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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第9章 手伝う彼女、教える鳴人、来々軒の帳簿

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46 彼女は、良い生徒だった

 お昼ご飯、作らなきゃ。

 冷蔵庫にも、冷凍庫にも、ロクな食材がないですね。

 さすが、男やもめの一人暮らしですね。

 大丈夫です。こんなこともあろうかと、事前に準備してますから…


 スマン、作者も知らなかったよ。

 鳴人、自炊してる設定だから、食材はチャンとあるもんだと思ってた。

 来々軒の常連だもんな。晩飯は、殆どラーメンだもんな。

 ロクな食材、置いてないよな。

 さすが、れんげちゃん。

 れんげちゃん、珍しくお昼ご飯は和食でまとめてきた。

 白いご飯に濃緑のわかめの味噌汁、紅鮭の焼き物に、綺麗な黄色の玉子焼き、青々としたキュウリの浅漬け。

 普段の来々軒のまかないは、必ずといっていいほど中華風なのに。

 れんげちゃん、こういうのも作れるんだ…

「お口に、合いますか?」

 ちょっと心配そうな彼女。

「いや、美味しい、美味しいよ」

 以前に試食した、彼女の茹で上げた麺の入ったラーメンの、あの圧倒的な味覚の迫力は、ない。

 だけど、なんとも暖かで家庭的な味。庶民の味というか。

 第一、れんげちゃんの手作りが、俺にとって不味いはずなんてないじゃないかッ!

「ああ、良かった。わたし、家で食べる具材はあまりお金掛けてないから…」

「いや、料理は、ラーメンは具材だけじゃないよ。それもあるけど…最後は腕だと思うよ」

「そうですよねッ!安くて新鮮な具を、いかに美味しく仕上げるか、それがラーメン屋さんの心意気ってものですよねッ!」

 れんげちゃん、ラーメンの話になると、目がイキイキしてくる。

 本当に、心からラーメン、好きなんだなあ…


 午後からは、いよいよ今年度分の伝票入力を始める。

 新規の取引先も増えたし、なにより枚数が多い。

 かなり時間が掛かりそうだ。

 れんげちゃん、明日のお店の支度に掛かるまでは時間があるとかいって、なにか手伝いたそうな顔をしている。

 ちょっと不安だったが、入力の終わった去年、一昨年の伝票をスクラップブックに張りつけて貰う事にした。

 伝票を仕訳項目ごとに分けて、上に項目を書いた紙を乗せておく。

 スクラップの方にも、上の方に項目を書き込んで、後は日付順に並べて張りつけて貰えるようにしておいた。

 正直、自分でやった方が、こんな下準備もしなくてすむのだが。

 でも、彼女の「やりたい!」という気持ちを、むげに断るのもなんだか悪くて。

 …そういえば、彼女も、仕事場では、俺の事を同じように思っていたのかも知れないな。

 いや、今でも、そう思っているかも知れない。

 そう思うと、スクラップに張りつける方法を教える俺の口や手にも、自然に優しさや厳しさが浮きでてくる。

「いや、それは違うよ。ほら、項目を良く確認して」

「先に日付順に並べるんだ。パソコンの方は日付順に自動的に並べ替えられるけど、伝票は人の手でやらないとね」

「それじゃ糊の無駄遣いだよ。…そうそう、正確に、綺麗に、誰が見ても分かるようにしておくのが基本なんだ」

「…うまいうまい。初めてとは思えないよ」

「れんげちゃん、才能あるよ。じゃあ、この分は任せてもいいかな?」

 彼女は、良い生徒だった。

 やる気があって、手が早くて、仕事を丁寧にしようという気構えがあった。

 ただ、そそっかしくて、先走って、ちょっと目を放すと理解していないまま変な事をしようとするクセがあった。

 それでも、たかが伝票貼りである。

 俺の目の届く範囲で手伝って貰う分には、なんの問題もない。


 今年の上半期を一気に片づけ、下半期もしばらくは順調に進み。

 いよいよ、れんげちゃんが店に来た頃の月の入力である。

「ハハハ…」

 まったく、帳簿を付けるという事は、つまるところその店の中が丸見えになる、というのは本当の事である。

 今まで、細々としか取引していなかった製麺業者の納入回数も量も、しり上がりに増えている。

 具材も、スーパーのレシートだったのが、専属の農家や加工業者に代わり、きちんとした領収書を発行してくれている。

 なにより、宅配便への配達料(仕入れ項目)が、かなりのウエイトを占めている。

 取引を始めたばかりという事もあり、各業者に対して、こちらで運送費を負担しているのだ。

 月末に、まとめて支払っている金額は、決して馬鹿にならない。

 だが、富士山麓から湧き出すという名水に関しては、配達料のみだった。

 れんげちゃんに聞いてみると、そこのイーグル宅配便のドライバーが、サービスで汲んできてくれるのだという。

 普通のお客さんにはやらない、特別サービスだと何度も強調していたのだそうだ。

 へええ、決してタダというわけじゃないけど、そういう配慮というか、人間臭いというか、お客本位な事もしてくれるんだ。

 たかが水でも、買うとなると、かなり高い。

 ナベさんに、後でお礼しておかないとな。

 次は人件費。

 れんげちゃんの給料は、当然ながら、相当高い。

 そして最初の一カ月は時給だったが、次の月からは月給に代わっている。

 そりゃそうだよ。あの働き振りなら、当然だよね。

 で、親父の取り分(事業主貸)は、あれ、今までと同じ、生活費ギリギリって所か。

 はっきりいって、れんげちゃんの半分じゃないか。

 親父、なんか勘違いしてるな?

 これは、決算書作ったら、相談しないとな。

 スクラップブックに、入力済みの伝票を貼り付ける作業。

 今でも、やる人はやるはず。

 青色申告の時に、経理の証拠として提出を求められる場合がありますので。

 今は、電子化でいいはず。便利な時代になったモノですね。


 いよいよ、繁盛しだした頃からの会計状況。

 当然ですが、れんげちゃんは高級取りになりましたね。

 で、親父は今までと同じ。

 ん?

 来々軒、儲かってるでしょ?

 あれ、何か、間違えてますよね。

 ええ、何か、間違えてますよ。

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