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僕の相方  作者:
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4/9

当日

劇場、営業、ライブ、野坂との漫才のネタづくり、居酒屋のアルバイト…。


僕がごちゃごちゃと考えている間にも、日々は忙しく続いていく。


いつも通りを心掛けているおかげで、あれ以来野坂にも気を使わせることもなくなった。


『結局何も変わってないじゃないか』


時々囁く心の声は、聞こえないふりをした。



そして、あっという間に日々は過ぎ。


ついに、僕達が漫才をやる日。


野坂にとっては、最後の舞台に立つ日になった。


そんな大切な最後の舞台は、倉田先輩が主催する事務所の小さなライブである。


「緊張してきました」


と、口では言うが、彼女は至っていつも通りに見えた。


対する僕はといえば、内心の緊張と不安をどうにかするので精一杯だ。



野坂にとっての最後の舞台。


その舞台の相方に、僕を選んでくれたこと。


絶対、彼女に後悔はさせたくない。



「私、幸せでした」


ふいに、野坂が呟いた。


「何だ、急に」


「だって、幼い頃の夢だった芸人になれた上に、たくさんの仲間に出会えたんですから」



夢を叶えられる人間なんて、ほんの一握りだ。


天才を自称する僕だが、それはただ自分を必死に鼓舞しているだけだ。



野坂は、本物の天才だ。


このままお笑いを続けていれば、きっと凄い芸人になるに違いない。


だけど、一人娘で地方の実家を継がなくてはならない彼女に、それは叶わない。



相方もそうだ。


相方は、誰もが認める天才だった。


でも、ある日突然、相方は未来を奪われた。


人を笑わせるのが好きで、漫才を愛していた相方。


そして、僕に漫才の面白さを教えてくれた相方。


僕を天才だと呼んでくれた相方。



その瞬間。



ようやく『私』は目が覚めたような気がした。



もう、彼と漫才をすることは、絶対に叶わないのだと。

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