機械生命体<テリオン>設定資料① ※第一章エピローグまでのネタバレ少し含む
テリオン設定資料
機械仕掛けの神――アマルテイア――により産み出された。
保存された原型生物が生き延びるために獲得した生態・器官・群れ方を、そのまま戦闘能力へ転用した機械生命体である。
したがって、個体ごとの行動は軍事教範よりも捕食・防衛・繁殖・寄生・群泳といった生態に近い。異なる種類が混成されると、互いの習性が結果として高度な戦術を形成する。
四災は通常テリオンとは別格の戦略級個体であり、下記の大型・中型・小型が通常戦域で人類軍が日常的に遭遇する主力群である。
サイズは原型生物と役割により幅があるため、あくまで目安。
区分、大きさの目安、主な役割の順で羅列する。
四災
数十km級
一体で戦場を蹂躙する戦略兵器。
大型
約200m〜数km
艦隊戦・戦域支援・防壁・砲撃・艦艇破壊
中型
約20〜200m
対SIGNUM戦・特殊任務・群れの中核
小型
約1〜20m
群れ・攪乱・寄生・偵察・飽和攻撃
・大型テリオン
宇宙鯨型
第九宙域の真空適応生物を基にした大型テリオン。
原種は光で意思疎通する群泳生物で、その発光器官が長距離ビーム兵器へ転用された。機動力は低く、防御力はそれなりに高い。遠距離砲撃を主任務とするほぼ固定砲台型。巨大で密集し、攻撃時にも大きく位置を変えない。群体間では現在も光信号が明滅するが、元の意味は失われ、通信形式だけが残っている。死に際には原種の鳴き声・信号が漏れる。
城亀型
役割は防衛・護衛・戦線固定。
原型生息域、高密度の小惑星帯で生息し、岩塊へ身体を固定して隕石衝突を耐えるため、何層もの鉱物質甲殻を成長させていた。
テリオン化後は甲羅が多層装甲化し、正面からの艦砲射撃ではコアへ届きにくい。甲羅表面には小型テリオンを付着させ、移動する防壁兼母艦として運用される。
宇宙鯨などの砲撃型大型個体の前へ出て射線を遮り、敵の進路を限定する。腹側と脚部関節は比較的薄い。
人類軍の基本攻略は推進部を破壊して姿勢を崩し、腹側へSIGNUMを送り込むなど。
・中型テリオン
中型は帝国軍SIGNUMが最も頻繁に交戦する主力層。単独性能だけでなく、複数種が互いの生態的役割を補うことで危険度が急上昇する。
狼型狼・犬型。
五〜十体前後の群れを形成する追跡・包囲型。
原種生息域:恒星光の弱い寒冷惑星。針葉樹に似た高木が密生する薄暗い森林帯。
原種生態:五〜十頭ほどの家族群で大型草食獣を追う。低周波の鳴き声と地面を伝う振動で互いの位置を把握し、一頭が獲物を追い、別個体が逃走先へ先回りする群れ狩りを行う。
兵器化:原種の群れ狩りをそのまま利用し、一体が正面から追い、別個体が逃げ道へ回り込む。単体ではSIGNUMより弱い場合が多いが、死角を埋め合って一機を疲弊させる。
鎌蟷螂型カマキリ型。
対SIGNUM近接戦へ特化。
原種生息域:高重力の温暖惑星。巨大植物が層状に生い茂る密林の中層部。
原種生態:枝葉へ身体色を合わせて長時間静止し、獲物が射程へ入った瞬間だけ、弾性組織に蓄えた力を解放して前肢を爆発的な速度で振るう待ち伏せ捕食者。一撃を外すと再蓄力まで動きが鈍る。
兵器化:テリオン版も巡航速度は並だが、鎌腕の初動だけが非常に速い。装甲の隙間、首、腕、推進器を狙う。狼型などが敵を決められた方向へ追い込んだ先で待ち伏せする。
甲虫型
正面防御と突進を担当する中型の盾役。
原種生息地:火山活動が激しい乾燥惑星。噴石と高温の砂嵐が頻発する荒野。
原種生態:幼体を群れの中央へ集め、成体が外向きに円陣を組んで噴石や捕食者から守る社会性甲虫。外側へ向ける前面甲殻だけが極端に厚く発達している。
