39 そっか、親父とれんげちゃん、親子なのか
鳴人、絶好調!
すっかり、来々軒に馴染んだようです。
そうか、俺、親父さんに気に入られたから、ここでバイトしてるんだもんな。
れんげちゃんと、一緒に働いてるんだよな。
そして、れんげちゃんは親父の娘。
うふ、うふふふ…
今日一日を、俺は気持ちよく働いた。
手つきが自然でスムーズに動く。
親父の茹で上げる麺にタイミングを合わせてスープを注いでいく手つきに、無駄はない。
れんげちゃんから注文が入った時に、少し待つ余裕さえ出てきた。
親父が麺を茹で上げる、その少し前からメインスープを注ぎ始める。
このコツとタイミングである。
スープも、調味用とメインのスープが上手く混ざって、我ながらイイ感じである。
そこに親父の茹でた麺がチャッチャッと注がれる。
入れ始めると同時に俺の手も動き、次のドンブリ、その次とドンドン注いでいく。
スープを入れる俺の手の方が、当然麺を茹でる親父の手より速いため、だいたい麺が半分入った所で俺の手が空く。
空いた所で、具を盛りつけていく。
れんげちゃん直伝の、両手を使っての盛りつけも様になってきた。
二回の動作で、アツアツのラーメンの上に具の美しい盛りつけの花を咲かせる。
モチモチのナルトと、味の染みた歯ごたえのあるメンマ。
中央にシャキシャキなヒゲネギ、横に旨味たっぷりのチャーシュー。
我ながら、本当に美味そうなラーメンである。
その動作を、流れるように次のドンブリへと繋げていく。
そこに颯爽とれんげちゃんが現れて、大きなお盆の上にドンブリを乗せていく。
親父が麺を乗せ終えて。
俺が具材を乗せ終えて。
れんげちゃんがドンブリをお盆に乗せ終えて。
客席にお届けして、一丁上がりである。
「お待たせしましたっ!醤油三丁味噌二丁ですっ。ごゆっくりどうぞっ!」
れんげちゃんの声が店内に可愛らしく響き、それがまた来々軒を加熱していく。
「御会計、二千五百円になります。はい、ちょうどお預かり致します」
「ありがとうございましたっ!」
「アリガトヤシタッ!」
「ありがとっシタッ!」
れんげちゃんの声に引かれて、親父と同時に俺も声が出る。
綺麗なハーモニーを奏でる。
今日は、調子がいい。
なんか、すごぶる調子がいい。
手も動くし、声も出ている。
なにより、やる気がスゴイ。
我ながら、驚くほどだ。
そっか、親父とれんげちゃん、親子なのか。
そして、俺は親父に気に入られているんだ。
うふ、うふふふ…
「鳴人君、今日はご機嫌だね」
親父が、なんか嬉しそうに俺を見ている。
俺の手際が良くなってきたので、調理場にも余裕が生まれてきたようだ。
「い、いや、そんな事ないですけど…」
と言いつつ俺は、にやけた顔を崩せないでいる。
「そっか、明日は定休日だからな。いいネエ、若い人は。遊ぶ楽しみがあって」
「いい、いいえ、俺、別に仕事つまらないわけじゃないですし…」
「まあまあ、無理しなくったっていいんだヨ。若いうちは大いに遊ぶのも結構じゃないか。そうだ、今晩は飲むか?」
「ええ、いっすよ」
定休日前に親父と飲むのは、なんか恒例になってきた。
ううむ、これはまた、良い傾向だよな。
…おっと、れんげちゃんのオーダーだ。
「マスター、醤油二丁塩一丁ッ!」
「アイヨッ、醤油二丁塩一丁ッ!」
「オッケー、醤油二丁塩一丁ッ!」
俺も、二人に合わせて元気な掛け声を上げた。
店員さん同士の雰囲気は、客にも敏感に伝わります。
いくらラーメンが旨くても、店員同士がギスギスしてると折角のラーメンに集中出来ませんよね。
ラーメンは、楽しく美味しく頂きたいものです。




