水路を直すには、村の順番を決めなければならない
第12話です。
水を求める人々が集まり始めたリーベルで、ルカは「誰に、どの順番で水を使わせるか」を決めることになります。
「水はあります。ですが、樽二つ分は出せません」
俺がそう言った瞬間、バーナンと名乗った男の顔が険しくなった。
南西のハルカ村、寄合代表。
背後には男たちが四人。荷車には空の樽が二つ。
彼らの服は土で汚れ、靴の先は乾いて白くなっている。
水に困っているのは、嘘ではない。
だが、だからといって、今の中央井戸から樽二つ分を出せるわけでもなかった。
「出せない、だと?」
バーナンは低い声で言った。
「水があるのだろう。井戸も鳴っている。こっちは家畜も畑も限界だ。少しぐらい分けてくれてもいいではないか」
「少しではありません」
俺は荷車の樽を見た。
木樽は古いが、容量は大きい。
ひとつ満たすだけでも、今の中央井戸には重い。
二つとなれば、無理に水を引き上げることになる。
「今の井戸は応急復旧中です。飲み水を少量ずつ出すことはできます。けれど、大量に汲めば制御陣に負荷が戻ります」
「制御陣だの負荷だの、難しいことを言うな」
バーナンの後ろにいた若い男が苛立ったように言った。
「こっちは水が欲しいだけだ」
その言葉に、俺は一瞬だけ黙った。
水が欲しいだけ。
たしかに、そうだ。
喉が渇いている人間に、魔力流路や中央制御環の説明をしても意味は薄い。
だが、説明しなければ、井戸を壊す。
王都でも、似たようなことが何度もあった。
今すぐ炉を回せ。
今すぐ薬液を出せ。
今すぐ納品しろ。
俺が危険を説明すると、相手は決まって言った。
難しいことを言うな、と。
そして、事故が起きた。
「水は水です」
俺は言った。
「けれど、井戸はただの穴ではありません。井戸を壊せば、今日の水だけでなく、明日の水も失います」
「なら、こちらは見殺しか」
バーナンの声が鋭くなった。
ミラが俺の袖を強く握った。
ネリアは南畑のほうから戻ってきたところで、顔をこわばらせている。
ガイ老人は家の戸口に立ち、黙って井戸を見ていた。
エルシアが一歩前に出た。
「バーナン殿。飲用分は出します。ただし、樽への大量取水は許可できません」
「騎士様までそう言うのか」
「私は井戸の専門家ではありません。ですが、この村の水源管理はルカさんに一任されています」
「追放された錬金術院の男にか?」
その言葉で、空気が少し硬くなった。
王都からの使者セドリックが残した言葉が、まだ村に尾を引いている。
俺が王立錬金術院を追放された人間だということは、もう隠しようがない。
バーナンがそれを知っているなら、昼に来た老人か、道中で出会った誰かから聞いたのだろう。
「はい」
俺は答えた。
「追放された男です」
バーナンが少し目を細める。
「それでも、この井戸を見ているのは俺です。今、樽二つ分の水を出せば、井戸の底にある流れが傷みます。そうなれば、リーベルだけではなく、あなたの村にも水を分ける道がなくなる」
「そんなことが、どうしてわかる」
「見えるからです」
若い男が鼻で笑いかけた。
だが、その笑いは最後まで続かなかった。
ガイ老人が杖を鳴らしたからだ。
「この男の言うことは聞け」
バーナンが眉を寄せた。
「あなたは?」
「ガイ。旧リーベルの井戸番だ」
「井戸番……」
「水を欲しがる者は、井戸の声を聞かん。桶の中身しか見ん。だが、井戸番は井戸が壊れる前の音を聞く」
ガイ老人は中央井戸を見た。
「今の井戸は、まだ寝起きの病人みたいなものだ。歩けるようになったからといって、荷車を引かせる馬鹿はいない」
バーナンは黙った。
わかりやすい例えだった。
俺の説明より、ずっといい。
ミラが小声で言う。
「おじいちゃん、井戸のお医者さんみたい」