兵器化:厚い前方甲殻を閉じて頭部と脚部を守り、そのまま敵陣へ押し込む。後方に小型群や砲撃型個体を隠して前進する。正面からの火力に強い一方、側面・腹部・後方は比較的薄い。
蜘蛛型
捕縛・進路制限担当。
原種生息地:低重力惑星。巨大峡谷と浮遊岩塊が連なる立体的な地形帯。
原種生態:岩塊と岩塊の間へ数km規模の網を張る待ち伏せ捕食者。網を伝う微細な振動から、獲物の位置だけでなくおおよその体格や移動方向まで判別する。
兵器化:粘着性と高強度を持つ糸状構造物を宇宙空間へ張り、SIGNUMの手足、推進器、武器、ケーレスなどへ絡ませる。単独で敵を殺すより、敵の自由度を奪い、リュコスやマンティスへ攻撃機会を作る。
砲殻型、オウムガイ型
中距離〜長距離の砲撃支援担当
原種生息地:全球を深海が覆う海洋惑星
光の乏しい中深層を長距離回遊する。
原種生態:多室殻の気体量を変えて浮力を細かく調整し、ほぼ同じ水深を維持したまま移動する。殻内の発光器官から強い閃光を放ち、小型生物の感覚を麻痺させて捕食していた。
兵器化:原種の多室殻をエネルギー蓄積・放熱機構へ転用し、殻内部の発光器官から連続ビームを放つ。宇宙鯨より小型で火力は低いが、機動性が高く、撃っては位置を変える行動を取る。
百足型ムカデ・多脚蛇型。
艦艇表面への取りつきと継続破壊を担当。
原種生息地:巨大生物の死骸や殻が島のように浮かぶ、腐敗性有機物の多い海洋惑星。
原種生態:大型生物の体表へ多数の脚で張りつき、表皮の寄生虫・壊死組織・腐肉を食べる掃除屋。曲面や激しい揺れでも剥がれない吸着脚を持つ。
兵器化:細長い身体と多数の脚で艦艇外装へ密着し、砲塔、センサー、通信設備、姿勢制御器などを順番に破壊する。艦艇を「巨大生物の体表」と同じように扱う。艦砲では自艦表面を撃てないため、SIGNUMや外部作業兵による排除を強制する。
・小型テリオン
小型は一機ごとの撃破力ではなく、数・寄生・偽装・飽和で大型艦やSIGNUMの弱点を作る。大型・中型が獲物を追い込み、小型が関節・センサー・外装亀裂へ入り込むことで一つの捕食生態系として機能する。
狩蜂型
約3〜6m。高速突撃型。
原種生息地:酸素濃度が高く、巨大節足動物が繁栄した温暖惑星。
原種生態:大型の獲物を殺さず、神経節の位置を見極めて針を刺し、運動機能だけを麻痺させて幼体の餌として運ぶ狩り蜂。急所識別能力が極めて高い。
兵器化:SIGNUMのセンサー、関節、推進器など、小さく脆い部位を優先して狙う高速突撃型となった。大量に集まるとステラの死角を埋め、ハルパーだけでは処理しきれない数的圧力を作る。
ダニ型
約0.5〜2m。付着・外装破壊型。
原種生息地:巨大動物が群棲する高温多湿の湿地惑星。
原種生態:大型動物の体表へ数百〜数千匹単位で寄生し、外皮を少しずつ傷つけながら体液と表皮組織を摂取する。単体では宿主へほとんど害を与えない。兵器化:艦艇へ大量に張りつき、外装配線、センサー、姿勢制御ノズルなどを少しずつ食い破る。一体の被害は小さいが、数百〜数千体が同時付着すると大型艦でも機能停止へ追い込まれる。
ヤツメウナギ型
約2〜5m。吸着型。
原種生息地:厚い氷殻の下に暗い地下海を持つ寒冷衛星。
原種生態:大型海洋生物へ円形口器で吸着し、体液だけでなく、筋肉や発電器官に生じるイオン勾配・生体電位を利用して活動する特殊寄生生物。宿主をすぐには殺さず長期間利用する。
兵器化:敵機・艦艇へ吸着し、エネルギー系統や放熱部へ寄生する。吸い取ったエネルギーを自身の活動へ転用し、宿主の出力を低下させる。
