# 第47話 ## 「鏡の向こう側」
# 第47話
## 「鏡の向こう側」
灯は立ち尽くしていた。
公園のベンチ。
春の風。
揺れる木々。
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そして。
目の前にいる女性。
朝比奈澪。
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似ている。
あまりにも。
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顔立ち。
目元。
笑った時の口元。
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まるで。
遠い親戚ではなく。
本当の姉妹みたいだった。
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澪も同じだった。
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「……びっくりしました」
小さく笑う。
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灯も頷く。
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「私もです」
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二人とも緊張している。
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でも不思議だった。
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初対面なのに。
どこか懐かしい。
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そんな感覚があった。
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近くのカフェへ入る。
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向かい合って座る。
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沈黙。
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先に口を開いたのは澪だった。
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「私」
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指先を少し握る。
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「ずっと違和感があったんです」
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灯は聞く。
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「違和感?」
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澪は頷く。
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「家族のことは好きでした」
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「でも」
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少し笑う。
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寂しそうに。
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「なぜか、ずっと居場所がない気がして」
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灯の胸が少し揺れる。
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それは。
自分も感じていたことだった。
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澪は続ける。
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「だから調べ始めたんです」
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「まさか本当に何かあるなんて思ってませんでした」
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灯も笑う。
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「私もです」
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二人は少しだけ笑った。
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同じタイミングで。
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それが妙におかしくて。
また笑った。
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その様子を少し離れた席で見ていた湊は。
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思わず微笑む。
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まるで。
昔から知り合いだったみたいだった。
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その時。
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澪がふと聞く。
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「灯さん」
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「幸せですか?」
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突然の質問。
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灯は驚く。
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でも。
少し考えて。
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窓の外を見る。
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そこには。
コーヒーを飲みながら待っている湊。
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そして。
病院で待つ母。
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父と向き合った湊。
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いろんな人の顔が浮かぶ。
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灯は小さく笑う。
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「たぶん」
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澪が笑う。
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「その言い方、誰かさんみたいですね」
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灯も笑う。
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「うつったんだと思います」
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二人の間の空気が柔らかくなる。
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その時だった。
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澪のスマホが震える。
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画面を見る。
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そして。
顔色が変わった。
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笑顔が消える。
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灯が気づく。
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「どうしました?」
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澪はスマホを見つめたまま。
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震える声で言う。
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「……父です」
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沈黙。
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「今すぐ帰ってこいって」
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その一言で。
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空気が張り詰める。
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澪は苦笑する。
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「どうやら」
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「向こうも全部知ったみたいです」
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灯の胸がざわつく。
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そして。
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澪は次の言葉を絞り出した。
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「でも」
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「父が一言だけ言ったんです」
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涙をこらえるように。
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「お前は俺の娘だって」
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その瞬間。
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灯も。
澪も。
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言葉を失った。
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血の繋がりとは何なのか。
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家族とは何なのか。
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物語は。
さらに深い場所へ進み始める。
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**第48話「本当の家族」へ続く。**




