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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第10章 調べる鳴人、疑われる彼女、ラーメンの原価

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54/90

54 気付いてみれば、ごく簡単なことだ

 不正の原因を見つけた鳴人君。

 でも、できれば、見つけたくは、無かったんだ。

 無かったんだけど…

 気付いてみれば、ごく簡単なことだ。

 来々軒のラーメンの麺は、あんなに高い最高級の麺を使っているはずなのに。

 普通のラーメン屋で出している麺と、味わいはそれほど変わってはいない。

 スープや具の美味さで気付かなかったし、ラーメン全体の調和を考えると、まあ、こんな物かと今までは思っていたけど。

 だったら、普通の安い麺で構わないはずである。

 麺の差額は一杯85円。これをごまかせれば、一日34,000円、月に85万の利得が転がり込んでくる計算だ。

 製麺業者は以前からの付き合いだから、ノーマークだったのだが。

 答えは目の前、いつも食べていたラーメンの味の中にしっかりあったんじゃないか!


 スクーターを飛ばしてアパートへひた走りに走りながら。

 俺のメット越しに、れんげちゃんの影がちらついて離れない。

 すでにピカピカに磨き上げてあったカウンターに、俺の目の前でさらに磨きを掛けていた、れんげちゃん。

 「美味しいラーメンあります」と店の前で、弾けるような笑顔でボードを掲げていた、れんげちゃん。

 わざわざ店の上の部屋に引っ越してきて、一生懸命に働いていた、れんげちゃん。

 試食と称して、自分で茹でた、あの偉大なヴォーカリストのような麺を、具材なんか消し飛んでしまうような味の麺を茹で上げた、れんげちゃん。

 「ご予約席」と札を立てておいた、俺がいつも座る席に、手を引いて連れていったれんげちゃん。

 俺が来々軒に勤めると言った時、感極まったかのように俺を抱きしめた、れんげちゃん。

 掃除の仕方から具材の切り方まで、文字通り手取り足取り教えてくれた、れんげちゃん。

 帳簿を作るのをわざわざ手伝いにきてくれた、れんげちゃん…

 彼女は、いつでも真っ直ぐだった。

 彼女は、いつでも真剣だった。

 でも、それがすべて計算ずく、いや、計算すらしていない行動だとしたら。

 だとしたら、俺はどうすればいいんだ。

 彼女を、親父を、そして来々軒を、俺はどうすればいいのだろうか…


 アパートに戻るスクーターの上で、浮かんでくるのは、れんげちゃんとの数々の思い出。

 ベタです。ベタなんですが、当然、そういう展開にします。

 そういうもんです。そういうもんですよね。そうじゃなきゃダメですよね?


 創作って、楽しいですね。

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