2-6 クレイグ先生からのお誘い
「おはようございまーす」
ステラがいつもと同じ時間に出勤して学園長室に入ると、奥のデスクにはクレイグの姿があった。
(ひと月ぶりにクレイグ先生のお姿を見られた……!!)
この瞬間をどれだけ待ちわびていたか。相変わらず一糸乱れぬクレイグの麗しい姿を目にして、ステラは口を手で覆いながらこみ上げてくる涙をこらえた。
クレイグの冷たくも見える凛とした眼差しを向けられて、「おはよう」とつややかな声で返されるだけで、昇天しそうになる。
「仕事は慣れたか?」
「……はい! まだまだ不慣れなところもありますが、精いっぱい頑張らせていただいています!」
「それならよかった。その調子でこれからも仕事に励んでくれ」
告白などしたせいで、避けられているかもしれないと落ち込んでいた日々が霧散していく。
授業中に一方的に見つめて、声を聞いて幸せになっていた時とは違う満足感があった。
(そう、この瞬間のためにわたしはここで働いているのよ!)
「あの……ところで、クレイグ先生。オズワルドさんにちらっと聞いたんですけど、わたしの特殊能力が何かの役に立つんじゃないかって。先生なら何かいいお考えがあるのでしょうか?」
ようやくクレイグと再会できたのだ。次にいつ会えるか分からないと思えば、この機会は逃せない。ステラは少々食い気味にクレイグに聞いていた。
クレイグは一瞬オズワルドに向けて殺気立った視線を送ったように見えたが、小さく息をついてからステラに向き直った。
「次の休み、空いているようなら連れていきたいところがある。そこで話をしよう」
(それって――)
ステラの頭には血が上って、興奮して思わず大声を出していた。
「デートのお誘いですか!?」
「どうしてそうなる!?」
一瞬怒られたと思ったが、クレイグはどちらかというと血の気のない真っ白な頬を染めて、恥ずかしがっているように見えた。
(先生の愛らしいお顔、いただきました!)
ステラが胸をときめかせている間に、クレイグはすっと真顔に戻っていた。
「それはともかく、都合はいいのか?」
「はい、もちろんです! 予定があっても、そっちはキャンセルします。何をおいても先生が優先です!」
「別に急ぎの話ではないから、そこまでしなくてもいいのだが……。では次の休み、十時頃に迎えに行く」
「迎えに来てくださるのですか!?」
「そこまで大げさに喜ばれても……。こちらは転移魔法で一瞬だからな」
「それでもうれしいものはうれしいんです! ちなみに服装はこんな感じでよろしいのでしょうか?」
仕事は特に服装の規定はないので、この時期は半袖のチュニックにコルセットスカートの普段着。外でクレイグと会うからには、デートではないと分かっていても、少しくらいはおしゃれをしていきたくなる。
「スカートはやめた方がいいだろう」
「先生はパンツルックがお好みなんですか?」
それが本当ならば、仕事に来る時はズボンにしようと思ったのだが――。
「好みがどうこうではなく、君と一緒だと転移魔法が使えないから、移動は空を飛ぶしかない。スカートよりズボンの方がいいと思っただけだ」
「あ、なるほど……」
(空を飛んで……どこまで行くのかしら?)
クレイグと一緒なら、世界の果てまででも行きたいと思ってしまう。
「ほら、仕事に入りなさい。オズワルドが待っている」
「はい! では、次のお休みを楽しみに、今日も一日頑張ります!」
ステラは元気いっぱいに仕事に入った。




