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大滝の石と黒猫のはなし  作者: ぽすしち
二十一

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59/71

クロイコネコハ





 二十一、




       クロイ コネコ ハ  ――

   

 


    「 ―― あの黒いのは、  おれがつれていった 」



 声に振り返ると、そこには、わかれたときより少し大きくなったマツキチがいた。




「 ま、・・・マツキチ・・・」


「よお。ひさしぶりだな。ヒコイチさん」

 こえもすこし大人びている。


「お、おう」


 気づけば、あの納屋も、ジョウカイたちもなくなって、陽のあるどこかのまち中を、二人で並んで歩いていた。


 にぎやかなまちなかを連れ立って歩いているというのに、ヒコイチには足を動かしている感覚はない。にぎやかだというのにあたりの人の声ははっきりときこえず、なんのにおいもせず、あたりのようすをよくみようとしても、にじんだようにぼやけてしまい、なにもはっきりと見えない。



「どうだよ、ヒコイチさん。 ―― みちがえただろう?」

 横を歩くマツキチは胸をそらせ、上等な着物の襟を、つい、とつまんでみせた。背丈がヒコイチの肩ほどまで伸びているが、顔はまだこどものものだ。



「なんでエ、着物のことか?まあ。たしかに、似合ってらアな」

 マツキチらしいその様子に、ヒコイチは安堵してわらう。



「商売人はまず身なりからだってな。あれから、おっとうの店に入って、いちから商売を覚えたんだ」


 そう言いながら横を歩くマツキチが、すうっと、筆ではらったように、 ―― すこし、大きくなる。



「 ・・・親父さんとは、どうだい?」

 ヒコイチは立ちどまりたかったが、足の動きがとまらない。このまま並んで歩くしかなさそうだ。


 隣の子どもはそんなヒコイチを安心させるように、笑いかけてからこたえる。



「 うん、おっとさんはいい人だな。根はいい人だ。 おれを手放したことを本当に悔いてて、毎日おれをみてうれしそうな顔するよ」


 マツキチの声が、がさついて、おとこの声になる。背丈がまたのび、ヒコイチとおなじほどになる。



「 そうかい、よかったな」


「それにおれ、商売にむいてるってさ」



「ああ、ヨシスケさんもそう言ってた」



 横にいるマツキチは、もう十代なかばになっている。顔つきは賢く意志の強いのをあらわすようだった。




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