「昔からそうだったんだろう」
俺も小声で返した。
バーナンは樽を見た。
それから、中央井戸を見た。
「では、どうしろと言う。ハルカ村にも子どもがいる。家畜もいる。畑が枯れれば冬を越せん」
その問いは正しい。
だからこそ、簡単に答えられなかった。
飲み水だけなら、少量ずつ分けることはできる。
だが、家畜と畑まで含めれば、中央井戸だけでは足りない。
南畑の白露草も、北森の結界柱も、まだ水を必要としている。
誰に、どれだけ、どの順番で水を使わせるか。
それを決めなければならない。
「バーナンさん」
「何だ」
「今すぐ樽二つ分は出せません。ただし、今日中に仮水路を一本作ります」
「仮水路?」
「中央井戸の水を、井戸のすぐそばで汲ませないための水路です。井戸から少し離れた場所に受け場を作る。そこで量を測って分けます」
エルシアが俺を見た。
「水場を分けるのですね」
「はい。井戸の縁に人が集まると、土が崩れます。捨て水も戻る。汚れた足で近づけば水質も落ちる。だから、井戸そのものは管理者だけが扱う。取水は別の場所で行う」
「それでハルカ村にも水を渡せるのか」
バーナンが尋ねる。
「飲用分だけです。家畜用と畑用は、今は無理です」
「飲用分とは、どれだけだ」
「今日渡せるのは、小瓶十本分までです」
「少なすぎる」
「今の井戸から安全に出せる上限です」
バーナンの後ろで、若い男が舌打ちした。
「樽を持ってきた意味がない」
「樽は水を運ぶために使えます。ただし、満たすのではなく、小瓶をまとめて入れるために使ってください」
「馬鹿にしているのか」
「していません」
俺は中央井戸の水音を聞いた。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
間隔は安定している。
だが、さっきよりわずかに重い。
人が増えたせいで、井戸そのものが緊張しているわけではない。
けれど俺には、赤線が濃くなったように見えた。
焦ってはいけない。
「今、樽を満たせば、一日だけは助かるかもしれません」
俺は言った。
「でも、明日からこの井戸はまた止まるかもしれない。そうなれば、リーベルもハルカ村も終わります」
バーナンの目が揺れた。
「あなたの村のためにも、今日の樽二つは断ります」
少しの沈黙が落ちた。
エルシアは何も言わなかった。
ガイ老人も黙っている。
ミラは俺の袖を握ったまま、中央井戸を見ていた。
やがて、バーナンが深く息を吐いた。
「仮水路を作れば、小瓶十本は出せるのだな」
「はい。ただし、水路作りに人手が必要です」
「……なるほど」
バーナンは苦く笑った。
「水が欲しければ、働けということか」
「違います」
俺は首を振った。
「水を長く使いたいなら、井戸を守る作業に加わってください、ということです」
バーナンはしばらく俺を見ていた。
それから、後ろの男たちへ振り返った。
「荷車を置け。樽も下ろせ」
「バーナンさん」
「文句を言って水が出るなら、とっくにうちの井戸は澄んでいる」
若い男は不満そうだったが、荷車から樽を下ろした。
これで、少なくとも争いにはならない。
だが、ここからが本当の問題だった。
水路を作るには、まず場所を決めなければならない。
中央井戸からどちらへ流すか。
どこに受け場を作るか。
飲み水と洗い水をどう分けるか。
南畑への流れをどこで止めるか。
北森側の結界柱に必要な湿りをどう保つか。
俺は地図を広げた。
王都を出る時に渡された古い地図だ。
そこに、俺の記録帳から写した線を書き足していく。
中央井戸。
北森井戸。
南畑井戸。
南畑の試験区。
北森の結界柱。
村の入口。
ミラとガイ老人の家。
ロウム一家の仮住まい。
「水路は南へ流すのか」
バーナンが地図を覗き込んだ。
