54 気付いてみれば、ごく簡単なことだ
不正の原因を見つけた鳴人君。
でも、できれば、見つけたくは、無かったんだ。
無かったんだけど…
気付いてみれば、ごく簡単なことだ。
来々軒のラーメンの麺は、あんなに高い最高級の麺を使っているはずなのに。
普通のラーメン屋で出している麺と、味わいはそれほど変わってはいない。
スープや具の美味さで気付かなかったし、ラーメン全体の調和を考えると、まあ、こんな物かと今までは思っていたけど。
だったら、普通の安い麺で構わないはずである。
麺の差額は一杯85円。これをごまかせれば、一日34,000円、月に85万の利得が転がり込んでくる計算だ。
製麺業者は以前からの付き合いだから、ノーマークだったのだが。
答えは目の前、いつも食べていたラーメンの味の中にしっかりあったんじゃないか!
スクーターを飛ばしてアパートへひた走りに走りながら。
俺のメット越しに、れんげちゃんの影がちらついて離れない。
すでにピカピカに磨き上げてあったカウンターに、俺の目の前でさらに磨きを掛けていた、れんげちゃん。
「美味しいラーメンあります」と店の前で、弾けるような笑顔でボードを掲げていた、れんげちゃん。
わざわざ店の上の部屋に引っ越してきて、一生懸命に働いていた、れんげちゃん。
試食と称して、自分で茹でた、あの偉大なヴォーカリストのような麺を、具材なんか消し飛んでしまうような味の麺を茹で上げた、れんげちゃん。
「ご予約席」と札を立てておいた、俺がいつも座る席に、手を引いて連れていったれんげちゃん。
俺が来々軒に勤めると言った時、感極まったかのように俺を抱きしめた、れんげちゃん。
掃除の仕方から具材の切り方まで、文字通り手取り足取り教えてくれた、れんげちゃん。
帳簿を作るのをわざわざ手伝いにきてくれた、れんげちゃん…
彼女は、いつでも真っ直ぐだった。
彼女は、いつでも真剣だった。
でも、それがすべて計算ずく、いや、計算すらしていない行動だとしたら。
だとしたら、俺はどうすればいいんだ。
彼女を、親父を、そして来々軒を、俺はどうすればいいのだろうか…
アパートに戻るスクーターの上で、浮かんでくるのは、れんげちゃんとの数々の思い出。
ベタです。ベタなんですが、当然、そういう展開にします。
そういうもんです。そういうもんですよね。そうじゃなきゃダメですよね?
創作って、楽しいですね。




