戻れと言われても、俺はもう村の井戸番なので
王都で事故が続く中、旧リーベル村に王立錬金術院からの使者が来ます。
魔狼の群れが北の森へ帰ってから、旧リーベル村の夜はいつもより短く感じた。
結界柱の応急修正は成功した。
灰牙狼の群れは村の手前で進路を変え、森へ戻った。
だが、それで安全になったわけではない。
中央井戸の水音は続いている。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
南畑の白露草は、試験区の中で淡く光っている。
北森の結界柱は、三本ともまだ応急状態だ。
どれも、戻り始めただけだ。
完全に直ったものは、一つもない。
俺は夜明け前に北側の境界へ出て、結界柱の根元をもう一度確認した。
中央柱に絡んでいた黒い根は、昨日より赤線が薄くなっている。
封印紐で縛った箇所も、今のところ崩れてはいない。
ただし、黄線は残っていた。
限界を示す線だ。
強い風か、大きな魔力の乱れがあれば、また傾く。
「一晩は持った。けど、これ以上は危ないな」
記録帳に書き込む。
『北森境界結界柱、応急修正後一夜経過。誘引波なし。忌避波弱。中央柱根元に黄線残存。完全修正には掘削、根除去、杭再固定が必要』
書き終えると、背後から草を踏む音がした。
エルシアだった。
彼女は外套の前を留め、左腰の短剣に手を添えている。
長剣はまだ鞘に納まったままだ。鍔元の亀裂は応急で布を巻いてあるが、実戦で使える状態ではない。
「また一人で見に来たのですか」
「一人で来ましたが、結界の外には出ていません」
「そういう問題ではありません」
エルシアは俺の横に立ち、結界柱を見た。
「昨日の魔狼は、もう戻ってこないと思いますか」
「今の波長なら、すぐには戻りません。ただ、結界柱は本来の出力まで戻っていない。群れが別方向から回れば、村の柵だけでは止められません」
「柵も、ほとんど柵とは呼べませんからね」
「はい」
「はい、ではありません」
昨日、ネリアにも同じようなことを言われた気がする。
エルシアは小さく息を吐いた。
「あなたは、危険を小さく言いませんね」
「小さく言っても、危険が小さくなるわけではないので」
「王都では、その言い方で嫌われたのでは?」
「かなり」
そう答えると、エルシアは少しだけ目を細めた。
笑ったわけではない。
だが、責める目でもなかった。
「旧リーベル村では、その言い方のほうが必要です」
「そうだと助かります」
「助かるかどうかではありません。昨日、あなたが危険を小さく言っていたら、私たちは魔狼を剣で迎え撃つしかありませんでした」
エルシアは北の森を見た。
「この村には、まだ守る力が足りません」
「直す場所も足りません」
「人も足りません」
「道具も足りません」
「あなたの睡眠も足りません」
「それは、後で」
「後ではありません」
厳しい声だった。
だが、その言葉を遮るように、村の入口のほうから馬の嘶きが聞こえた。
エルシアの表情が変わる。
俺も顔を上げた。
村の南側ではない。
北の森でもない。
街道へ続く、崩れた入口のほうだ。
荷馬車ではない。
足音が軽い。
馬は一頭。たぶん、早馬だ。
「ドランさんではありませんね」
「ええ。あの商人の荷馬車なら、もっと車輪の音がします」
エルシアは短剣の柄に指を置いた。
「ミラとネリアをガイさんの家へ」
「わかりました」
俺たちが村の中央へ戻ると、ミラは井戸のそばで桶を磨いていた。
ネリアは南畑から戻り、白露草の葉先を記録している。
「ミラ、ガイさんの家へ。ネリアさんも一緒に」
「また狼?」
「狼ではない。人です」
ミラは一瞬だけ安心した顔をした。
だが、エルシアが短剣に手を置いているのを見て、すぐ表情を引き締めた。
「人のほうが危ないこともあるの?」
