↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛脳、上等です! ポンコツ魔法使いは、天才クレイグ先生のお役に立ちたい。  作者: 糀野アオ@『落ち毒』発売中
3章 厄介な魔法使い、特殊能力の使い道を探しています。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/47

3-8 ヘイデンの物語 (後)

 ヘイデンは魔王城に閉じこもって、しばらくの間は世界の秩序のために漫然《まんぜん》とした日々を送っていた。


 あの暗黒時代を知っている。人々が平和に暮らせる毎日が自分のおかげでもたらされたのなら、ここまで努力してきた意味はあった。


 そう自分に言い聞かせて納得しようとしていた。


 ところが、もともと人間だったせいか、その時間が長くなるほどに、孤独と死ぬことのできない自分というものに嫌気《いやけ》がさしてきた。


(魔王のように核から精神を切り離せば、人間に戻れるのではないか?)


 その考えに取りつかれて、ヘイデンは小さな学校を作った。新たな勇者を育てるために、魔法適性を持つ子どもを集めて教育を始めた。


 誰かの生を奪《うば》うのは自分と同じ魔王を生み出すだけだと、精神を別の肉体に移す精神《せいしん》移行(いこう)魔法も作り出した。魔王が使った精神《せいしん》置換《ちかん》魔法を応用すれば、容易《ようい》なことだった。


 その魔法を使うための新たな自分の肉体も用意して――。


 すべての下準備を万端《ばんたん》に整えておいた。






 それから百年かけて、ヘイデンはダンジョンを完成させて、ひたすら勇者育成に努めた。二百年も経てば、数人しかいなかった学校は、世界各国から留学生を受け入れる大きな学園になっていた。


 そんな中でシンシア・マクニールは、入学した時から魔法使いとして特筆《とくひつ》すべき才能にあふれた少女だった。


 彼女ならば、と、ヘイデンは期待していたのだが――。


 そんな彼女でも、やはり百階層にたどり着くことはできずに、魔導師《まどうし》の称号を得ただけで、五年後の卒業の日を迎えた。


 当然のことながら、各国の騎士団や軍は、卒業前からシンシアの才能に目を付けていて、就職の打診をしていたものだ。しかし、彼女が勇者パーティの称号を断ってまで、最終的に選んだ進路は、カーヴェル魔法学園の教師だった。


 その理由が分かったのは、シンシアが退職《たいしょく》願《ねがい》を出してきた時。働き始めて二年ほどが経った頃のことだった。


「学園長のお力になりたくて学園に残りましたが、このような形で辞《や》めることになって申し訳ありません。代わりに、もしかしたら先生に希望を残せるかもしれません」


 ヘイデンが人間に戻ることを望んでいると、シンシアはランドルから聞いていたらしい。


 ランドルは学園の手伝いをさせるために造《つく》った魔族だったが、いつの間にかシンシアと恋仲《こいなか》になっていた。


 ある日、ランドルが戸惑《とまど》った顔で聞いてきたのだ。


「私はあなた様の分身です。なのに、彼女は私を好きだと言うのです。つまり、彼女が好きなのは、ご主人様ということになりませんか?」


 配下の魔族たちは等しく創造《そうぞう》主《しゅ》に敬愛の念を抱《いだ》き、絶対的な忠誠を誓《ちか》う。


 ただ、女性は異性になるせいか、それに加えて変な恋愛感情まで持たれてしまう。面倒《めんどう》なことこの上ないので、リサに続いてエルシーを最後に、女性を造《つく》ることはやめたが。


 ヘイデンにとって魔族というものは、己《おのれ》の分身以上になることはなく、しかも人間に比べて無個性でつまらない存在だった。


「大事なのは、お前が彼女を好きかどうかだ。お前がやりたいと思うことをしろ」


 こう言うことで、ランドルがどういう行動に出るのか楽しみだった。


 そして、二人はヘイデンの前から姿を消した。


 二人が今でも幸せに暮らしているのなら、それでいいと思っていたのだが――。




 *




(シンシアの言っていた『希望』は、ステラのことだったのだろうか)


 クレイグはそんなことを考えながら、城の二階にある一室に入って、ステラをベッドに寝かせた。


「今はゆっくりおやすみ」


 ステラのポニーテールに結《ゆ》ったリボンを解いて、頬《ほお》をそっと撫《な》でてから部屋を後にした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ステラが自分の特殊能力の危険性を把握する前と後で、物語の見え方がまったく違う! 前半はタイトル通り、かわいらしいステラの奮闘ぶりを楽しめます。 ところが、後半になると、ステラの恋愛脳そのものが、魔…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。