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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第16章 来々軒の常連、親父の若い頃、誰のためのラーメン

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104 ダメ、ですか…?

 いつもの銭湯からの帰り道。

 鳴人君の頭の半分は、ラーメンの事。

 そして、もう半分は、れんげちゃんの事。


 うん。男なんて、若い男なんて、若いんですから、そんなもんです。

 まあ、ラーメンとれんげちゃんは切っても切り離せないので、ある意味正しいんですよ。

 いつもの銭湯の帰り道。俺とれんげちゃんは肩を並べて、暗い夜道を歩いていた。

 工場建設の予定地になったまま、ずっと空き地のままの土地は、立ち枯れたススキの残骸に被われている。

 春になれば、また天を目指して雑草が生え出てくるのだろうが、今は深く夜闇をたたえているだけだ。

 この辺は痴漢が出やすい所で、だからこそ俺はれんげちゃんのボディガードをかねて一緒に銭湯にいくようになったのだが、こうして二人で歩いていると、傍目からは新婚の夫婦の銭湯帰りに見えなくもない。

 彼女の髪から立ち上る香りが、密やかな俺の楽しみでもあったのだが。

 でも、結局、俺が彼女と並んで歩けるのはこういう時だけだ。

 仕事に関しては、ラーメンに関しては、俺は遠く、彼女に及ばない。

 そしてそれは、これからも恐らくずっと、縮まる事のない距離なのだろう。

「あの、鳴人さん、帰ってから何か予定がありますか?」

 不意に、遠くから呼びかけられた時のような声で、れんげちゃんが俺を見上げながら尋ねてきた。

「いや、別に何も?」

「良かった。ちょっとわたしの部屋に寄って頂けませんか?見せたいものがあるんですけど」

「……今から?」

 こんな夜分に、独り暮らしの女の子の部屋に立ち寄るというのはチョット…

 なんて、殊勝な考えがチラッと胸をよぎった。

 だがしかし、俺と彼女との遠い距離感を考えると、それで別にドウコウなるとも思えない。少なくとも俺はそう思っているし。

 いやしかし、俺は一応男なんだし、理性のタガがいつも締まっていると保証できるわけでもないし。

 でもしかし、彼女の方から誘ってくれたわけなんだから、その後でドウニカなっても、それはそれで責任を取ればいいだけの話だし。

 まてまてよ、幾られんげちゃんでも、その辺の常識はさすがに心得ているだろうから、これは彼女自身が望んでいるんだと考える方が筋が通っているだろうし。

 いやちがう、彼女にとって、俺はつまり“男”とは見られていない、無害な安全パイみたいにしか思われていないという確率の方が高いんじゃないのか?

「ダメ、ですか…?」

 小柄な彼女が首を傾けて、上目づかいに俺を見つめている。

 可愛い…

 可愛すぎるっ!

 薄暗い街灯に照らしだされたその小さな素顔が、俺の脳天をグラッと揺さぶった。

「いや、全然構わないよ」

 背中から滴り落ちる汗の冷たさを感じながら、俺は息を飲み込むように頷いていた。

 い、い、今から、女の子の部屋へ…?

 誘われてるのか、相手にされていないのか、何か罠でもあるのか、もしかして好かれているのか…

 色々と、考えちゃいますね。

 うん、青春ですね。

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