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「おかえりの灯り」

第2話


「おかえりの灯り」




その時だった。


ぐぅぅ……


また小さな音。


「あっ……!」


灯が顔を真っ赤にする。


湊は思わず吹き出した。


「灯さん、毎回お腹鳴ってません?」


「ち、違うんです!」


「ふふっ」


静かな部屋に、

小さな笑い声が広がる。


窓の外では、

終電前の電車が走っていく音。


時計の針は、

もう零時を回っていた。


でも。


不思議と、

時間がゆっくり流れている気がした。


灯はマグカップを両手で持ちながら、

ぽつりと呟く。


「……こんな時間に、誰かと話したの久しぶりです」


湊は少しだけ目を細めた。


「灯さんも?」


“も”。


その言葉に、

灯は少しだけ視線を落とした。


「あんまり、人といるの得意じゃなくて」


静かな声だった。


けれど。


その言葉の奥に、

小さな寂しさが見えた気がした。


湊が何か言おうとした――その時。


ブブッ。


灯のスマホが震える。


画面を見た瞬間。


灯の表情が、

少しだけ固まった。


さっきまでの柔らかい空気が、

ほんの少し変わる。


湊は気づいた。


でも、

無理に聞かなかった。


灯は数秒だけ画面を見つめてから、

そっとスマホを伏せる。


「……ごめんなさい」


「大丈夫ですか?」


灯は少し迷うように笑った。


「……大丈夫です」


でも。


その笑顔は、

どこか無理をしているように見えた。


沈黙。


遠くで、

救急車のサイレンが小さく響く。


そして。


灯はぽつりと呟いた。


「……湊さん」


「はい?」


「もし」


灯は視線を落としたまま、

小さな声で続ける。


「もし、私が急にいなくなったら……」


その瞬間。


湊の表情が、

初めて揺れた。


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