43 いや、そんな涙ぐまなくてもいいんだって
パソコンの置き場所。
当時は、ノートパソコンなんてものはありませんでした。
パソコンはデスクトップが当たり前で、とにかく、かさばってましたね。
OSは自分で組み込むのも、当たり前。
WINDOWS、最初からは入ってないんですよ。
しかも、フロッピーがまだバリバリの現役な時代。
あの、それ、なんですか?
そうか、フロッピーを知らないのか…
テーブルの上を片づけて、パソコンを設置する。
その準備をしている間に、れんげちゃんには伝票の整理を頼んだ。
「親父さん、年度ごとに分けてくれているから、あとは同じ伝票を揃えておいてくれればいいよ」
「ハイッ!」
嬉しそうに頷くと、早速作業に取りかかってくれた。
いいなあ、れんげちゃん、素直で可愛くて。
…なんて妄想に取りつかれている場合ではない。
さすがに中古品のパソコンなので、OSが組み込まれていないのだ。
付属の袋の中に、確かあったはず…
おっとこれこれ。
なにぃ、CD-ROMだとっ!このパソコン、そんなものついてないぞ!
あの中古屋、バカじゃないのか。使えもしないもの添付して…
おっと、フロッピーあるじゃないか。こっちを使えってか。
…時間、かかるよなあ。
電源をいれて、マシンを立ち上げている間。
ちょっと視線を上げると、れんげちゃん、なにか悩んでいる様子。
「どしたの?」
「あの、これ、どうやって分けるんですか…?」
手にしていた領収書を見ると、店の名前と金額しか載っていない。
「ああ、こういうのは“不明”って事で、別の山にしといて。後で俺、調べるから」
「は、はい」
手が空いたので、れんげちゃんの仕訳した伝票にも、ざっと目を通す。
パラパラっとめくると、案の定、違う項目の伝票がボロボロ出てきた。
そうだよな、きちんと教えてないもんな。
「れんげちゃん、コレとコレ、違うよ。ほら、品名が違うし、伝票の形も、微妙に違うでしょ」
「あっ、ホントですね。スイマセン」
いや、そんなに恐縮しなくたって。
…あれ?
こういう事、どこかであったような。
そういえば、俺が来々軒でれんげちゃんに仕事を教わっていた時に、同じように言われてたっけ。
そっか、あの時、れんげちゃん、俺の事をこういう風に思っていたのか。
「いや、いいんだ。これは、俺の仕事なんだし。手伝ってくれるその気持ちだけで充分だよ」
「鳴人さん…ありがとうございます…」
いや、そんな涙ぐまなくてもいいんだって。
別に怒っているわけじゃないんだ。
思わず俺も、笑顔で彼女の肩を叩いてしまった。
伝票の仕分け方。
これは、教えるというより、任せた鳴人が悪い。シロウトには、無理デス。
ただの鳴人の部屋の中での出来事なのに、随分と内容が濃い。
まとめて掲載しようと思ったんですけど、短めにカットして、少しでも読みやすくしますね。




