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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第12章 今年最後の営業日、接客って大変、来々軒の評価

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67 判った、判ったよ

 こんなに旨そうにウチのラーメンを喰ってくれる人は、イイ人に違いないヨ!

 そうかぁ?コイツ、絶対に悪い奴だと思うぞ?

 まあ、話だけは聞いてやるか。

 俺は、酒宴には加わらないけどな。

「いやあ、この間は、本当に失礼な事をズケズケと言ってしまった。ここは一つ、水に流して頂きたい」

「いやあ、もう気にしてないですヨ。ま、ま、もう一杯」

「ああ、どうもスイマセン、じゃあ、こちらもご返杯を」

 二人の中年男が、すっかり打ち解けてしまっている。

 親父の悪い癖で、気にいった奴とは酒を一緒に飲むよう勧めるのだ。

 また、コイツもコイツだ。

 お前、仕事で来てるんじゃないのか?

 勧められるままにビール飲んで、盛り上がってるんじゃないよ!

 俺は、最初っからコイツとはウマが合わないと判っていたので、酒宴は遠慮しておいた。

 れんげちゃんと一緒に片づけをしながら、何となく話に加わる程度だ。

「ご亭主の行かれた大手銀行の係長、アイツ、自分の大学の後輩なんですよ。いわば手下、子分みたいなものでしてね」

「ホウホウ」

「この間、ラーメン屋の親父に絡まれたとか愚痴をこぼしてたんで、どこの店だと聞いたら、来々軒の事じゃありませんか。コイツはオカシイ、なにかあると思って覗きにきたわけです」

 やかましいわい。あれだけ来々軒のラーメンをケナシテおいて、今さらノコノコと様子を見に来ましただなんて、調子が良すぎる!

 …事は、まあ、ないか。確かに、あの頃の来々軒のラーメン、マズかったからな。

「へえ、ウチの店の評判、意外な所で立っているもんだネエ」

 親父、それは評判じゃない。バカにされてるだけの話だ。

「こう見えても、自分はラーメンの味を見分ける事にかけては超一級の舌を持っていると心得てます。自分の夢は、ウマイ物を食わせる店を応援したい!という事なんです」

 アンタのは応援とは言わないだろう。ただケチをつけにきているだけだろ。

「幸いな事に、自分は信用金庫の融資係です。ウチの客筋というか、顧客層は、中小企業とか個人経営の店などの、比較的規模が小さい所なんです。ご亭主の行かれた大手銀行では、失礼ながら相手にして貰えなかったでしょう」

「そうなんだヨ。全く、失礼な連中だったヨ」

 まあ、な。でもアンタも相当失礼だけどな。

「ウチなら、ご融資できます。いや、ぜひともさせて頂きたい。自分の社会的使命を掛けても、ぜひ来々軒を応援したいのですよ」

「ホ、ホントウかいっ?!」

 あぁあ、親父、鵜呑みにしちゃってるよ。

 大手銀行で、経営状況を判断されてカネを貸せないと言われたのに。

 “いや、ウチなら大丈夫だ”なんて言葉、どうしてすぐに信用できるんだ?

 大体、この男、最初っからイケスカナイしなぁ…

 と、れんげちゃんが俺の背中を軽く叩く。

 振り返ると、まじまじと俺の顔を見て、軽く、しかし、深く頷く。

 真剣な瞳、確信の籠もった表情。

 判った、判ったよ。

 コイツと話するのは…あまり気が進まないけど。

 カネを借りられるかどうか、とにかくいい機会だとは思うし。

 向こうがその気で来ているのは大きいしな。

 れんげちゃんにさりげなく冷えたグラスを持たされて、俺は小上がりに上がり込んだ。

 ハイ、出番ですよ。行ってきてください。

 えーやだよぉ…

 でも、その瞳で見つめられると、逆らえない、逆らえないんだよなぁ…

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