# 第48話 ## 「本当の家族」
# 第48話
## 「本当の家族」
カフェの空気が静かに揺れていた。
澪はスマホを握ったまま俯いている。
---
「お前は俺の娘だ」
---
その言葉。
短い言葉。
でも。
とても重い言葉だった。
---
灯は何も言えない。
---
もし本当に取り違えがあったとしても。
もし血が繋がっていなかったとしても。
---
育てた時間。
笑った日々。
喧嘩した記憶。
---
それは消えない。
---
澪は目を拭う。
---
「ずるいですよね」
小さく笑う。
---
「私」
---
「その一言が聞きたかっただけなのに」
---
灯の胸が少し痛む。
---
自分も同じだった。
---
愛されていないわけじゃない。
---
ただ。
確かめたかっただけ。
---
その気持ちが分かる。
---
その日の夕方。
---
灯と澪は別れた。
---
「また会いましょう」
---
自然に出た言葉だった。
---
澪も笑う。
---
「今度は普通に」
---
「友達として」
---
灯は頷く。
---
「うん」
---
血の繋がりがあるかもしれない人。
---
でも。
それ以上に。
---
大切な友達になれる気がした。
---
帰り道。
---
湊と並んで歩く。
---
夕陽が長い影を作る。
---
灯はぽつりと言う。
---
「家族って難しいですね」
---
湊は笑う。
---
「本当に」
---
しばらく沈黙。
---
そして。
---
灯は続ける。
---
「でも」
---
「少しだけ分かった気がします」
---
湊が見る。
---
灯は空を見上げる。
---
「家族って」
---
「血だけじゃないんですね」
---
その言葉に。
---
湊は静かに頷いた。
---
「そうですね」
---
「たぶん」
---
「帰りたいと思える人たちのことです」
---
灯は足を止める。
---
胸の奥が温かくなる。
---
帰りたい人。
---
帰りたい場所。
---
その答えが。
少しずつ見え始めていた。
---
その夜。
---
部屋に帰る。
---
玄関を開ける。
---
灯は自然に言う。
---
「ただいま」
---
そして。
---
湊も自然に返す。
---
「おかえりなさい」
---
その瞬間。
---
二人は少しだけ笑った。
---
もう。
このやり取りが当たり前になり始めている。
---
しかし。
---
その夜遅く。
---
一通のメッセージが届く。
---
送り主は澪。
---
内容はたった一行だった。
---
『灯さん、明日会えますか』
---
その下には。
---
震える指で打ったような文章。
---
『本当のことが分かりました』
---
灯の心臓が大きく鳴る。
---
ついに。
---
三十年前に起きた出来事の真実が。
---
明らかになろうとしていた。
---
**第49話「三十年前の約束」へ続く。**