「南畑へ水を流すなら、途中で取水できるだろう」
「今は南畑を優先しません」
ネリアが驚いた顔をした。
「白露草は?」
「最低限の湿りは残します。けれど、畑全体には流しません」
「どうしてですか」
「人が飲む水より先にはできない」
ネリアは唇を引き結んだ。
薬草師見習いとしては、白露草を守りたいのだろう。
俺も守りたい。
だが、ここで畑を優先すれば、村は持たない。
「順番を決めます」
俺は地図の余白に数字を書いた。
「一番は飲み水。リーベル村にいる人、来訪者、病人、子ども。ここは最優先です」
ミラが真剣な顔で数字を見ている。
「二番は、煮炊きと最低限の洗浄。ただし、井戸のそばではしない。受け場で量を測ります」
エルシアが手帳に写し始めた。
「三番は、北森の結界柱です。湿りが切れると、また魔物を呼ぶ波長に傾く可能性があります」
「魔物を呼ぶ水路なんてあるのですか」
バーナンの後ろの若い男が顔をしかめた。
「水路ではなく、結界柱です。詳しく説明すると長くなりますが、北森側の結界はまだ応急です」
エルシアが補足した。
「この村は昨夜、灰牙狼の群れを結界で退けています。北森側を放置すれば、ハルカ村へ向かう道も危険になります」
バーナンの表情が変わった。
「灰牙狼を?」
「はい」
「それを先に言え」
「先に言う時間がありませんでした」
エルシアは淡々としていた。
俺は数字を書き続ける。
「四番が南畑の試験区。白露草を枯らさない最低量だけ。五番が家畜。六番が畑全体。七番が樽での搬出」
「樽が最後か」
バーナンが渋い顔をした。
「最後です」
俺はうなずいた。
「外へ運ぶ水は、井戸が安定してからです。ただし、病人や子ども用の小瓶は例外にします」
バーナンは地図を見下ろした。
「厳しいな」
「井戸を枯らすよりはましです」
ガイ老人が静かに笑った。
「それが水番の順番だ」
「水番の順番?」
ミラが聞き返す。
「人、火、守り、畑、獣、外。昔の水番はそう覚えた」
「人、火、守り、畑、獣、外……」
ミラが指を折って数える。
俺はその言葉を記録帳に書いた。
人。飲み水。
火。煮炊きと洗浄。
守り。結界柱。
畑。薬草と作物。
獣。家畜。
外。搬出。
古い言い回しだが、合理的だった。
王都の規格表より、よほどわかりやすい。
「では、仮水路を作りましょう」
エルシアが言った。
「どこを掘りますか」
俺は中央井戸の東側を見た。
そこには、雑草に隠れた浅い窪みがある。
最初はただの雨水の流れかと思っていた。
だが、昨日から何度か見るうちに、地面の下に薄い白線が見えていた。
白線。
最適化の余地。
「東へ流します」
「南ではなく?」
「はい。南へ直接流すと、南畑に負荷がかかる。北へ流すと結界柱に影響します。東には古い受け場があった可能性があります」
ガイ老人が目を細めた。
「そういえば、昔は東の空き地に石の桶があった。子どもが水遊びをして叱られた場所だ」
「石の桶?」
「分水石だ。中央井戸から出した水を一度受けて、そこから人用と畑用に分けた。だが、水が枯れてから土をかぶった」
やはりあった。
「そこを掘ります」
バーナンが男たちに顎をしゃくった。
「聞いたな。東だ」
男たちは鍬を持っていなかったが、荷車に積んでいた木べらと短い鋤を使い、土を掘り始めた。
ロウムも足を引きずりながら手伝おうとした。
「無理をしないでください」
「水をもらって寝ているだけでは、落ち着かない」
「では、土を運ぶほうを。梁の修理は後です」
「わかりました」
ネリアは南畑から布を持ってきた。
ミラは小さな板に水の順番を書いている。
『一 ひとのみず』
『二 ひとをいかす火のみず』
『三 村をまもるみず』
『四 はたけのみず』
『五 けもののみず』
『六 そとのみず』
