三日目
石をかついで歩きまわって今日で三日目。
いまのところ『当たり』はなく、すでに、いつもの縄張りの半分以上は歩きつくしている。
寺のたくさん集まる場所からはじめたのだが、まわった寺すべてハズレだった。中にはヒコイチのことを知っている坊主もいて、今日は何を売っていなさるのか、ときかれたが、ただ首をかきながら『ありがてえ石ってやつで』と答えるしかなかった。この、あきらかにうさんくさい言葉にどこの坊主も、顔をしかめるか、ありがた迷惑な説教をはじめるかのどちらかだったのはしかたのないことだ。
じつをいえば二人ほど、そんな『ありがたい』ものならば買ってもいいと承知した坊主もいたのだが、そこで「ああよかった」と売り渡すことはできなかった。
なぜならば、元締めから『当たり』の寺の条件を聞いていたからだ。
『 ただ ほしい、 っていう寺や坊主は 当たり じゃねぇぞ。 むこうが、《おさめていただこう》ってこたえたならば、そこが《当たり》だ 』
「 ・・・ったく・・・」わけのわからねぇ。
なので、しかたなくヒコイチは、そうこたえてくれる坊主をこの三日間さがし歩いているのだ。
代金はもうもらっているというのだから、こんな重い石その辺に捨て置いてしまえばいいようなものを、それができない。
自分のばか正直さにあきれて息をおおきくつき、石段の両側から続く石垣をながめる。
まるで、どこかの城のような立派な石垣だ。
人の背丈の倍ほどまでも重ねてつくられた石垣が、上のほうでは土の斜面になっているのがわかる。すぐにみっちりと生えのびた竹藪になっていて、ずっと上まで続くその青い葉の群れが、石段をはさんだ両側で、わさわさと風にゆれている。
みあげた石段は上のほうになるにしたがって、のびすぎた竹がうつむいたように重なっていて、奥にみえる門はひどく暗い。
ぽつり、と冷たいものがヒコイチの額にかかった。
今日は降るとも思っていなかった雨が、ぱらぱらと落ちてくる。
またひとつ、おおきく息をはいたヒコイチは、おろしていた荷籠をもちあげ、あきらめたようにゆっくりと肩にかつぐと、つぎの段へと足をかけた。




