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それから
それからしばらく経って、僕は『僕』をやめることにした。
相方がいなくなって三年。
僕は、再び『私』になった。
芸人仲間は色々と察していただろうが、特に何も言わなかった。
ただ、倉田先輩だけは「お前は強いな」と言って頭を撫でてきた。
振り払おうと思ったのに、涙が止まらなかった。
そして野坂はといえば、地方に住んでいるにも関わらず、よく私の出るライブに来てくれている。
「あんまり来なくていいよ。実家の仕事もちゃんとしないと」
ある時、出待ちをしていた彼女にそんな事を言ってみたが、「ちゃんとやるべきことはやっているので、大丈夫です」とのことだった。
実際、彼女はきちんと仕事をこなした上でライブに来ているらしい。
まあ、彼女が真面目なことは知っているから心配はしていないが。
そして、今日。
私は、三年ぶりに相方の元へやってきた。
軽い近況報告と、もう一度漫才をやったこと。
「それと、私ね。やっぱり『僕』はやめるよ。だって、私はもう漫才師じゃなくて、ピンの女芸人だから」
相方は何と言うだろうか。
明るくて、人を笑わせるのが好きだった相方。
でも、私と同じように少し斜めに構えた所のあった相方のことだ。
きっと彼なら、「好きにしなよ」と言うだろう。