字はまだ曲がっている。
だが、さっきより強い字だった。
俺は東の空き地に膝をつき、土を払った。
指先に硬いものが触れる。
石だ。
表面の土を落とすと、浅い皿のような石が現れた。
中心に丸い窪みがあり、そこから細い溝が三本伸びている。
中央、南、北。
さらに、小さな逃がし溝が東へ一本。
「分水石です」
俺は言った。
ガイ老人が杖をついて近づく。
「懐かしいな。まだ残っていたか」
分水石には赤線が走っていた。
大きな割れではない。
溝に詰まった土と、石の角度のずれだ。
青線は、中央の窪みから東の逃がし溝へ向かっている。
「まず、東の逃がし溝を使います」
「南と北は?」
ネリアが尋ねる。
「まだ開けません。中央井戸が安定するまで、南と北へ直接流すのは危険です」
「白露草は」
「今朝、根元に残した湿りで今日一日は持ちます。夜に少量だけ手で与えます」
ネリアは不満を飲み込んだ顔でうなずいた。
「わかりました。畑より人、ですね」
「はい」
俺は小さな鑿を取り出した。
分水石の溝に固まった土を削る。
力を入れすぎると石を割る。
だが、弱すぎれば詰まりは取れない。
赤線の端に鑿を当てる。
白い結晶が薄く混じっている。
井戸の内壁と同じだ。
ここにも、水脈の詰まりが残っている。
「エルシアさん。井戸から水を汲むのは、俺が合図してからにしてください」
「了解しました」
「ミラ。受け場の札を」
「はい、先生」
「先生ではない」
「じゃあ、井戸のお医者さん」
「それも違う」
周囲が少しだけ笑った。
笑いがある。
それだけで、さっきまで張り詰めていた空気が少し変わった。
俺は鑿を動かした。
かり。
土が剥がれる。
かり。
白い結晶の端が浮く。
ぱき。
小さな音を立てて、溝の詰まりが外れた。
分水石の表面に、淡い青い線が走った。
俺以外には見えないはずだ。
だが、ガイ老人だけは何かを感じたように息を呑んだ。
「鳴ったな」
「聞こえましたか」
「石の音だ。昔の音に近い」
俺はうなずき、中央井戸を見た。
「エルシアさん。一回目を捨てて、二回目を桶半分だけ」
エルシアが井戸から水を汲む。
一回目は捨てる。
二回目を布で濾し、桶半分だけ分水石の中央へ注いだ。
水は石の窪みに溜まり、少し揺れた。
それから、東の逃がし溝へ細く流れた。
ちょろ、という音がした。
水路と呼ぶには、あまりにも細い。
けれど、井戸の縁ではなく、離れた受け場へ水が流れた。
ミラが両手を握った。
「流れた」
「まだ試験です」
「でも、流れた」
「はい」
俺は認めた。
東の受け場へ流れた水は、浅い穴に溜まった。
そこへ小瓶を置けば、直接井戸へ近づかずに水を分けられる。
バーナンがその水を見た。
「これで、小瓶十本か」
「今日の上限です」
「明日は?」
「井戸の音を見てから決めます」
「音を見るのか」
「聞いて、見ます」
バーナンは変な顔をしたが、笑いはしなかった。
「わかった。小瓶十本でいい。だが、明日また来る」
「明日も同じとは限りません」
「それでも来る。こちらも人を出す。水路を掘れば水が長く使えるなら、働く者はいる」
それは、悪い話ではなかった。
「ただし、取水の順番は守ってください」
「人、火、守り、畑、獣、外、だったな」
ガイ老人がうなずいた。
「覚えがいい」
「水をもらう側だからな」
バーナンは空の樽を叩いた。
「今日は小瓶を入れて帰る。樽は明日以降のために置いていく。満たす日が来たら、返してもらう」
「樽を置いていくのですか」
「荷車で持ち帰っても空だ。邪魔になる。ここで水場の目印にでも使え」
エルシアが俺を見た。
「受け場の境界標に使えますね」
「はい。水場と通路を分けられます」
俺は記録帳に書き込んだ。
