103 いまさら、そんな事は言えなかった
常連さんは、それなりに通ってくれる。
一見さんは、マズければ来ないぞと、見限ってくる。
それでも変わらずに、ラーメンを作り続ける親父。
まあ、親父の店だからな。部外者というのは、俺も同じなわけで。
それでいいのか、親父?
その日一日中、俺はずっと親父の言っていた事を考え続けていた。
女房と二人でラーメンを作っていたのは昔の話で、離婚した後も、他に出来る事が無いからラーメン屋を続けていたんじゃなかったのか。
だったら、なんで二人でやってきただなんて拘るんだ?
大体、一人で切り盛りしてた頃の親父、そんなに楽しそうにラーメン作っていたようにはとても思えなかったぞ。
値段へのこだわりはともかく、あのクソ不味いラーメンに味へのこだわりがあったなんて、未だに信じられないし、それはあの頃の経営状態、客の入りを考えれば判ることじゃないのか?
だからこそ、ラーメンが好きだったという奥さんは、親父を見限るようにして離婚れたのだろうか。
それでも、親父は奥さんの事が忘れられなくて、ずっと自分がこだわっているというラーメンを作り続けてきたのだろうか。
だとしたら、それはアイなんかじゃない。
ただの女々しい意地でしかないんじゃないのか?
最後の、とも呼べないような時間帯でお客が店を出てから閉店まで、ずっと店の中はガランとしていた。
今日の売り上げは四十食。全部食べてくれたのは、あの作業員風の三人だけだった。
スープも麺も、仕込みは普段の半分の量なのだが、かなり余ってしまっている。明日からはこの半分の分量で良さそうだ。
確かに親父のいう通り、おれは親父のように麺を茹でる事が出来ているようだ。
だが、客の舌はあくまでも敏感であり、その結果が今の店の現状なのではないのか?
やはり、親父がケガをしたときにそう言ったように、治るまで店を休んだ方が良かったんじゃないのか?
でも、いまさら、そんな事は言えなかった。
この店は、親父がずっと続けてきた店なのだし、その親父が「これでいい」と言っている以上、俺は何も言えないから。
そして、そんな俺を、ずっとれんげちゃんは見つめていたのだ。
鳴人君と同じように、れんげちゃんも色々と考えているんです。
そして、カギは、彼の成長とやる気ですよね。
うん、わたしの、出番ですね。




