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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第13章 鳴人の実家、彼女の手際、家族とラーメン

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78 いやあ、お客、来るわ来るわ

 鳴人の親父さん、こういう突発企画を腕力で押し通す力があります。

 むしろ、そういうのが大の得意のようです。


 今この時期にチラシの差し込み?無理無理。

 あ、ワシの言う事が聞けんのかっ!

 は、はいぃい…


 そうやって取引先や関係企業を散々泣かせてきたんだろう。

 その被害者の一人が、俺…

 お前は自業自得だ。

 言われて当たり前だろう。

 父さん、やっぱりコイツはダメだよね。

 父さん、嫁を連れてきた弟なんだし、今回は顔を立ててやったら?

 そうだよ。この娘がいないと、そもそもラーメン企画なんて出来ないんだろ?


 そ、そりゃそうだ、な。



 二日の、初売りに合わせて開かれた野外ラーメンセールは、大好評だった。

 年末にきていた客が、口コミで広めたのと、クソ親父が印刷所にねじ込んで変更させたチラシの相乗効果で、いやあ、お客、来るわ来るわ。

 俺が麺を茹でる係になったのだが、テーブルセッティングを代えて、茹で鍋の周辺にドンブリをおいて貰うことで、なんとか格好にはなった。

 後の一切合切は全部、れんげちゃんがやったのだが。

 本気の、れんげちゃんモードというものを、初めて見せつけられた。

 早く、正確で、親切で、ずっと先を読み、お客を実に見事に誘導していた。

 行列が出来そうな位に人が並び始めるその片っ端から注文を取りまくり、立ち食いテーブルにまとめて案内し、お金を準備しておくようにさりげなく声をかけつつ、タイミングでも計っているみたいに俺の所にきて、大きなお盆の上に溢れんばかりにラーメンドンブリを乗せると、さっさとお客の所に運んでしまう。

 お客にしてみれば、席に座り、一息ついたと思ったら、もうラーメンが出来てきたようなものである。

 安い旨いよりも、そのスピードさが売り物のファーストフード店なみの速さなのだ。

 しかも、当然ながら新人アルバイトのようなモタモタ感は一切ない。

 丁寧な笑顔とハキハキした応対。それでいて正確で素早い行動。

 いや、確かに、現実にそういうサービス業の“プロ”はいる。

 いるんだけど。

 ラーメンのような手間の掛かる仕事で、このレベルをたった一人でこなすれんげちゃんの本気モードは、改めてスゴイ、と感じた。

 しかも、その間にスープからドンブリの用意からを片手間のように済ませてしまい、具の追加やスープの補充もあっという間に終わらせてしまうのだから。

 いや、俺も、麺を茹でる時間は空くのだから、なにがしかの手伝いはするんだけど。

 この麺、茹で時間が短いし、彼女に教えて貰ったように“麺の花”が咲く、その瞬間を絶対に逃してはならないと、念を押されているし。

 手つきが遅いから、ドンブリに茹で上がった麺を入れる時間は、出来るだけ取りたいし。

 次の麺の準備にも、手間取るし。

 いや、なにより、れんげちゃん、俺に、他の事をさせてくれる暇は残さないつもりのようだ。

 他のことは、全部、自分一人でやるんだという決意のようなものを感じるんだ。

 だから、そのうちに、俺は麺を茹でることにのみに集中し始めた。

 彼女がそのつもりなら、俺は、まずはこの麺茹でを、完璧に覚えてしまおうと思ったんだ。

 そういう意味で、きっと彼女は、俺に任せたのだから。


 新年初売りの目玉が、野外ラーメンセール。

 いいのか、そんな事で。


「旨い、旨すぎる!」

「言葉にならない…」

「最高なんですけど!」

「来年もやらないのかい?」


 …いいみたいです。

 

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