『東分水石を発見。中央井戸からの仮取水路として使用可能。南北流路は未開放。東逃がし溝のみ試験通水。取水順を設定。人、火、守り、畑、獣、外』
最後に、もう一行足す。
『水路を直すには、水量ではなく順番を先に決める必要あり』
書き終えた時、中央井戸の音がした。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
さっきより、少しだけ軽い。
井戸の周りから人が離れ、分水石へ水を移したことで、負荷が下がったのかもしれない。
少なくとも、赤線は濃くなっていない。
成功だ。
ただし、小さな成功だ。
樽二つは満たせなかった。
ハルカ村の畑も家畜も救えていない。
南畑の白露草も、北森の結界柱も、まだ応急状態のままだ。
だが、今日決めた順番は、明日以降の水を守る。
バーナンたちは小瓶十本を布で包み、樽の中に並べた。
空の樽は一つ、村に置いていくことになった。
もう一つは荷車に戻す。
帰り際、バーナンが俺に言った。
「追放された男だと聞いていた」
「事実です」
「王都は見る目がないな」
俺はすぐには答えられなかった。
その言葉は、褒め言葉なのだろう。
だが、まだ素直には受け取れない。
「井戸を見ているだけです」
「それができる者が少ない」
バーナンはそう言って、荷車を押した。
ハルカ村の男たちが南の道へ消えると、リーベル村には夕方の風が戻った。
ミラが分水石の横に立てた札を見上げている。
『水のじゅんばんをまもる』
その下に、小さく六つの言葉。
ひと。
火。
まもり。
はたけ。
けもの。
そと。
「お兄さん」
「何だ」
「これ、村の決まり?」
「仮の決まりだ」
「仮って、あとで変わる?」
「井戸がもっと良くなれば、変わる。人が増えれば、また変える。守るために変える」
ミラはうなずいた。
「じゃあ、書き直せるように、裏は空けておく」
「それはいい判断だ」
ミラは得意そうに笑った。
その横で、エルシアが手帳を閉じた。
「ルカさん。今日の記録は、巡回報告にも写します」
「取水順もですか」
「はい。再開拓準備村として、最初の水管理規則になります」
水管理規則。
王都の書類で見れば、小さな項目にすぎないだろう。
だが、この村では命を分ける順番だ。
俺は中央井戸を見た。
ぽちゃん。
ぽちゃん。
そして、東の分水石から細く流れる水を見た。
井戸の水は、ようやく村の中を流れ始めた。
ただし、好き勝手にではない。
順番を持って。
記録を持って。
守る者を持って。
日が沈む直前、ガイ老人が分水石を見て言った。
「これで水路は生き返り始めた。だが、石だけでは持たんぞ」
「わかっています」
分水石の東溝には、まだ細い赤線が残っている。
仮水路としては使える。
だが、村の人数が増えれば、土の水路ではすぐに崩れる。
水路管が必要だ。
同じ形で交換できる部品が必要だ。
結界柱にも、南畑にも、いずれ同じことが起きる。
直すだけでは足りない。
直し続けられる形にしなければならない。
俺は記録帳の最後に、次の項目を書いた。
『水路部品の規格化を検討。木、石、鉄のいずれか。村内に加工可能な職人が必要』
書き終えた時、中央井戸の底で青い光が一度だけ揺れた。
まるで、新しい順番を認めるように。
リーベル村に、水路が戻った。
まだ細く、仮の流れでしかない。
それでもその流れは、廃村だった場所を、少しだけ村に近づけていた。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
第12話では、リーベル村が初めて「水の順番」を決めました。井戸を直すだけでは村は守れず、使い方まで整える必要がある、という回です。
次回、第13話「鍛冶屋ガンズと規格部品」。仮水路を維持するため、ルカは同じ形で交換できる部品を作ろうとします。




