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来々軒繁盛記 ~ 寒くなったねぇ。ここで、熱いラーメンを一杯、食べていきなヨ  作者: 白河夜舟
第16章 来々軒の常連、親父の若い頃、誰のためのラーメン

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103 いまさら、そんな事は言えなかった

 常連さんは、それなりに通ってくれる。

 一見さんは、マズければ来ないぞと、見限ってくる。

 それでも変わらずに、ラーメンを作り続ける親父。

 まあ、親父の店だからな。部外者というのは、俺も同じなわけで。


 それでいいのか、親父?

 その日一日中、俺はずっと親父の言っていた事を考え続けていた。

 女房と二人でラーメンを作っていたのは昔の話で、離婚した後も、他に出来る事が無いからラーメン屋を続けていたんじゃなかったのか。

 だったら、なんで二人でやってきただなんて拘るんだ?

 大体、一人で切り盛りしてた頃の親父、そんなに楽しそうにラーメン作っていたようにはとても思えなかったぞ。

 値段へのこだわりはともかく、あのクソ不味いラーメンに味へのこだわりがあったなんて、未だに信じられないし、それはあの頃の経営状態、客の入りを考えれば判ることじゃないのか?

 だからこそ、ラーメンが好きだったという奥さんは、親父を見限るようにして離婚(ワカ)れたのだろうか。

 それでも、親父は奥さんの事が忘れられなくて、ずっと自分がこだわっているというラーメンを作り続けてきたのだろうか。

 だとしたら、それはアイなんかじゃない。

 ただの女々しい意地でしかないんじゃないのか?


 最後の、とも呼べないような時間帯でお客が店を出てから閉店まで、ずっと店の中はガランとしていた。

 今日の売り上げは四十食。全部食べてくれたのは、あの作業員風の三人だけだった。

 スープも麺も、仕込みは普段の半分の量なのだが、かなり余ってしまっている。明日からはこの半分の分量で良さそうだ。

 確かに親父のいう通り、おれは親父のように麺を茹でる事が出来ているようだ。

 だが、客の舌はあくまでも敏感であり、その結果が今の店の現状なのではないのか?

 やはり、親父がケガをしたときにそう言ったように、治るまで店を休んだ方が良かったんじゃないのか?

 でも、いまさら、そんな事は言えなかった。

 この店は、親父がずっと続けてきた店なのだし、その親父が「これでいい」と言っている以上、俺は何も言えないから。


 そして、そんな俺を、ずっとれんげちゃんは見つめていたのだ。

 鳴人君と同じように、れんげちゃんも色々と考えているんです。

 そして、カギは、彼の成長とやる気ですよね。


 うん、わたしの、出番ですね。

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