「あります」
俺が答える前に、エルシアが言った。
ネリアは白露草の記録板を抱え、ミラの肩に手を置いた。
「行きましょう。試験区の前には、触らないって札も立ててありますし」
「でも、井戸は」
「俺が見ます」
「お兄さん、戻っちゃだめだよ」
ミラの言葉に、俺は動きを止めた。
戻る。
その言葉が、なぜか胸の奥を押した。
「まだ、誰が来たかわかりません」
「でも、王都の人だったら?」
ミラはまっすぐ俺を見ている。
あの痩せた少女は、もう井戸の陰に隠れているだけではない。
水を取り戻した村で、井戸番見習いの助手を自称している。
「井戸は、まだ直ってないよ」
「わかっています」
俺はうなずいた。
「だから、勝手には離れません」
ミラはそれで少しだけ安心したらしく、ネリアに連れられてガイ老人の家へ向かった。
村の入口に立つと、相手の姿が見えた。
王都式の黒い乗馬服。
肩に王立錬金術院の銀糸紋章。
胸には、事務官用の細い鎖章。
白衣ではない。
研究技官でもない。
命令書を運ぶための院付き事務官だ。
馬から下りた男は、俺を見るなり眉をひそめた。
「ルカ・オルメインだな」
「はい」
「王立錬金術院院長、バルド・レイヴン閣下の命令書を預かっている」
男は革筒から封書を取り出した。
封蝋には、王立錬金術院の紋章が押されている。
隣にいたエルシアが、一歩前へ出た。
「辺境警備隊、エルシア・グランツです。旧リーベル村は現在、巡回監視下にあります。命令書の確認前に、使者の氏名と所属を」
男は不快そうに顔をしかめた。
「王立錬金術院事務官、セドリック・ロウ。私は錬金術院の内部命令を届けに来ただけだ。辺境警備隊の許可は必要ない」
「この村で人員を移動させるなら、必要です」
「ルカ・オルメインは王立錬金術院の除名処分者であり、辺境開拓補助任務中の身だ。任務の変更権限は院長にある」
セドリックは俺へ封書を差し出した。
「読め」
命令口調だった。
懐かしい、と一瞬思った。
王都では、俺に対してこういう口調で話す者が多かった。
品質管理官という名札をつけていても、実際には計測係。雑用。研究の邪魔者。
セドリックの態度は、王都の廊下の空気をそのまま持ってきたようだった。
俺は封書を受け取った。
封蝋に赤線はない。
封は切られていない。
少なくとも、途中で開けられた形跡はなかった。
羊皮紙を広げる。
そこには、整った字でこう書かれていた。
『ルカ・オルメイン。王立錬金術院における設備確認のため、一時的に王都へ出頭せよ。なお、私物記録帳、検査覚書、旧リーベル村において作成した水源記録を持参すること。命令不履行の場合、辺境開拓補助任務違反として処分を追加する』
読み終えて、俺はもう一度最初から確認した。
処分の取消しとは書かれていない。
除名を撤回するとも書かれていない。
協力を求めるとも書かれていない。
出頭せよ。
持参すること。
命令不履行。
書かれているのは、それだけだった。
「設備確認、ですか」
「そうだ」
「どの設備ですか」
セドリックはわずかに口元を歪めた。
「君に説明する必要はない」
「確認対象がわからなければ、必要な道具も記録も選べません」
「王都へ戻ればわかる」
「戻る前に確認します。炉ですか。薬品庫ですか。結界石ですか。魔力管ですか」
セドリックの眉が動いた。
ほんのわずかだった。
だが、その反応だけで十分だった。
どれか一つではない。
複数が絡んでいる。
「君は、相変わらず面倒な男だな」
「仕事なので」
「もう君の仕事ではない」
その言葉に、手の中の羊皮紙が少しだけ音を立てた。
もう俺の仕事ではない。
王都の炉も、薬品庫も、結界石も、魔力管も。
確かに、俺は除名された。
品質管理室の机も、測定器具も、検査台帳も失った。
だが、記録帳だけは持ってきた。