蠕虫型
約1〜4m。侵入・内部破壊型。
原種生息地:多孔質の巨大珊瑚状生物が大陸規模の礁を形成する海洋惑星。
原種生態:柔軟な身体を細い亀裂へ押し込み、巨大珊瑚生物の内部組織を食べる内寄生性の蠕虫。外表からは侵入されていることが分かりにくい。
兵器化:砲撃や大型個体が作った装甲亀裂から内部へ侵入し、配線、生命維持、機関、弾薬系統を内側から破壊する。単独では装甲を破れないため、他種が傷を作った後に投入される。
海胆型
機雷型約2〜8m。機雷・待ち伏せ型。
原種生息地:潮流と暴風が激しい浅海惑星の岩礁帯。
原種生態:岩盤へ強固に固定され、普段は長い棘を倒して流れをやり過ごす。捕食者や大型生物が接近すると棘を一斉に立て、全方向から身を守る。移動能力を捨てて防御へ特化した生物。
兵器化:普段はほぼ静止し、小惑星片や残骸へ紛れる。敵が接近すると全方向へ棘状の高速弾を射出する。進路を限定することで、リュコスや大型テリオンの射線へ敵を追い込む。
ナナフシ・擬態昆虫型。
擬態型約3〜10m。
原種生息地:半透明の鉱物質樹木が生える結晶森林惑星。恒星光の屈折によって周囲の色彩と明暗が絶えず変化する。
原種生態:皮膚表面の微細構造を変え、周囲の色・温度・反射特性を短時間で複写する植物食生物。動かなければ大型捕食者でも発見困難だった。
兵器化:背景光、周辺残骸、岩石の電磁特性まで模倣し、偵察・待ち伏せ・デコイを担当する。攻撃力は低いが、敵位置を群れへ知らせる観測個体として厄介。
発光蛾型
約2〜5m。感覚攪乱・偽目標形成型。
原種生息地:巨大惑星に潮汐固定された、恒常的な夜側を持つ衛星。
原種生態:数万〜数十万匹が飛翔し、個体ごとの発光パターンを同期させて巨大な一つの光信号を形成する。繁殖相手の探索と群れの集合に使われていた。
兵器化:求愛・群集用発光を兵器化し、多数の光・電磁信号を撒いて敵センサーへ偽目標を作る。自動照準やケーレスの局所迎撃判断を混乱させる役割を持つ。
蟻型
約1〜3m。回収・解体・資源循環型。
原種生息地:生物資源の乏しい乾燥惑星。地下深くに巨大巣を形成する。
原種生態:死骸、排泄物、脱皮殻、枯死植物まで巣へ持ち帰り、菌類状の共生生物に分解させてほぼ完全に再利用する社会性生物。原種のコロニーには「廃棄物」という概念がほとんど存在しなかった。
兵器化:戦闘そのものより、撃破されたテリオンや人類艦艇の残骸を分解し、利用可能な物質を大型個体・生産個体へ運ぶ。これによりテリオン群は専用の補給艦へ依存せず、戦場の死骸そのものを資源へ戻す生態系として活動できる。
テリオンは異なる原型生物の習性が噛み合うことで自然に戦術を形成するため、
人類側から見るテリオン軍は「兵器の編隊」というより、宇宙空間へ侵入してきた一つの捕食生態系に近い。
〈ドラコー・アビュッシ〉/星間竜
全長約四十キロメートル。四災の一体。
人類側通称は〈黒竜〉〈艦隊喰らい〉
原型生物そのものが恒星間空間を生息域としていた巨大な竜型生物。翼膜状器官から薄い位相膜を形成し、通常空間からわずかにずれることで宇宙塵、放射線、荷電粒子、小天体との衝突を回避して星間を泳いでいた。
この位相膜が〈テメノス〉の直接的な原型。原種にとっては防具ではなく――星間を生きるための皮膚兼航行器官――だった。アマルテイアは位相差を増幅し、防御・突撃・崩壊攻撃へ転用した。
ウァレリアの兄と姉が率いた公爵家の大艦隊を撃破した因縁の個体。帝国艦隊の通常攻撃は位相膜によって決定打を与えられず、大損害を被った。




