子のように舌を出してみせた。

「なんだ、冗談か。脅かさないでよ」

「ええ、半分は」

 半分?

「でも、鳴人さんのご実家で、立派に麺を茹でていらしたじゃありませんか。マスターのご許可が頂ければ、大丈夫、立派に代役はできると思いますけど?」

「そ、そんな。あれは、あの一日だけの事だし、通ってくれる常連さんの事なんて考えなくても良かったからだよ」

 俺もそうだったから言えるんだけど。

 常連さんの舌って、かなり敏感なんだよね。

 同じ味、同じ旨さじゃないと「手を抜いた」と思われてしまう。ひいては、店の信用を傷つける事になるからな。

「あら、来々軒では毎日同じ仕事が出来ますし、設備も材料も、あの時よりはずっと整っているんですよ?」

 ハハ、れんげちゃん、可愛い顔してキツイこというなあ。

「とにかく、まだ俺には親父さんの代わりは無理だよ。

 それより、さっさと掃除を済ませて、仕込みをやってしまおうよ。来々軒のラーメンの香り、なんか、懐かしくって」

「フフフ、そうですね」


 掃除の要領も手際も、一頃よりは随分マシになったかな、なんて、自分を褒めてやりたくなっている。

 れんげちゃんというスペシャリストのお手本を、真近で毎日見させて貰っているのはなんといっても大きい。

 しかも、彼女の教え方、その手綱裁きというか、要点だけ伝えて、ある程度俺自身に任せてくれて、やってみた上での悪い所を丁寧に直してくれる、そんな彼女の指導が、俺にはシックリ合っているんだよな。

 まあ、俺自身、いつか、彼女と対等になりたいという目標もあるし。

 そうなったら。

 そうなったら、いつか、れんげちゃんに…

「そっちは、もう充分ですね。厨房の方をお願いします」

「おっけー!」

 ハハ、考え事していても、手は動いているんだ。

 俺も、随分と成長したものだよ。

 掃除が上手になった、鳴人君。

 ボチボチ、この辺はれんげちゃんに合格点を貰えているようです。


 いい加減な生き方しかして来なかった若者が、少しずつ成長していく。

 来々軒は、そういうお話なのです。



 そして作者は、次の試練や波乱を準備中…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