俺の目も、まだ残っている。
そして今、その目で見なければならないものは、王都ではない。
足元の村だ。
中央井戸。
南畑。
北森の結界柱。
まだ見ていない北森井戸。
西へ伸びる不明流路。
どれも、放っておけばまた壊れる。
「セドリック事務官」
「何だ」
「この命令書には、旧リーベル村の引き継ぎについて何も書かれていません」
「廃村の引き継ぎなど不要だ」
隣で、エルシアの気配が冷えた。
俺も、少しだけ息を止めた。
「不要ではありません」
「水も出ない廃村だろう」
セドリックは周囲を見回した。
そして、言葉を止めた。
中央井戸の水音が聞こえたのだ。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
それから、彼の目が南畑のほうへ動く。
遠目にも、試験区の白露草が淡く光っているのが見えたのだろう。
最後に、北森側の結界柱を見た。
昨日直したばかりの封印紐が、朝日に細く光っている。
「……何だ、これは」
「旧リーベル村の復旧作業です」
「復旧?」
「中央井戸は応急復旧中。南畑では白露草の試験区を観察中。北森境界では結界柱を応急修正済み。ただし、すべて不安定です。今、俺が村を離れれば、中央井戸の水量変化、白露草の魔力反応、結界柱の再傾斜に対応できません」
セドリックは俺を見た。
その目に、先ほどまでの軽蔑とは違う色が混じっている。
困惑だ。
彼は、おそらくここを本当に廃村だと思って来たのだ。
水のない、価値のない、命令を受けた男が一人いるだけの場所だと。
「そんな報告は、院には届いていない」
「でしょうね。まだ正式報告を出していません」
「ならば、なおさら王都へ戻って報告すべきだ」
「戻れば、ここが壊れます」
「廃村一つと、王都の設備を同列に語るな」
その言葉は、王都の人間らしい言葉だった。
廃村一つ。
そう言われた瞬間、ガイ老人の声が背後から聞こえた。
「その廃村一つに、わしらは住んでいる」
振り返ると、ガイ老人が家の戸口に立っていた。
ミラがその横で、老人の腕を支えている。
ネリアも後ろにいた。
「ガイさん、無理をしないでください」
「無理をする時だろう」
ガイ老人はゆっくり歩いてきた。
まだ足元はおぼつかない。だが、目には力が戻っている。
セドリックは老人を見て、明らかに戸惑った。
「村人が残っていたのか」
「十年前からな」
ガイ老人は言った。
「十年前も、王都の白衣が来た。井戸を覗き、記録を持ち去り、自然に枯れたと言って帰った。返せと言った井戸番の記録も、戻ってこなかった」
「それは私の担当ではない」
「そうだろうな。いつも担当ではない」
ガイ老人の声は静かだった。
静かだからこそ、重かった。
「だが、ルカさんは水を戻した。まだ細い水だ。まだ危うい水だ。それでも、十年ぶりにリーベルの水を戻した」
ミラが俺の袖を掴んだ。
「お兄さん、行かないよね」
その手は細い。
力も弱い。
それでも、俺を引き止めるには十分だった。
セドリックは苛立ったように言った。
「子どもの情に流されるな。君は院長命令を受けている」
「院長命令には、処分の取消しが書かれていません」
「何?」
「俺は除名されています。王立錬金術院の職員ではありません。辺境開拓補助任務は、王立機関の懲戒処分として命じられたものです。その任務地で水源復旧作業を行っている以上、途中で引き上げるなら、少なくとも現地状況の確認と引き継ぎが必要です」
王都で報告書ばかり書いていたおかげで、命令文の穴は読める。
セドリックは顔を赤くした。
「詭弁だ」
「手続きです」
俺は羊皮紙を返した。
「正式な協力要請なら、受け取ります。対象設備、事故内容、必要な検査範囲、責任者の署名、こちらの作業中断に伴う旧リーベル村の安全確保。そのすべてを明記してください」
