↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/51

# 第46話 ## 「もう一人の灯」

# 第46話


## 「もう一人の灯」


帰り道。


灯はほとんど何も話せなかった。


---


街の景色が流れていく。


人が歩いている。


車が走っている。


---


なのに。


全部が遠い。


---


頭の中では同じ言葉だけが回っていた。


---


「取り違え」


---


「本来の家族」


---


「もう一人の女性」


---


理解が追いつかない。


---


湊は隣を歩いている。


無理に話しかけない。


---


その優しさが今はありがたかった。


---


部屋に戻る。


---


灯はソファに座る。


そのまま動けない。


---


数分後。


ぽつりと言った。


---


「もし本当だったら」


---


湊が顔を上げる。


---


灯は続ける。


---


「私って誰なんでしょう」


---


震える声。


---


「お母さんの娘じゃないなら」


---


「私は何なんだろう」


---


静かな部屋。


---


湊はすぐに答えない。


---


そして。


ゆっくり言った。


---


「灯さんは灯さんです」


---


灯が見る。


---


湊は続ける。


---


「生まれた場所が違っても」


---


「育った時間は消えません」


---


「苦しかったことも」


---


「嬉しかったことも」


---


「全部、灯さんの人生です」


---


灯の目が少し潤む。


---


湊は小さく笑う。


---


「だから急に別人にはなりません」


---


その言葉で。


灯は少しだけ息ができるようになった。


---


その夜。


---


灯は名刺を見つめていた。


---


そこに書かれた名前。


---


**『朝比奈(あさひな) 澪(みお)』**


---


同じ年齢。


同じ誕生日。


同じ病院。


---


もしかしたら。


---


本来なら。


---


自分と入れ替わっていたかもしれない人。


---


灯は何度も名前を読む。


---


朝比奈澪。


---


知らない人。


---


でも。


知らない気がしない人。


---


その時だった。


---


スマホが鳴る。


---


知らない番号。


---


灯の心臓が跳ねる。


---


まさか。


---


震える指で出る。


---


「……はい」


---


数秒。


---


電話の向こうから。


女性の声。


---


静かで。


少し緊張した声。


---


「突然すみません」


---


灯は固まる。


---


女性は続ける。


---


「市役所から連絡を受けました」


---


沈黙。


---


そして。


---


「朝比奈澪です」


---


灯の呼吸が止まる。


---


ついさっき見ていた名前。


---


その本人。


---


澪も緊張しているのが分かる。


---


しばらく沈黙。


---


やがて。


澪が言った。


---


「変な話ですよね」


---


少し笑う。


---


「でも」


---


声が震えていた。


---


「一度だけ」


---


「会えませんか」


---


部屋の空気が止まる。


---


灯は湊を見る。


---


湊も静かに頷く。


---


逃げても。


答えは出ない。


---


灯はゆっくり言った。


---


「……会いましょう」


---


その瞬間。


---


二人の人生を大きく変える出会いが決まった。


---


そして翌日。


---


待ち合わせ場所へ向かった灯は。


---


遠くのベンチに座る一人の女性を見つける。


---


同じくらいの年齢。


---


長い髪。


---


穏やかな横顔。


---


そして。


---


振り返った瞬間。


---


灯は言葉を失った。


---


「……え?」


---


澪も固まる。


---


なぜなら。


---


そこにいた女性は。


---


驚くほど灯に似ていたからだった。


---


**第47話「鏡の向こう側」へ続く。**


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。