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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第8章 恋のライバル、吟味する彼女、親父の過去

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37 なんでオマエ、彼女に気に入られてるんだよっ!

 荷物を配達に来て、そのまま外まで相手を呼びつける配達員。

 ダメだろ、そりゃ。


 ウルセェ!コイツはいいんだよ。

 クソォ、なんでこんな奴がれんげちゃんの側にいられるんだよ!

 頭にくる、頭にくるぞぉ!


 恋は盲目。激しくぶつかりに行きます。

 男の子だもん。ライバルには敵意をむき出しにしないとダメでしょ?

 今の時代は、そういうものじゃない。そうなんですか?

 来々軒繁盛記は、けんかをやめて ふたりをとめて な時代の作品なんです。

 道理で、人気が…(略)




「毎度様ですっ!イーグル宅配便ですっ!」

 開店前の忙しい時に、裏口から大きな声。

 スープの支度に忙しそうなれんげちゃんや、汗をかきながら麺の下ごしらえに余念の無い親父さんの代わりに、俺が荷物を受取りに行った。

「いつもご苦労さまです…」

 はんこを押そうとする俺の手を、配達員、むんずと掴む。

「えっ?」

 昨日の夜の、配達員だった。

 そのまま店の外に連れ出される。

「ちょっと、なんなんですか。俺、忙しいんですけど」

 まったく、最近ようやく具を切る手つきが様になってきて、れんげちゃんのダメだしが少なくなってきた所だというのに。

 それでも、まだ全部の支度は出来なくて、最後の方はれんげちゃんが手伝っている位なのに。

「ちょっと聞きたい事があるんだ。すぐ済む」

「なんです?」

 配達員、真顔だ。

 まあ、お店も世話になっていない訳じゃないし、あんまり邪険に出来ない。

「オマエ、なんでれんげちゃんと一緒に住んでるんだ?なんで一緒の店で働いてるんだ?なんで一緒に銭湯行ったりするんだ?」

「なんでって…」

 いや、一緒に住んでるわけじゃない「一つ屋根の下」には住んでるけど。

 いや、好きで一緒に働いてるわけじゃ…あるか。

 いやでも、俺が積極的にそうしようと思ったわけじゃなくて、成り行きで…

 いや、でも、銭湯の一件は、そうかも知れない。

 いやしかし、それは「女性の夜の一人歩きは危ない」から、ただそれだけで。

 い、いや、いまはただそれだけ、なのだが。

 いや、だが、将来はそれだけじゃないような気もしないことも、ない、かなぁ…

 いや、しかし、それはそれという話もあって…

「なんで、でしょうね?」

 なんて答えていいのか判らず、思わずそう言ったのだが。

「なんだそりゃぁ!」

 いきなり両手で胸ぐらを掴まれた。

 さすがに配達員。重いものを持ち慣れているせいか、腕力がある。

「俺なんかなあ、あのラーメン食って以来、彼女の事が忘れられなくってなあ、ラーメンの事必死に勉強して、彼女に話を合わせて、全国各地の農産物から、来々軒のラーメンに合いそうな具材を厳選して紹介したんだぞ!」

 そ、そりゃスゴイ。

「しかしなあ、彼女、にっこり笑って“うーん、ちょっと合わない気がします”とか言って、直接自分で産地に旅行して、ネギやナルトやメンマや塩や水を自分で選んで俺たちの宅配便に託してるんだっ!それじゃあ俺の面目丸潰れだろうがっ!」

 こ、この人も、こだわってるなあ。

 しかも、そのこだわりを、れんげちゃんに全否定されてんのか。

「それを、それを、それを!なんでオマエ、彼女に気に入られてるんだよっ!」

「…気に入られているかどうかは、知りませんよ?俺たち、まだ付き合ってるとかそんな関係じゃないですし」

 配達員の両手をむんずと掴んで、ゆっくりと振りほどく。

 アンタも配達で鍛えているんだろうけど、俺も元は工事現場の警備員だ。

 体力勝負なら、そうそう負けない。

「う、うるせぇ!オマエは“鳴人さん”だろうが、俺は“ナベさん”って呼んで貰ってるんだぞ!」

「よ、良かったですね」

 こんな事してる場合じゃないのに。

 早く仕事に戻らないと、れんげちゃん、俺の分まで下ごしらえ片づけちゃう。

 親父さんもれんげちゃんもあの通りの性格だから、頭ごなしに怒鳴ったりはしないけど。

 でも、それはそれで、俺にもプライドというものがあるし。

「だいたい、れんげちゃんに取り入ろうとして、押しかけアルバイトで潜り込んだ口のクセに」

 押しかけ…たのはれんげちゃん、だったよなあ。

 親父さんも、そう言ってたし。

「そりゃ違いますよ。俺を雇いたいって言い出したのは、親父さんですから」

「ぬぅわにぃ!娘を射止めるために、親父に付け入ろうって魂胆かっ!」

「やっぱり、そうなんですか?」

「…はぁ?」

 配達員のあんちゃんは、開いた口を閉めるのを忘れた顔で、俺を見つめた。

「いや、俺、まだ親父さんとれんげちゃんの関係、聞いてないんですよね。親族だとは思うんですけど」

「だ、だって、こんな小汚い店に、あんな可愛い娘が勤めに来るかぁ?」

「あのぉ、やっぱり“小汚い”でしょうか…」

 俺の後ろで響く、可愛い声。

 やっぱり、れんげちゃん、様子を見に来た。

 まあ、荷物受け取るのに何分も掛けていちゃ、そりゃイワレルに決まってる。

 ラーメン屋の基本は「丁寧に正確に、そして素早く」だからな。


 ナベさん。 

 ツイツイ、余計な本心を口にして、れんげちゃんに「あのぉ…」と言われるまでが1セット。

 コイツも、それなりに書きやすいんだよね。

 放っといても自分から顔を出しに来て、勝手に暴れまわります。

 作品的には、メインじゃないけど大事なキャラですね。


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