↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大滝の石と黒猫のはなし  作者: ぽすしち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/21

鬼となるてまえ


 坊主は教えられたわけでもないのに、勝手に庭の方へとまわり、亡くなった奥様がたの化身けしんともいえる植木をみわたした。


 チョウスケが旦那さまを呼ぼうと部屋の戸をあける前に、いきなり旦那様が走り出て、庭に立つ坊主に「でていけえ!!」とさけんだ。

 荒い息をする旦那さまは、見たこともない、鬼のような顔をしていた。


 それをみた坊主は、わらった。

『 ほお。鬼となる手前だったか。ツノの先は出ておるか? 』



  鬼!?

 いやいや、たしかに今はそんな顔をしているが、旦那さまは普段、いつも穏やかな・・・。


 チョウスケが旦那さまをふりかえると、その灰色の髪の間から、ぬっと牛のもつ角と同じものがつきだした。


  そんな・・・・・




『 それほど女たちを離したくないか? だがな、女たちはもう、離れたいともうしておる 』

 坊主は懐から、じゃらり、と澄んだ玉を長くつないだ数珠をつかみだした。


 それを見た旦那様が獣のようなうなり声をあげ、いきなり坊主にとびかかった。



  ・・・あんなに穏やかで、いつもちゃんとした旦那さまが・・・



 坊主に軽くかわされ、庭に転がった旦那さまを助けにいくべきか、チョウスケは迷った。




『 そこな方、塩ひと盛りと、酒をご用意くだされ 』


 落ち着いた声の坊主に顔をむけられ、うなずいたチョウスケは台所へ走った。手がふるえ、塩はひと盛りどころか山盛りになった。酒は旦那さまがお客様用としているのをつかんだ。走ってもどれば、旦那さまはなにやら叫び声をあげ地面をころがりまわり、坊主はそのまわりを歩き回っている。



  なにを・・している・・?



 どうやら坊主は手にした杖で地面になにかをかいているようだ。転がる旦那さまはそれをやめてほしいと必死に訴えている。


「だ、だんなさま!痛いんですか?」 だとしたら、なんとかしてやりたい。



 旦那さまと坊主を見比べる。あの杖をとめればいいのだろうか?



 すると、坊主がにやりと笑った顔をチョウスケへむけた。

『 その忠義の深さが、そなたの主人を助けよう。さあ、こちらへ酒を 』



 さしずされた通り、チョウスケは坊主が杖でつくった地面の細い溝へ酒を流した。酒は土にしみこまず、まるで坂道かのように、溝をはしる。



 じゃら


 坊主が数珠をつかみ、ぶつぶつとなにかをつぶやく。

 ひいっ!と鬼の顔をした旦那さまがのけぞる。



「だ、だんなさま」




  『 はなれろ 』


 坊主の声に、ゆらりと立ち上がった旦那様の肩がぐらぐらとゆれ、がくんと前にしなったかと思おうと、その背から濃い煙のような黒い人影がたちのぼった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。