「君は自分の立場をわかっていない」
「わかっています」
俺は記録帳を胸の内側に押さえた。
「王都では、俺は誤差しか見えない無能でした。計測係でした。雑用でした。報告書は握り潰され、事故の責任を押しつけられました」
セドリックの目が泳いだ。
彼がそれを知っていたかどうかはわからない。
だが、知らない顔ではなかった。
「ですが、ここでは違います」
中央井戸の水音がした。
ぽちゃん。
「この井戸は、まだ俺の確認を必要としています。南畑の白露草も、北森の結界柱も、まだ安定していません。ミラは勝手に水を飲まないと約束しています。ガイさんは十年ぶりの井戸の音を聞いています。エルシアさんはこの村を巡回報告に載せると言いました。ネリアさんは白露草を枯らさないために見張っています」
言葉にして初めて、わかった。
王都では、俺の仕事は邪魔だった。
ここでは、俺の仕事を待っている人がいる。
「だから、戻りません」
セドリックの顔が固まった。
「何だと」
「戻れと言われても、俺はもう村の井戸番なので」
ミラが袖を握る手に、少しだけ力を込めた。
エルシアが隣で、静かにうなずいた。
ガイ老人は、目を閉じて中央井戸の音を聞いていた。
セドリックはしばらく言葉を失っていた。
やがて、吐き捨てるように言う。
「後悔するぞ」
「後悔なら、王都で何度もしました」
「院長は、君の記録帳を必要としている」
「記録帳は提出しません」
「王都の設備に異常が出ているとしてもか」
その一言で、空気が変わった。
セドリックは、しまったという顔をした。
やはり、王都で何か起きている。
炉か、薬品庫か、結界石か、魔力管か。
あるいは、その全部か。
俺は静かに言った。
「異常が出ているなら、隠さず正式に報告してください。事故内容を伏せたまま記録帳だけ求められても、原因は特定できません」
「君が王都へ戻れば済む話だ」
「俺を追放した時点で、王都はその選択肢を捨てました」
その言葉を、自分で言ったのに驚いた。
強い言葉だった。
王都にいた頃の俺なら、口にできなかっただろう。
セドリックは唇を噛んだ。
「では、命令拒否として報告する」
「正確に報告してください」
俺は記録帳を開き、新しいページに書き始めた。
『王立錬金術院事務官セドリック・ロウ来訪。院長命令書により王都出頭および私物記録帳、水源記録の持参を要求。対象設備、事故内容、現地引き継ぎ、安全確保について記載なし。旧リーベル村の復旧作業継続を理由に、現時点での出頭を拒否』
書き終えて、セドリックへ見せた。
「こちらの記録には、こう残します」
「君は、本当に記録ばかりだな」
「はい」
「だから嫌われるのだ」
「かもしれません」
俺は記録帳を閉じた。
「ですが、記録があれば、なかったことにはできません」
セドリックは返事をしなかった。
馬の手綱を取り、乗り直す。
その動きは荒かった。
だが、村を出る直前、彼は振り返った。
「旧リーベル村は、正式な再開拓地ではない。王都の台帳上では放棄村だ」
エルシアが目を細める。
「それが何か」
「放棄村の水源、薬草、旧式設備の管理権が誰にあるか、王都で確認されることになる」
予想していた言葉だった。
だが、実際に聞くと、胸の奥が冷えた。
この村は、まだ正式には守られていない。
水が戻った。薬草が芽吹いた。結界柱が動いた。
だからこそ、奪われる可能性が出てきた。
セドリックはそれ以上何も言わず、馬を走らせた。
蹄の音が遠ざかっていく。
しばらく誰も喋らなかった。
中央井戸だけが、水音を立てている。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
ミラが不安そうに俺を見上げた。
「村、取られちゃうの?」
俺はすぐには答えられなかった。
