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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第18章 皇龍のラーメン、彼女の立場、麺打ちの修行 

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123 皇龍

 ゆっくりペースで1時間程のドライブは、まずまず快適だった。

 なんたってれんげちゃんを助手席に乗せてのドライビングだ。出発時の気まずい雰囲気も、途中で飲み物を買いにコンビニに立ち寄った頃にはすっかり晴れ渡っていた。

 ラジオでニューミュージック特集をやっていて、その話で道中は盛り上がった。

 有線放送で繰り返し聞かされてすっかり覚えてしまったというナツメロ風の歌を、ラジオから流れる曲に合わせてきれいな声で歌ってくれたりして、俺は彼女の素顔の一面を知る事ができたのだ。

 道中で彼女から聞いた行き先は、やはりというかなんというか、超有名なラーメン屋さんだった。

 都心からやや離れた湾岸沿いの工業地帯の中程に、午前11時前だというのに、すでに長い行列の出来ている店が目的地だ。

 ナビに吹き込んだ免許証の入力先という事は、彼女のお母さんが亡くなる前の住所という事でもあるわけで。

 彼女の仕事の腕前からすれば当然だけど、れんげちゃんは元から、お母さんと一緒にラーメン屋さんに勤めていたわけか。

 道は入り組んでいたが、さすがに最新型のナビは性能からして違う。大まかな住所と店名を入力するだけで、細かい道筋までしっかりナビゲートしてくれた。

 店の近くには、JRは通っていない。来るなら車かタクシーか、後は停留所から20分程歩かなければならないと、ナビが目印に指定したバス停が、問わず語りに話してくれた。

 なるほどね。だかられんげちゃん、レンタカーを借りたのか。

「駐車場完備ですので、そのまま右に曲がってください」

 勝手を知っている風の彼女の指示に従って、建物の隣りにある立体式の駐車場を一気に3Fまで駆け上がる。

 しかし、噂以上に大きい店だな。

 ラーメン店というよりは飲食ビルといった出で立ちで、広さもちょっとしたパチンコ店並みはありそうだ。もしかすると、既存の建物を改築したのかもしれない。

 三階建ての内、一階と二階までが飲食フロアになっており、三階は事務所その他という形のようだ。二階はラーメン以外の飲食も出来るようになっているみたい。

 ざっと外から見た感じだと、席数は相当なものだと思う。この建物の規模だと、ワンフロア100席位だろうか。これに二階部分もあるから、その倍のお客を入れる事が出来るというわけだ。

「“皇龍”。日本最強のラーメンチェーン店を自負するお店の一つです」

 やや緊張したおももちで、車を降りたれんげちゃんが、俺の側に来て言う。

 まるで、俺の覚悟でも問うかのように。

「ああ、よくラーメンマップとかで宣伝している店だよね。必ず上位にランクインする店だけど、へえ、本店はこんなに大きかったんだ」

 三階建て駐車場なのに、ご丁寧にエレベーターまでついてら。折角だから遣わせて貰おう。

「ここ、本店じゃないですけどね。“皇龍”を名乗れる支店は、日本全国で今のところ四店しかありません。宗主は、自らが課した厳しい修行をこなし、しかも自らに絶対の忠誠を誓う者にしか、直営店を任せませんから」

 なんだそりゃ?

 …まあ、れんげちゃんの方が、内情には詳しそうだからな。お母さんが亡くなった後で来々軒に来たという事だから、彼女ほどのラーメン職人であっても、いや、だからこそ、こんな大きなお店を辞めざるを得ない事情があったんだろうな。

 でもねぇ、ラーメン通を気取る俺としては、繁盛店のラーメンはぜひとも食べておきたいんだよね。今後の参考になるかもしれないし。

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