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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第18章 皇龍のラーメン、彼女の立場、麺打ちの修行 

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120 ごめんくださーい、お隣さんでーす

 一段落ついての、店の定休日。

 今日は、一日中寝ていようと思っていたのだが。

 朝から、俺は可愛らしいノックの音で目を覚まされた。

「ごめんくださーい、お隣さんでーす」

 女の子の声。

 って言っても、ロクな知り合いのいない俺に、こんな優しいイタズラを仕掛けてくれるのは、彼女しかいない。

「ちょっと待ってて」

 いくら何でも、下着姿では出られない。

 ラーメン屋修行のお蔭かどうかは判らないが、すっかり素早くなってしまった身支度を整えて、俺は玄関を開ける。

「おはようございます、突然スイマセン」

 ジーンズに革ジャン。

 普段はお団子にしている髪を解いて、今日はポニーテールに結い直している。

 いつもの店での感じとは、全然違うれんげちゃん。

 オフ姿の彼女も、また別の可愛らしさがあって、いいよなぁ。

「いや、別に…まあ、上がって」

 うわずりそうな声をなんとか抑えて、平静さを装う。

「スイマセーン」

 ちょっとウキウキとしたハイトーン。いつも元気だけど、今日はかなりご機嫌の様子だ。

 ホント、どうしたんだろ?

 いや、来てくれるのはいつでも大歓迎だし、こんな風に気軽に部屋を尋ねてくれるのは、俺を信用してくれている証しなんだから嬉しい限りだけど、さ。

 でもまあ、まだ、そんな間柄って訳でも、無い事もないけど、有る事も、無いような…

 いやでも、まあ、用事があるから来るわけで、無いから来ないというのはそれも少し寂しいわけで…

「どうしたんですか?」

 勝手知ったる我が家みたいに俺の布団を畳みながら、不思議そうな顔で俺を見るれんげちゃん。

 って、オイオイ、どうして俺の部屋のおさんどんを始めちゃうわけ?

 いや、嬉しいけど、とっても嬉しいんだけど、でもまあ、まだ、そんな間柄ってわけでも…無いことのないような、あるような…

「鳴人さん、今日は何かご予定あります?」

 手を休めずに動かしながら、背中越しに尋ねてくるれんげちゃん。

 もう、一家の主婦然として、冷蔵庫まで開けてるし。

「い、いや、一日、寝てるつもりだったけど…」

 苦にはならないとはいえ、慣れない仕事続きで、結構疲れてもいるし。

 いや、親父さんやれんげちゃんと一緒にラーメンを作るのは、とても楽しいんだけどね。

 だから、幾らでも頑張れるよ、というのは、まあ、言い過ぎだけど、さ。

 でも、いつかはきっと、君のために君を納得させられるようなラーメンを作れようになりたいし。

 だから、仕事が辛いとは出来ないとかは、なるべく言いたくないし、言わないようにも心掛けている。

 けど…なんで?

「じゃあ、今日はわたしに付き合って下さいませんか?」

「え? いいけど…どこ行くの?」

「そうと決まれば、さ、早く支度支度!」

 やけに楽しそうに、れんげちゃんは朝御飯の支度を始めた。

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