58 全くもって、いい笑い話である
あれだけ大騒ぎして、いい笑い話でしたね、で済ませる。
この作者、何考えてるんだ?
ふふん、来々軒のラーメンの原価説明に決まってるでしょ。
普通に説明してもツマランでしょ。こういうドキドキなスパイスを入れないとね。
全くもって、いい笑い話である。
れんげちゃん、帳簿を付けるのを手伝いにきたのは方便で、俺を監視するためだったらしい。
とはいえ、手伝おうにもさっぱり判らないし、俺が何をやっているのかすら判らないので、つい感情がナイーブになって、取り乱して泣いたりしてしまったそうだ。
その後、材料の仕入れ先にちょくちょく連絡や調査をしているのを聞きつけたし、夜中にこそこそ出かけたりしたから。
これはもう、来々軒は乗っ取られるし、そうなったら自分はこれからどうしたらいいのかと、一人ぽつんと大鍋の前に座り、せめて親父の茹でているように、来々軒の麺を茹でる方法を思案していたのだという。
照れくさそうに話すれんげちゃんは、もう、いつもと変わらない彼女だった。
大体、一介の大学生がどうしてラーメン屋を乗っ取るっていうんだ?
まあ確かに、今の来々軒の客入りを考えると、そういう事考える輩がいてもおかしくはないだろうが。
それにしても、れんげちゃんの発想の凄さというか、ズレというか…
でもまあ。
俺は彼女が好きで。
彼女も、多分俺の事が好きで。
こうして、俺の前で楽しそうに話をしている彼女となら。
いつかお互いを、恋人だと呼べる日がくるのは、そう遠い事ではないのだろう。
だって。
二人とも、来々軒のラーメンを本当にアイしているのだから。
(続く)
疑って、調べて、証拠を掴んで、問い詰めて、完全な誤解で。
実は彼女も自分を疑っていて、打ち明けて。
ああ、俺たち、同じ方向を向いているんだなと分かって。
うん、青春です。青春ですよ。
来々軒繁盛記は、そういうお話なんです。