井戸の詰まりなら見える。
結界柱のズレなら見える。
薬草畑の流路なら見える。
だが、王都の台帳や貴族の権利や、放棄村の管理権は、赤線としては見えない。
俺の【修正眼】は、人の思惑までは見抜けない。
エルシアが口を開いた。
「取らせません」
短い言葉だった。
彼女は手帳を取り出し、素早く書き始めた。
「旧リーベル村に居住者あり。中央井戸の水源復旧あり。南畑に薬草発生あり。北森境界に旧式結界設備あり。王立錬金術院事務官による人員引き上げ要求あり。辺境警備隊として、上申します」
「上申?」
「この村を、ただの放棄村として扱わせないための報告です」
エルシアは俺を見た。
「ルカさん。あなたは井戸を直してください。私は手続きを直します」
その言い方に、少しだけ笑いそうになった。
「手続きも、直せるんですか」
「剣より面倒ですが、やるしかありません」
ネリアが小さく手を上げた。
「あの、私は薬草の記録を出せます。白露草が出たこと、南畑の土が死んでいないこと、薬草師見習いとして証言します」
ガイ老人もうなずいた。
「わしは井戸番として、十年前のことを話す。記録は持ち去られたが、音は覚えている」
ミラは胸を張った。
「わたしは助手」
「助手は何をしますか」
俺が尋ねると、ミラは真剣に考えた。
「井戸の水を勝手に飲まないって、みんなに言う」
「重要ですね」
「あと、お兄さんを寝かせる」
エルシアとネリアが同時にうなずいた。
「それも重要です」
思わぬ方向から包囲された。
だが、不思議と悪い気はしなかった。
王都からの命令書は、俺を連れ戻そうとした。
記録帳を取り上げようとした。
けれど、俺は戻らなかった。
戻らない理由が、今はある。
俺は中央井戸の縁に手を置いた。
水音は安定している。
だが、奥にはまだ赤線が残っている。
旧リーベル村も同じだ。
水は戻った。
人も少し戻った。
価値も見え始めた。
だが、まだ不安定だ。
直すべき場所は、井戸の底だけではなくなっている。
俺は記録帳を開き、今日の最後に一行を書いた。
『旧リーベル村、王都からの干渉を確認。水源復旧作業を継続。現地記録の保全を最優先とする』
書き終えると、井戸の底から水音がした。
ぽちゃん。
その音は、昨日よりも少しだけ強く聞こえた。
俺は顔を上げた。
「まず、中央井戸を安定させます。それから北森井戸を確認する。南畑の試験区も続ける。エルシアさんの報告に必要な検査結果は、俺がまとめます」
「お願いします」
「それと、王都へ返す文書も書きます」
エルシアが眉を上げた。
「返答書ですか」
「はい。正式な協力要請なら受ける。ただし、事故内容を開示し、旧リーベル村の安全を保証し、記録帳の接収を目的にしないこと。それを書面にします」
ネリアが苦笑した。
「王都の人、嫌がりそうですね」
「でしょうね」
ガイ老人が低く笑った。
「いい。嫌がるくらいが、ちょうどいい」
ミラは井戸を見ていた。
「お兄さん」
「何ですか」
「今日も、水、鳴ってるね」
「はい」
「じゃあ、まだ大丈夫だね」
俺は少し考えて、うなずいた。
「まだ、大丈夫です」
完全ではない。
安全でもない。
問題は増えた。
だが、井戸は鳴っている。
記録は残っている。
この村を守ろうとする人がいる。
なら、今はそれでいい。
遠くで、王都へ戻る馬の音が消えていった。
旧リーベル村には、また水音だけが残った。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
その音を聞きながら、俺は初めて、自分の意思で王都に背を向けた。
次回、第10話「旧リーベル村、再開拓村として認められる」。
王都からの干渉を受け、ルカたちは旧リーベル村をただの放棄村として扱わせないために動き始めます。




