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分かってる
「で、結局組むことになったのか」
先輩は予想通りというように笑った。
最後だなんて言われたら、こちらも断れない。
来月行われる事務所のライブ。
そこで、一回限りという条件で野坂とユニットを組むことにした。
「だけど、もったいないよなあ。野坂、引退しちゃうのか」
「家庭の事情らしいっすよ。実家が名家だから、後を継がないといけないって」
「そうか。そんなこと言ってたな…」
野坂は面白い。それは彼女を知っている芸人全員が分かっていることだ。
「まあ、いい機会なんじゃないか。お前もいつまでも立ち止まってられないだろ」
先輩は僕の心情を慮ってか、敢えて明るい口調でそんな事を言ってくれた。
「そう…ですね」
「考え過ぎるのはお前のいいところでもあるけど、そんなんじゃお客も心配するぞ」
「…ありがとうございます」
通話を切ってから、僕は風呂にも入らずにベッドにダイブして転がった。
そうだ。
流石に、もう前に進まなければならない。
僕だって、そんなことは分かっている。
分かっては、いるんだ。




