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僕の相方  作者:
5/9

あのころのこと

『先輩って、可愛いですよね』


相方は、よく私をそう言ってからかった。


可愛いと言われるのを、私が嫌っていると知っている癖に。


あの日も、私達はお決まりのやり取りをしていた。


『喧嘩売ってんの?』


『違いますよ、本当の事じゃないですか』


『…別に、自分でも分かってるよ。私が可愛いことくらいは。だから、周りの芸人にも舐められんの』


『でも、中身はあんまり女らしくないですよね』


『やっぱり喧嘩売ってるよね、あんた』


私は笑ってそう返す。


彼の言う『可愛い』には、悪意はあれど嫌味はなかった。


『でも、そういうところが面白いなあと思って、俺はコンビ組んだんですけどね』


『…いいからネタ考えるよ』


『あ、待ってください。それなら、こうしたらもっと面白くなるんじゃないですか』




先輩みたいに見た目が可愛い女性が、自分の事を『僕』って呼ぶんです。




『何それ。漫画のキャラクターじゃないんだからさ』


『でも、面白くないですか?』


『…まあ、一応考えてみるわ』



そっけない返事をしながらも、私は正直嬉しかった。


嫌で嫌で仕方なかった私の見た目を、相方は面白いと言ってくれた。


明日から、早速劇場で自分の事を僕と言ってみよう、と思っていた。



相方が交通事故に遭ったのは、喫茶店でそんな話をした帰りのことだった。




それ以来、私は自分を『僕』と呼ぶようになった。





「…先輩?」


「何でもないよ、行こう」


また、後輩に心配させてしまった。


本当に、情けない先輩だ。


だけど、大丈夫。



舞台の上では、ちゃんと引っ張ってあげるからさ。

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